8人死亡那須雪崩事故初公判 3教諭無罪主張 検察と被告側が全面対決【動画】

那須雪崩事故で3教諭の初公判が開かれた宇都宮地裁206号法廷=25日午後1時30分、宇都宮市小幡1丁目(代表撮影)

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭3人の初公判が25日、宇都宮地裁(瀧岡俊文(たきおかとしふみ)裁判長)で開かれた。3教諭側は「雪崩発生は予想できなかった」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。雪崩の予見可能性の有無などを巡り、検察側と弁護側の全面対決の構図となった。

 在宅起訴されたのは、当時の県高校体育連盟(高体連)の登山専門部専門委員長だった教諭(56)、副委員長で犠牲者8人がいた班を引率していた教諭(53)、後続の班を引率していた教諭(59)。

 検察側は冒頭陳述で、3被告に登山経験や冬山の引率経験が多数あり、雪崩が発生しやすい状況を把握していたことを強調した。講習会が部活動の一環であり「一層高度な注意義務、安全対策が求められる」とも説明した。

 事故当日は前日からの大量の積雪で雪崩が発生しやすい状況だったのに、「3被告は情報収集、安全な訓練区域の設定、非常時の連絡体制の共有をせず、漠然とした計画を立てた」と指摘。副委員長だった教諭と後続の班を引率していた教諭が急斜面を認識した際に回避行動をとっていれば「被害者らは雪崩に巻き込まれなかった」と主張した。

 罪状認否で瀧岡裁判長は検察側の起訴内容を細かく区切り、3被告に事実関係や認識を確認した。3被告は事故発生までの経過をおおむね認めたものの、急斜面の現場に大量の積雪があったことの認識は否定した。委員長だった教諭は「(安全対策の一部は)副委員長の先生と後続の班を引率していた先生に任せていた」と説明。副委員長だった教諭と後続の班を引率していた教諭は「安全な区域は設定していた」などとし、漫然と訓練を実施したとの起訴内容を否定した。

 弁護側は「雪崩事故発生の予見可能性と注意義務は存在しない」と無罪を主張。3被告の行動と8人死亡との因果関係を否定した。

 死亡した8人のうち一部の遺族が被害者参加制度を利用して出廷した。今後、意見陳述などを行う見通し。第2回公判は12月20日で、弁護側が冒頭陳述で無罪主張の根拠を説明する。

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