ボーナスで補填しないと生活が回らない30代新婚夫婦。家計改善の3ステップ

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30代共働きの新婚夫婦。共働きで残業も多いため、家事にかけられる時間が少なく、つい支出が多くなってしまうという相談者。不足分はボーナスで補填しているそうですが、どこから改善すればよいでしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。


30代、共働きの新婚夫婦ですが、このままの貯金のペースでよいのか悩んでいます。子育て、住宅購入、老後資金への不安感があります。

まだ住宅購入の具体的イメージが持てていませんが、あと3年後くらいの購入を見据え、頭金を貯めたいとも考えています。共働きで夫婦とも残業も多く、家事にかけられる労力は多くはありません。実際、ボーナスの補填がないと月々のお小遣いでは赤字になることもあります。

メタボ家計のようにも思えますが、どう修正したらよいのかがわかりません。家計の適正化、ご教示ください。

【相談者プロフィール】

・30代夫婦、共働き

・月収:55万円

・年間ボーナス:180万円

【毎月の支出の内訳】

・家賃:10万8,000円(駐車場台込)

・光熱費:2万円

・インターネット:5,000円

・食費:5万円

・アルコール代:8,000円

・外食:1万5,000円

・日用品費:1万円

・医療費:1万円

・妻終身生命保険:1万円(加入14年目。夫はこれから加入予定)

・車経費:5,000円

・車ローン:4万円(あと一回で支払い終了。貯金増額予定)

・雑費:3万4,000円(生活予備費、余りは貯金。月5,000円〜1万5,000円ほど貯金へまわしています)

・お小遣い:夫7万円、妻8万円(被服、散髪、化粧や整容品、携帯代月3,000円程度、交際費、昼食代、コンタクトなど。また、お小遣いから個人貯金夫2万円、妻3万円=iDeCo1万2,000円つみたてNISA8,000円、住宅財形5,000円、年金保険5,000円)

【資産状況】

・共同貯金:12万

・ボーナスは90万円貯金し、残りを夫婦で45万円ずつ分配しています。

・結婚前までの貯金は夫100万円、妻300万円程度(個人の財産、という扱い)

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼 FP YouTuberの秋山芳生です。今回の相談者さまは、お子さんを希望されている30代新婚のDINKs夫婦です。

教育費、住宅費、老後資金は、人生の3大資金と呼ばれ、それぞれ1,000万円以上かかります。生涯にわたり大きなお金がかかるので、どうしても不安になりますよね。この不安を取り除くには、以下の3つのステップをしっかりと整理し実行していく必要があります。

1)STEP1 現在の家計収支の把握
2)STEP2 年間収支の把握
3)STEP3 ライフプランニング

現状の家計から生み出される資産が、将来おこるライフイベントの費用を準備できるようであれば安心感も増していくでしょう。それでは一つひとつ一緒に考えていきたいと思います。

STEP1 現在の家計収支の把握

新婚とのことですが、バラバラだった家計をコントロールするには家計簿をつけて「夫婦でお金の使い道や資金を把握する」ことが重要です。収入は把握しているけれど、支出は夫婦別財布で把握していない。また、それぞれの資産がいくらあるかわからないという家庭は結構多くあります。そうなると、将来いくら貯まるのかがわからず、目線も揃わないので、協力して将来を描きにくなってしまいます。ご相談者様の場合は、夫婦で預貯金も確認できているようですが、支出管理が甘いようにも思います。それぞれの費目ごとに改善できそうなポイントを整理していきましょう。

費目ごとのアドバイスは?

◆食費
食費の合計は、食費5万、アルコール代8,000円、外食1万5,000円を合わせて7万3,000円となります。夫婦2人なら、3万円から5万円で十分やっていくことができるはずです。共働きで自炊の時間が取りづらいかもしれませんが、「ふるさと納税で仕入れたお米を毎日炊いておく」だけでも出費は大きくかわっていくと思います。それほど手間ひまかからずに工夫できるやり方を考えてみましょう。

◆保険
妻が終身の保険に入っているとのことですが、基本的には必要ないでしょう。終身保険は、貯蓄性のある保険ですが、「それほど増えない」「保障は薄い」「資金拘束される期間が長い」などのデメリットがあります。保険が必要であれば、効率的な掛け捨て保険を選べば良いですし、資産を増やしたければ投資信託などの運用商品を買えば良いと思います。中途半端なものに資金を拘束されると、良い保険を買う機会損失や、投資に回す機会損失になりかねません。

終身保険14年目であれば保険料分の返戻金が受け取れる可能性もあるので、現在やめた場合の返戻金もしっかり把握しておくと良いでしょう。

また、基本的に保険は、「もしものことが起こったら対応できないリスク」に備えるものです。会社員の夫婦であれば、公的保障(医療費3割負担、高額療養費、失業保険など)があり、十分に守られている上に、パートナーに万が一のことがあっても対応できないことはないはずです。

