那須雪崩事故遺族 被告否認に憤り隠さず 真相解明の望みにじむ

那須雪崩事故の初公判を終え、報道陣の取材に応じる遺族の奥さん=25日午後6時30分、宇都宮市小幡1丁目

 真相解明や責任追及への望みと、憤りが交錯した。業務上過失致死傷罪に問われた3被告の刑事裁判が宇都宮地裁で始まった25日。那須雪崩事故で愛するわが子を失った親たちは、長く姿を見せず直接言葉を交わすことのなかった3被告を見つめ、その言動に怒りを隠さなかった。

 事故後、第三者検証委員会、県などを相手にした民事訴訟(係争中)で真相追究などを訴えてきた。奥公輝(おくまさき)さん=当時(16)=の父勝(まさる)さん(51)は「これまでわれわれが動かないと進まないことばかりだった。刑事裁判は検察が戦ってくれる」と口にした。

 3被告が入廷すると、遺族たちは厳しい視線を向けた。弔問は事故後2年ほどで途切れ、被告に尋ねたいことは募る一方。高瀬淳生(たかせあつき)さん=当時(16)=の母晶子(あきこ)さん(56)は「今までどんな気持ちでいたのかを見極めたい」。佐藤宏祐(さとうこうすけ)さん=当時(16)=の父政充(まさみつ)さんも、メモを書き留めた。

 鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん=当時(17)=と奥公輝さんの母はこみ上げる思いを抑えきれず、何度も涙をぬぐった。

 罪状認否。被告の1人が親たちに謝罪し、奥さんは「罪を認めるのか」とよぎった。しかし直後、「予想通り」の無罪主張に、怒りが沸き立った。「感情を逆なでされた」と憤りを抑えられなかった。

 被告が繰り返した「雪崩は予想できなかった」との主張。毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん=当時(29)=の父辰幸(たつゆき)さん(70)の目には「3人とも平然としていた」と映った。「全く反省しているように見えない。あまりにも見苦しい」と批判した。

 証拠調べで事故2日後に空撮された現場全景の映像が流されると、親たちは食い入るように見入った。

 わが子の命が奪われた現場。奥さんは検証委の報告書などから、発生当時の状況をパソコンで再現してきたが、全景に触れたのは初めて。「その状況をどれほど知りたかったか。やっと見ることができた」と言葉を詰まらせた。

那須雪崩事故の初公判後、報道陣の取材に応じる遺族の奥さん=25日午後6時30分、宇都宮市小幡1丁目

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