アレックス・リンスが最後のシーズンとなるスズキに贈った2年ぶりの勝利/第18戦オーストラリア

 10月16日、2022年MotoGP第18戦オーストラリアGP MotoGPクラスの決勝がオーストラリアのフィリップ・アイランド・サーキットで行われ、アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)は激戦を制して今シーズン初の優勝を飾り、MotoGPクラスでは通算4度目の勝利を獲得した。

 2021年は1度の表彰台、今季は第3戦アルゼンチンGP、第4戦アメリカズGPで表彰台に上がって以降、ドゥカティやアプリリアが上位に食い込んだこともあり調子が上がらなかったリンス。今大会もウイーク中、なかなかタイムを上げることが出来ず、予選Q1からのアタックとなり、2番手で通過したが予選Q2ではポールポジションのホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)に0.774秒届かず、10番グリッドからスタートすることとなった。

 決勝はドライコンディションで始まり、リンスはまずまずのスタートを切ってポジションを上げるが、その後一時11番手まで後退してしまう。しかし周回を重ねていくごとに、前を走るライダーを次々にパスし、6周目にはファステストラップを記録して5番手までポジションを回復させ、一気に上位集団の背後に迫った。さらにリンスの勢いは止まることを知らず、3周連続でオーバーテイクを成功させ、8周目にはトップ争いに浮上した。

アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第18戦オーストラリアGP

 レース中盤には、リンスも一時トップに立ってレースを引っ張っていくが、激しくトップが入れ替わる接戦が繰り広げられ、最後まで息を呑む展開が続いた。フロントにミディアタイヤ、リヤにハードタイヤを履いて、決勝に挑んでいたリンスはレース中のタイヤのマネジメントについて次のように語っていた。

「このサーキットはタイヤに負担がかかることを理解していたから、リヤタイヤを温存させるためにオーバーペースにならないように心がけていたんだけど、ハイスピードコーナーのトラクションが良かったお陰で最後までアグレッシブに攻めてバトルすることができたんだ」

 そう語るリンスは、最終ラップで再びトップに浮上し、接戦を繰り広げていたフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)にオーバーテイクを仕掛けられるも、最終コーナーをトップで立ち上がって、最後まで続いた激戦を制してトップでチェッカーを受けた。

アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第18戦オーストラリアGP

 今回の優勝はリンスにとって、MotoGPクラスでは4度目となり、実に2019年シーズンの第11戦アラゴンGP以来のこととなった。チーム・スズキ・エクスターは2015年からロードレース世界選手権のMotoGPクラスに参戦を続けてきたが、2022年を持って参戦を終了することがすでに報じられており、今シーズンも残すところあと数戦というところで見事なポテンシャルを見せつけ、勝利を手にした。リンスは、レース終了後に嬉しさを次のように語っていた。

アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第18戦オーストラリアGP

「言葉では言い現せないくらい最高にハッピーな気分だよ。優勝はチーム・スズキ・エクスターの皆と、このプロジェクトに関わっている全ての人達、そしてさらにいつも応援してくれているファンの皆のお陰だと思っている。プロジェクトが終わる前にもう一度皆でこの喜びを分かち合うことができたことが何より嬉しいよ」

 また、河内健テクニカルマネージャーは「やっと表彰台に、それも一番高いところに戻ってくることができました。アレックスにおめでとうと言いたいです。それからこのプロジェクトに関わって下さっている全ての皆様に感謝の気持ちを伝えたいです」とコメントしている。

「今年いっぱいで私達はこのプロジェクトを終了しなくてはなりませんが、今日のレースで我々にはまだまだ十分戦えるポテンシャルがあることを証明できたと思います。ジョアンに関しては小さなトラブルにより彼の本来のポテンシャルを見せることができませんでしたが、復帰初戦としては週末を通して非常に良いパフォーマンスを見せていたので、残りのレースが楽しみです。残り2戦も全力で戦っていきますので、引き続き応援よろしくお願いします」

 チーム・スズキ・エクスターのふたりがスズキGSX-RRを駆る姿を見られるのは、今シーズンの残り2戦のみとなったが、多くのスズキファンが待ち望んでいる勇姿を再び見ることは叶うだろうか。

アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)/2022MotoGP第18戦オーストラリアGP

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