大分トリニータ J1昇格に向けての短期決戦が始まる 「オーバー30」に注目 【大分県】

1年でのJ1復帰を目指す大分トリニータの最後の挑戦が始まる。今季のJ2リーグ戦を5位で終え、30日から始まるJ1参入プレーオフに出場する。リーグ戦を2連敗で終えることになった23日のFC琉球戦を終え、下平隆宏監督は「非常に残念な結果になった。自分たちのリズムで試合に入ったが、1点が遠かった」と2試合連続で無得点に終わったことを反省した。結果が出ない中で収穫を見いだすとすれば、との問いに対し、「勝ってプレーオフに勢いをつけたかった。負けて得るものはない」と悔しさを露わにしたが、長期離脱していた藤本一輝や渡辺新太を起用、二人の復帰のめどが立ったのは大きい。

プレーオフの1回戦となるロアッソ熊本戦に向けて、メンタルのメンテナンスが重要だ。「ここ2試合は気合いがあったが空回りした」(下平監督)と、気持ちとプレーがかみ合わなかった。40節の横浜FC戦でJ1参入プレーオフの出場権を手にしたことで、気持ちの緩みがあったのも否めない。もう一度、気持ちをつくり、チームに一体感をもたらす作業が必要となる。

リーグ戦を振り返ると、細かな戦術的なアプローチからチームづくりが始まったが、過密日程の連戦や主力にけが人が続出したことで、思うような結果が出なかった。下平監督は「戦術の前に、気持ちを出すことが優先。それは試合だけでなく練習から声を出し、みんなで盛り上げていこう」と選手に呼び掛けた。この頃から「一体感」がチームの合言葉となり、戦う集団となった。実際に後半戦は10勝8分3敗で勝ち点38を積み上げ、順位を上げた。

松本怜や上夷克典が久々に先発出場した琉球戦

この1週間でポイントとなるのがベテラン選手の存在だ。下平監督は「プレーオフは勢いも大事だが、ベテラン選手の落ち着いたプレーが必要」と話す。リーグ最終戦で4カ月ぶりに34歳の松本怜を先発に抜擢(ばってき)した。「けが人が出たこともあるが、レイ(松本)は試合に出なかった間もチームを支え、練習から質の高いプレーをして若い選手の見本となった。本人は結果を出せず悔しかっただろうが、いいプレーをした」と下平監督のベテラン選手への信頼は厚い。

チームには最年長の梅崎司を筆頭に、数多くの修羅場を経験した金崎夢生、今季リーグ戦に全試合出場した三竿雄斗、選手として成熟の極みにある下田北斗、野村直輝ら30歳を超える「オーバー30」の頼もしい選手がいる。賭けるものの大きさと緊張感。勝者と敗者を分ける明暗。J1昇格に向けての3試合の短期決戦は、酸いも甘いも知るベテランがチームを引っ張るはずだ。梅崎は言う。「(上位2チームに入って)ストレートで昇格するのが一番だが、全部勝ち抜かないと得られないものがある。プレーオフを制すれば、すごく大きな財産になる。ストレートインするよりもチームとして大きくなるチャンスだと思う」。今季最大の大一番を迎え、ベテランの落ち着きが心強い。

梅崎司らベテランがチームを引っ張る

(柚野真也)

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