少年2事件の全記録廃棄 『2003年男児誘拐殺害・04年小6殺害』 長崎家裁、佐世保支部

 長崎市で2003年、4歳男児がビル屋上から突き落とされた誘拐殺害事件で補導された中学1年の少年=当時(12)=と、佐世保市で04年、小学6年の女児=当時(12)=が殺害された事件で補導された同級生の女児=当時(11)=に関する全ての事件記録について、長崎家裁と同家裁佐世保支部がそれぞれ廃棄していたことが20日、家裁への取材で分かった。
 家裁によると、廃棄したのは長崎事件が18年3月8日、佐世保事件は19年2月28日。廃棄の理由や記録の種類については「調査中」としている。
 最高裁の内規では、一般的な少年事件の捜査書類や審判記録は少年が26歳になるまでの保存を規定している。だが史料的価値の高い記録は期間満了後も保存しなければならず、26歳以降も事実上永久保存する「特別保存」を定めている。
 最高裁の内規の運用を定めた1992年の通達は、特別保存の対象例として(1)世相を反映した事件で史料的価値が高いもの(2)全国的に社会の耳目を集めた事件(3)少年事件に関する調査研究の重要な参考資料になる事件-などを挙げている。
 成人の刑事裁判記録は判決確定後に検察が保管。刑の内容や刑期に応じて定められた3~50年(判決書は最大100年)を過ぎると廃棄されるが、犯罪や学術の研究などに有用だと判断された場合、法相が原則永久に保存する「刑事参考記録」に指定される。
 長崎事件は03年7月1日、長崎市の家電量販店で男児が誘拐され、翌2日、同市中心部の立体駐車場で遺体で発見された。県中央児童相談所(当時)が少年を長崎家裁に送致。家裁は同年9月、少年審判で児童自立支援施設送致とする保護処分を決定した。現在社会復帰している。
 佐世保事件は04年6月1日、佐世保市立大久保小で被害女児がカッターナイフで切られ死亡。佐世保児童相談所(同)が加害女児を家裁佐世保支部に送致した。同年9月から児童自立支援施設に収容され既に施設を退所した。

■関係者「残してほしかった」 長崎県内の少年2事件、全記録廃棄

 長崎市の男児誘拐殺害事件(2003年)と佐世保市の小6女児同級生殺害事件(04年)は社会を震撼(しんかん)させ、少年法改正にも強い影響を与えた。長崎家裁が事件記録を廃棄していたことが判明した20日、関係者からは「残してほしかった」と記録保存の必要性を説く声が上がった。
 長崎市の事件では、当時12歳の少年が補導された。刑罰の対象外で逮捕はされず、少年審判を経て児童自立支援施設に送致された。佐世保市の事件では当時11歳の女児が補導され、同施設送致の保護処分に。この事件を引き金に、加害者の低年齢化を指摘する声が上がり、少年院送致できる年齢の下限を14歳から小学生を含む「おおむね12歳」に引き下げた。
 佐世保市の事件で少年審判の裁判長を務めた小松平内さん(73)=宮崎市=は、事件が「(社会に)影響を与えたのは明白な事実」とした上で「廃棄について結論を出した人が(最高裁通達を)知らないわけがない。当然承知した上で、要件に該当しないと判断したのだろう」と話した。
 長崎市の事件で県中央児童相談所長(当時)として少年の処遇に携わった川原ゆかりさんは「事件の背景や重大性を振り返るための大切な資料。どこまで残すかの判断基準は難しいが、事件の意味を知る意味でも残してほしかった」と必要性を説いた。


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