年30万円以上増額した例も…ねんきん定期便、損しないための見るべきポイントをお金のプロが徹底解説

日本には、20歳から60歳の全ての人が加入する国民年金と、会社員や公務員の人が加入する厚生年金の2つの公的年金制度があります。どちらかに加入するのではなく、国民年金は全ての国民が加入し、厚生年金は会社員もしくは公務員の人が加入する仕組みになっており、会社員もしくは公務員の人は、国民年金と厚生年金の2つの公的年金制度に加入することになります。


ねんきん定期便とは?

公的年金制度に加入すると、毎年の誕生日月に「ねんきん定期便」というハガキが本人宛てに送られてきます。ねんきん定期便には、国民年金や厚生年金への加入状況や、将来受け取れる年金の予想額などが記載されています。おもにこれまでの加入状況に間違いがないかを確認するために送られてくるものです。

50歳を境に内容が変わる

ねんきん定期便に記載されている内容は、50歳未満の人と、50歳以上の人で異なります。

では、まず50歳未満の人のねんきん定期便を見てみましょう。

50歳未満の人に対しては、まず、ハガキの表に記載されている金額をみることで、これまでの加入実績によって、年金額が昨年と比べてどれだけ増えているかを確認できます。

また、ハガキ(表)の「直近の月別」をみることで、直近の月別加入状況を確認できます。ご自身が加入している公的年金制度において、国民年金の納付状況に「未納」や「免除」、「猶予」などがないかを必ずチェックするようにしましょう。また、厚生年金に加入している場合は、保険料納付額についても確認しておきましょう。

裏面には以下の3つが記載されています。

1. これまでの保険料納付額(累計額)
2.これまでの年金加入期間
3.これまでの加入実績に応じた年金額

50歳未満の方が受け取るねんきん定期便では、65歳の受け取り開始時にいくら受け取れるかといった金額は記載されていません。ただ、「3.これまでの加入実績に応じた年金額」の合計を見ることで、年金受取り開始時に受け取れる金額を知ることができます。例えば、120万円と記載されていれば、今後の加入状況に変化がなければ、最低でも120万円は65歳の年金受け取り開始時に受け取れるということです。

では、50歳以上になると、記載されている内容がどのように変わるのでしょうか。

50歳以上になると、現在の年金制度に60歳まで加入していると仮定したうえで、65歳から受け取れる年金額を知ることができます。ただし、あくまでも見込額であることに注意しておきましょう。

さらに、65歳から受け取れる年金の受給開始を70歳まで延ばした場合と75歳まで延ばした場合の金額についても知ることができます。

直近の月別加入状況や、これまでの保険料納付額などについては50歳未満の人と同じ形で記載されます。

封書で届く時がある

ねんきん定期便は毎回ハガキで届くわけではありません。節目年齢といわれる35歳、45歳、59歳の3回は、封書で届きます。ハガキと封書の記載内容の一番の違いは、これまでの「年金加入履歴」が全て記載されていることです。そのため、国民年金に加入してからこれまでの納付状況や、厚生年金の標準報酬月額といった月別の状況を確認できます。

さらに、節目年齢の時に届く封書には、内容にもれや誤りがある場合に「年金加入記録回答票」を用いて、日本年金機構に問い合わせることができます。

ねんきん定期便のチェックポイント

ねんきん定期便は、将来受け取れる年金額を知るうえで非常に重要な書類です。そのため、届いた際には、以下の項目を必ず確認するようにしておきましょう。

50歳までの人のチェック項目

50歳未満の人のチェック項目として挙げられるのは、直近の月別納付状況です。

「最近の月別状況」の欄をチェックし、記載されている内容に誤りがないか、また、もれがないかをチェックしましょう。特に転職などで厚生年金加入期間の空白期間が存在する場合であれば、その期間に該当する国民年金の欄が「納付済」になっているかどうかを確認しておくことが大切です。

また、過去1年間に「未納」の期間がある場合は、できるだけ早く支払う必要があるため、見つけたらすぐに手続きを行うようにしましょう。

手元に国民年金保険料納付書があれば、それをもって近くの金融機関もしくはコンビニエンスストアで支払えます。納付書が見当たらない場合は、再発行の手続きが必要ですので、年金事務所に連絡し、再発行してもらいましょう。

50歳以降の人のチェック項目

50歳以上の人も、月別の納付状況を確認することが大切ですが、合わせて自分が受給できる老齢年金の種類、そしてそれぞれの受け取り見込額を確認しておきましょう。また、厚生年金加入者であれば、極端に保険料納付額が低い時期がないかなども確認しておくことをおすすめします。

ねんきん定期便の内容に誤りがあったら?

ねんきん定期便の内容にもれや誤りを発見した場合は、その内容について、修正してもらうために年金事務所に相談しましょう。

訂正請求

ねんきん定期便の内容に誤りがあったまま放置しておくと、将来受け取れる年金額が少なくなる可能性があります。そのため、ねんきん定期便にもれや誤りを見つけた際には、その記録を訂正するよう国(厚生労働省)に請求することができます。このことを年金記録の訂正請求といいます。

日本年金機構の「年金記録問題についてのこれまでの取組状況」によると、2022年7月末時点でねんきん特別便によって年金記録が回復した人は述べ1042万人にものぼります。そして調査の結果、増額した年金額の平均は約1.4万円(年額)ですが、最高額は約38.2万円です。ここまでの差が生じる可能性があることからも、ねんきん定期便に記載されている「加入状況」については細かく確認しておきましょう。特に節目年齢に送られてくる封書に入っている「これまでの『年金加入履歴』」はしっかりと確認しておく必要があります。

訂正請求の手続き

訂正請求を行うには、「年金記録訂正請求書」「同意書」「請求の概要」「請求内容に関する状況が分かる資料」を合わせて、年金事務所に提出しなければなりません。また、請求したからといって必ず訂正されるとは限らない点にも注意しておきましょう。もちろん、決定に対して不服がある場合は、審査請求を行うことができます。

免除や猶予期間がある場合の対応方法

ねんきん定期便を確認し、免除期間や猶予期間があることが分かった場合は、できるだけ早く解消するようにしましょう。解消する方法としては、以下の2つがあります。

10年以内であれば追納

国民年金保険料の免除や猶予を受けた期間がある場合は、10年以内であれば追納が可能です。ただし、3年を過ぎたものについては加算額が上乗せされますので、早めに支払うことをおすすめします。

10年を過ぎている場合は任意加入を考える

免除や猶予を受けてから10年を経過しており、追納できない場合で、60歳になった時点で保険料の納付月数が480ヶ月に満たない場合は、65歳までの間、国民年金に任意加入することにより、納付月数を480ヶ月に近づけることができます。

任意加入には条件があり、全てを満たす必要がありますので、詳細を確認して加入の手続きを行ってください。

満額受給できるためにできることをやっておこう

ねんきん定期便の内容を確認することで、将来受け取れる年金額の目安を知ることができるほか、これまでの加入状況を知ることもできます。年金保険料の免除や猶予を受けている場合は、将来受け取れる年金額が、免除期間や免除の内容に応じて減額されるため、追納や任意加入を検討することで、受け取れる年金額を満額に近づけることができます。

また、厚生年金加入者の場合は、納付済みの保険料額を確認し、誤りがある場合は訂正請求を行い、正しい内容に直しておきましょう。

最終的に正しい年金額を受け取れるかは自分の行動にかかっています。不明な点の解消や、追納など、自分で行えることは自己責任と考え、忘れずに行うことが大切です。

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