島の新聞屋さん

 五島に戻ってくるのはかまわないが、仕事は自分たち夫婦で探せ、新聞屋をあてにするなよ-。帰郷する前、そんなふうに釘(くぎ)を刺されていたんです…と意外な“前史”を明かしてくれた。「厳しい仕事だよ、という思いが父にはあったんでしょうね」▲「島の新聞屋さん」の活動で日本新聞協会の「地域貢献大賞」に輝いた長崎新聞青方販売センター(新上五島町)の芳賀良介所長と妻の佳美さん。地域の話題や歴史を詰め込んだミニコミ紙発行などの活動ぶりは6日付の紙面に▲昨日の夕方、お話を聞いた。「びっくりしました。小さな活動が評価されて大きな賞をいただけることはもちろんですが、地域の方に推薦してもらったこと、地元の人が喜んでくれることがうれしい」。声が弾む▲小さな販売所がにぎやかになった。おめでとう、と祝いの花が届き、「食べんかな」と魚のお造りが届いた。長く行き来が途絶えていた友人や知人からも「新聞見たよ」と連絡があった。「震災で被災されたという方からお手紙をもらいました」▲島で、夫妻が出会った兵庫や前に暮らした高知で、そしてもっと遠くの街でも。温かく読まれ、笑顔を広げた受賞の記事▲想像を膨らませるうち、なぜか胸がぐっと詰まった。まずい、泣きそうだ-と取材の電話を切り上げた。(智)

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