映画『背中』舞台挨拶。分断されて宙づりになった気持ちをどうすればいいかという思いから脚本を書いた

マヨナカキネマ最新作となる映画『背中』の公開初日舞台挨拶が行われた。主人公・ハナ役の佐藤里穂、ハナを愛する男・アカツキ役の落合モトキ、越川道夫監督が登壇。公開を迎えた喜び、本作への想い、撮影秘話などを語った。 ある日突然ハナの前から消えたショウイチロウを恋人の親友であるアカツキと関係を結びながら待つ二人の姿を描いた映画『背中』。孤高の映像詩人といわれる越川により、待つ女の心象風景を抒情的に撮られている。 映画『背中』は「いまはコロナもあり亡くなった人と満足にお別れをすることも出来なくなっています。僕もそういった経験をし、その分断されて宙づりになった気持ちをどうすればいいかという思いから脚本を書いたのがこの作品です。」越川自身の体験・想いから本作は動き出した。

初主演を佐藤は「初主演にプレッシャーもありましたが、それはワクワクする気持ちと同時で凄く幸せでした。演じているときは私のことを見透かされているなと思いました。私の実体験を描いたわけではないですが、現実との境界線があいまいになる瞬間もありました。」不安もある中ハナを自身と重ねながら演じた。 アカツキ役の落合は「撮影に入る前に嶺豪一くんも含めて監督と4人で話す機会があったんです。その時に演者3人の恥ずかしい部分をさらけ出せる時間をとれたので、それがあったことで描かれた脚本を素直に纏って役に入ることが出来ました。」とパーソナルな部分をさらけ出したという。

今夜の舞台挨拶にはこれなかった嶺からのメッセージも届いた。「越川監督の登場人物はどこかで会ったことがある人物で今作もそうでした。僕のその人も遠くに行ってしまい、その思いを重ねながらショウイチロウを演じました。その人がこの映画をどこかで見てもらえたら嬉しいなと思っています。」と自身の体験・想いを重ねて演じた。 その想いを受け越川は「嶺くんとはそういった話しをしていました。僕は映画と生活が離れてほしくない、地続きであってほしいと思っています。時には整理できないまま映画に持ち込んでしまうんですけど、整理できないままの気持ちを持ち込んでその気持ちを花のようにポッと置いて欲しいとも思っています。」と嶺の想いを受けての気持ちを語った。

最後に越川から「みなさんも大切な人と別れるという経験をしてきたと思います、その想いを重ね合わせながらこの映画を観ていただければと思います。」と本作に込めた想いを改めて語り舞台挨拶は幕を閉じた。 映画『背中』は本日10月29日(土)より、新宿K’s cinemaにて公開される。 [REPORT:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]

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