スーパーフォーミュラ新エアロに開発ドライバーが好感触「想像より近づけた」「S字でラインがクロスしても平気」

 10月26〜27日、全日本スーパーフォーミュラ選手権をプロモートする株式会社日本レースプロモーション(JRP)は、三重県の鈴鹿サーキットにおいて、6回⽬となるカーボンニュートラル(CN)開発テスト(次世代車両開発テスト)を行った。

 今回のテストでは、これまでのテストで得られたデータを元に、ドライバーの⼒がより発揮できるようエアロダイナミクスを改善した新しいボディーワークを装着した2台の開発車両により、⾛⾏評価が行われた。

 具体的には、フロントウイングのフラップ形状、翼端板、リヤウイング、サイドポンツーンなどが、より三次元的な形状となったほか、サイドポンツーンとエンジンカバーについては、Bcomp 社の⿇などの天然素材を活⽤したバイオコンポジット素材を採用している。

 また、これまで⾏われた5回の開発テスト同様、カーボンニュートラルフューエルのテストや、開発中のタイヤを装着してのテストなど、2⽇間で合計8時間、2台合わせて約1678kmを走破した。

鈴鹿で2日間のテストを行ったスーパーフォーミュラの開発車両
鈴鹿で2日間のテストを行ったスーパーフォーミュラの開発車両
新たな3次元形状となったフロントウイング。とりわけ翼端板周辺の造形がユニークだ

 開発テストを担当した2名のドライバー、アンバサダー、テクニカルアドバイザーのコメントは、以下のとおり。次回の開発テストは、11月21・22日に、栃木県のモビリティリゾートもてぎにて行われる予定だ。

■石浦宏明
「どんなクルマでも、初めて⾛る時は楽しみですので、コースインして最初から、なるべくその時の性能を出し切って⾛ろうと、今回のテストでも攻めて⾛っていました。壊してはいけないというのもありますけど(笑)、それではあまり評価にならないので、逆に『思い切って⾛ろう』という感じで⾛っていました」

「この新しいエアロパッケージは、今回鈴⿅に来てから実物を⾒ました。⾃分が近くで⾒た印象もそうですが、初⽇の⾛⾏後にメディアに出ていた⾛⾏写真等を⾒ると、また違う印象です。僕は特にフロントウイングの三次元感が好きです。あとは、ツイッターで⾒たサイドポンツーンの後ろから⾒た形。そこもいいなと思いました」

「初⽇の⾛り始めは、かなりダウンフォースが少ない状態で⾛り始めましたが、初⽇の午後から少しダウンフォースを増やしてもらいました」

「その状態ですと、ニュータイヤでもしっかりボトムスピードを上げて⾛れますし、ユーズドタイヤでもそんなに今までと⼤きな差がなくロングランとかもできました。そんなに遅くなってしまうこともないので、最低限これぐらいのダウンフォースが必要なんだなということが、改めて確認できました」

「追⾛に関しては、想像していたよりも近づけました。まったく乱気流を感じにくくなっていて、S字の中でラインがクロスしても、まったく平気でした」

「塚越選⼿がスプーンのふたつ⽬で僕にぴったり付いた状態で、そこから⽴ち上がったらスリップが効いて、130RまでにOTS(オーバーテイクシステム)を使わなくても横まで来そうな感じになり、1対1の場合、これはだいぶ効果があるなと思いました」

トヨタエンジン搭載、通称“赤寅”をドライブした石浦宏明

■塚越広大
「今回のテストに対しては、ワクワクもあったのですけが、『壊しちゃいけない』というドキドキもありました。レースウイークにはデモランもありますし。でも、いろいろとこれまでテストして形になったものが⾛るということで、達成感はありましたし、実際に変化もありました」

「ここからさらにどうするかという検証があると思いますし、また結果が伴っていけばいいなと思っています。残り少ない時間で、さらに詰められるものがあるなら、より良くしていきたいですね」

「実⾞を初めて⾒たのは、今回の鈴⿅テスト前に⾏ったイタリアでのシェイクダウンの時です。その時に、パッと⾒で『すごくカッコ良くなったな』と思いましたね。時代によって、クルマの形はいろいろ変わっていく中で、前の形がちょっと直線的だったところから綺麗な曲線が増えて、すごく今の流れに沿った感じだと思います」

「近代的なウイングの形にもなりました。僕は特にフロントウイングの造形、2枚⽬のフラップが好きです。全体に3段になって、厚みとか迫⼒が出た感じになっているのがいいですね」

「その新しいエアロに関しては、もともとあったターゲットに近い状態で⾛ることができました。何種類かダウンフォース量を試したのですが、⽯浦さんとも話して、最終的にいい所に落ち着きましたし、これまで毎回テストしてきたターゲット近くで⾛れているので、狙いどおりになってきています」

「追⾛テストに関しては、今までとものすごく違いがありました。鈴⿅の場合、S字で交差する時に、SF19は結構バランスを崩すような場⾯が多かったのですが、今回のエアロはすごくそれが少ないです」

「S字だけでなく、他のコーナーでもすごく後ろに付きやすくなっているのかなというフィーリングはありました。速い者同⼠だと、もともとオーバーテイクって難しいじゃないですか。ただ、ペースのいい⼈が、空⼒の影響によって距離が離れてしまって抜けないっていうのは減るのではないか思います」

「速い⼈がきちんと前⾞を抜けるっていうシチュエーションが、できやすくなるんじゃないかと感じました」

ホンダエンジン搭載、通称“白寅”をドライブした塚越広大

■「乱気流の少なさが実証された」と永井氏

■⼟屋武⼠アンバサダー
「今回は、ようやく新しいエアロパッケージでの実⾛を開始したということで、『おお、⾛ったぞ』という感動がありました。このクルマはF1でも⾒られるような今の潮流に乗った形になりましたし、斬新な部分もあって、⾒た⽬が変わりましたよね。“新しさ”があるエアロパッケージです」

「実際、⾛らせてのドライバーのコメントも『全然近づける!!』と⾮常にテンションが⾼かった。リップサービス的な物ではなく、ふたりともコメントの声のトーンが⾼かったですね。それで、『本当にいいんだ』ということを肌感として感じることができて、僕もホッとしました」

「これまでの作業が実を結んだということで、達成感がありましたし、SF NEXT50としても⼤きな⼀歩を踏めたんじゃないかと思います。タイヤや燃料、バイオコンポジットなど、いろいろと引き続きテストしていますけど、エンターテインメント性の部分、まずはレースが⾯⽩いかどうかという部分では、間違いなく⼤きく⼀歩を踏み出した印象です」

■永井洋治テクニカルアドバイザー
「開発テストの⼀番の⽬的だったのが追い越しのできるクルマなのですが、ドライバーたちの⾔葉を借りると、想像以上の効果が出ているということでした。シミュレーション通りではありますが、それがある程度実証できたことにはホッとしています」

「追⾛に関しては、結果的にはパッケージングがシミュレーション通りで、後ろの乱気流の少なさが実証されました。だから、興奮もありましたし、みんながやって来たことが無駄にならなかったという安⼼もありました」

「まだ2名のドライバーしか体感していませんけど、いろいろなドライバーが体感した時に、どう⾔うのか。きっと驚きがあると思います」

鈴鹿で2日間のテストを行ったスーパーフォーミュラの開発車両
鈴鹿で2日間のテストを行ったスーパーフォーミュラの開発車両と、開発ドライバーの石浦宏明・塚越広大

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