街角ピアノの音色 美観地区に彩り 加計美術館とアイビースクエア

加計美術館のピアノで演奏を披露する女児=8日

 新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ、にぎわいが戻りつつある倉敷市美観地区に、連日のようにピアノの音色が響き渡っている。誰でも自由に弾ける“街角ピアノ”。加計美術館(同市中央)と倉敷アイビースクエア(同市本町)に相次いで登場し、観光客らが演奏を楽しんでいる。

 今月上旬、加計美術館から聞こえてきたのは、ショパンの「ワルツ第7番」。入り口近くにあるピアノで岡山大付属小5年の女児(11)が奏で、演奏が終わると立ち止まって聞き入っていた大人たちから大きな拍手を浴びた。女児は「情緒ある場所なのでしっかり弾けた」と笑顔で話した。

 ピアノは、館長を務める陶芸家の児島塊太郎さんが、知人から譲り受けてゴールデンウイークに設置した。世界的な音楽家を倉敷に招いて1983年から開かれてきた「くらしきコンサート」が、大原れいこ代表の死去(2020年4月)とともに終了したのを受け、「再びまちに音楽が流れる日常を」との思いから発案した。

 コロナ禍の影響で弾く人は少なかったが、大勢の観光客が行き来する最近は鳴らない日がないという。11月5、6日に一帯で開かれるジャズイベント「倉敷ジャズストリート」でも活用される。

 倉敷アイビースクエアのピアノは、結婚式の出席者が余興で演奏するためのものだった。コロナ禍で使われなくなり、9月下旬、売店近くに置いた。

 ピアノの下には、画家モネの庭(フランス)から株分けされた、中庭の池の睡蓮(すいれん)を描いた黒板を敷き、ピアノ自体もカモ井加工紙(同市片島町)のマスキングテープで彩り、華やかな空間に仕立てている。

 「クラシックからアニメソングまで多くの人がさまざまに弾いている」と中久保陵次総務部次長。今月上旬にはくらしき作陽大の学生3人による演奏会も企画して盛況だったといい、「新しい音の風景を広げることで、倉敷の文化にさらに彩りを添えたい」と話す。

倉敷アイビースクエアのピアノを使ったくらしき作陽大生による演奏会=9日

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