給与天引きのためあまり意識はしないものですが、公的な保険にはしっかりとお金を払っているので、民間保険は必要ないでしょう。ただし、お子さんが産まれたら、パートナーが倒れたりした場合に1人でお子さんの生活費や教育費を賄う必要があります。収入保障保険など効率的な死亡保険を選択すると良いでしょう。

◆その他
その他の費用として、雑費3万4,000円、お小遣い(夫7万円、妻8万円)があります。ここに「被服、散髪、化粧や整容品、携帯代、交際費、昼食代、コンタクトなどが含まれている」とのことですが、具体的に何にいくら使っているのか把握できません。把握できないと、改善ポイントがよくわからないので改善案も出しづらいですよね。

家計を改善する際は、気合いと根性でなんとなく無理な予算を作ると失敗してしまいがちです。まずはしっかりと家計の内訳を管理し、お小遣いとして自由に使う部分と、携帯代、化粧品、美容院、昼食代など定期的にかかる支出は費目を分けて管理すると良いでしょう。また、お昼代は「食費」に含めて管理すると良いと思います。

STEP2 年間収支の把握

毎月の収支で足りない部分は、ボーナスで補填しているとのことですが、年間でかかる特別費がみこめていないことが原因の可能性があります。例えば、旅行費用やパソコンや家電の購入、冠婚葬祭の費用はある程度年間で予算を組んでおかないと「想定外の支出」になりがちです。通年で特別費用がいくらかかるかを想定できていれば、毎月の予算からその分をあらかじめ取り分けて準備していくこともできます。

そのほか引越し費用、出産、自動車の購入、税金の支払い、誕生日プレゼントなど、毎月発生するわけではないけれど、発生する可能性が高い支出は洗い出しておくと良いでしょう。

STEP3 ライフプランニング

ライフプランニングは人生設計のことです。人生で想定できるライフイベントを洗い出し、キャッシュフロー表をつくることで、破綻しないように資産形成の設計をしていきます。

「人生100年時代」と言われる中、100年分の人生設計とその間の収支を想定して準備していくことは、プロのファイナンシャルプランナーでないと難しいかもしれません。しかし、3年から5年という期間であれば考えられると思います。向こう数年に想定されるライフイベントを洗い出して、1年ごとに収支を想定してみると良いでしょう。そして、目標とする資産をいつまでにつくるかを決めることで、毎年の収支目標計画を立てることができます。

支出は、家賃、生活費、保険、教育費、その他などある程度の大きな費目の固まりで分けて考えます。家賃も、引越しのタイミングで引越し費用がかかったり、火災保険・更新費用などもかかったりすると思いますので、想定しておくと良いでしょう。このライフプランニングは「正確」であるかよりも、「わかる範囲で洗い出せているか」が重要になります。少しでも「予想外の支出」を減らし、準備を事前にしておくと安心感が増していくはずです。

家の購入は家族の構成が固まってからがベター

ライフイベントを考えていくと、その順番が重要であることに気づくと思います。例えば家を購入する場合は、できれば一緒に住む家族の人数が固まってからの方が良いでしょう。家族の人数によって必要な間取りや部屋数は変わってきます。家族のフォーメーションが決まってから購入したほうが無駄が少ないですね。例えば、お子さんを2人は欲しいと思って、3LDKや4LDKの家を購入しても、希望どおりにいかないこともあります。また、お子さんを1人しか作らない予定で家を買ったけれど、どうしてももう1人欲しくなることもあります。

また、夫婦二人とも収入がしっかりあるDINKs時代の収入を前提に住宅ローンを組んだ場合、お子さんの育児期間に産休・育休・時短勤務などの影響で収入が減る可能性もあります。このあたりを踏まえた上で無理のない予算の家を買うと良いと思います。

住宅ローンを組んで家を購入する場合に注意が必要なのがボーナス払いです。ボーナスは企業の業績によって減ったり増えたりするので、確実な収入にはなり得ません。ボーナス払いを前提に住宅ローンを組んでしまうと、赤字に陥ってしまったり、支払い困難になってしまうこともあります。家計を改善しながらボーナスで補填しなくても年間収支が黒字になるような計画を立てて、その上で無理のなく支払える金額の家にすると良いと思います。

ライフプランは変化することが前提

数年先まで予定を立てても、その時になってみると大きく変化していることがあります。真面目な人ほど一度組んだライフプランとのズレが気になってしまい、ライフプランそのものを放棄してしまう人がいますが、一度組んだライフプランはその都度その都度変化を吸収しながら微調整していけば良いのです。

できれば年に1回は軌道修正しながら、先々の予定や予算を組んでいくことで、希望に近い未来が実現しやすくなっていきます。また、ご夫婦で目線をそろえられると非常に強い家計になりますし、家族のパートナーシップも強くなります。ご相談者様の場合も、まずは夫婦で家計を共有しながら、未来におこるライフイベントを話し合ってみるとよいのではないでしょうか? どこか参考になれば幸いです。

© 株式会社マネーフォワード