【テント泊登山の始め方】初心者におすすめの持ち物・注意点などを経験者がレクチャー!

「テント泊登山ってしてみたいけどハードルが高そう。どんな準備をすればいいんだろう?」そんな戸惑いを持っている人も多いと思います。筆者も最初は登山のイメージがわからず情報集めからスタートしました。テント泊登山はキャンプの要素に加え、山に登った人だけが味わえる自然の雄大さに出会えるのがメリット。この記事では、テント泊登山を年に3~4回する筆者が、これまでの経験を踏まえ準備の方法や、普段のキャンプと違い戸惑ったことなどを紹介していきます。テント泊登山をこれから始めてみようと思っている方の参考になれば嬉しいです。

テント泊登山を思い立ったら事前に下調べ・計画をたてよう

筆者撮影 苦労して登った先に広がる風景はこれまでの疲れを癒してくれます

ついに、テント泊登山に挑戦!はやる気持ちをおさえながらしっかり計画をたてましょう。

インターネットでの検索がメインになるかと思いますが、初心者におすすめのテント場や体験談などがたくさん見つかるのでしっかり情報収集していきましょう。

近くに経験者がいれば、ぜひ話を聞いてみてください。アウトドアショップの山好きスタッフさんの経験談も参考になりますよ。

目的地の決め方

慣れないテント場でのキャンプは不安がつきもの。

チェックしておきたい目的地の条件は以下の通りです。リスクを極力回避することが大事です。

  • 登山の難易度が低い(難所が少ない)
  • 登山口からテント場までの距離が近い(2時間以内)
  • トイレがある
  • 水場がある
  • 近くに山荘がある(有人、少なくとも避難小屋)

日程の決め方

筆者撮影 テント場の水場は飲料水を確保するのが目的。食器洗いはできません

テント泊登山のベストシーズンは梅雨明け後から秋まで。

初心者であれば夜もさほど冷え込まない7~8月がおすすめです。

標高にもよりますが、10月に入ると夜はぐっと冷え込むため、冬用のシュラフやダウンなどしっかりした防寒対策が必要となってきます。

事前の情報収集とシュミレーション

背負う荷物の重さは20kg近くなることもざらにあります。

ある程度持ち物が決まってきたら、平地でも良いので実際に背負って歩く練習をしてみましょう。

また、山岳地図や山岳情報サイトで自分が歩くコースがどんな様子なのか十分な下調べを。

▼おすすめの山岳地図「山と高原地図 (木曽駒・空木岳)」

地図のほか、小冊子がついていてコースタイムや解説、写真など、参考になります。

テント泊登山の1泊2日スケジュール例:山の上では何をして過ごす?

筆者撮影 テントに荷物をおいて身軽にトレッキングもできます

普段のキャンプなら、薪を割ったり、焚き火を見て過ごしたり、食事の準備をしたりといろいろやることを想像できますが、山の上ではいったい何をすればいいのでしょうか?

中央アルプスの木曽駒ヶ岳でのテント泊を例にスケジュールを紹介します。

筆者撮影 トップシーズンのテント場は場所の取り合いになることも。「早出早着」を心がけましょう

【中央アルプス・木曽駒ヶ岳1泊2日テント泊スケジュール例】

テント宿泊地:「頂上山荘」

<1日目>

  • 10:00頃:「菅の台バスセンター」着、乗車券購入など
  • 11:00頃:バス&駒ヶ岳ロープウェイで「千畳敷」駅着。併設のカフェで昼食とトイレなど
  • 12:00頃:登山開始
  • 14:00頃:「頂上山荘」到着・チェックイン・テント設営
  • 14:30頃:大きな荷物を置いて木曽駒ヶ岳山頂(片道20分)、周辺散策など
  • 17:00頃:夕食
  • 19:00頃:就寝 ※夜中に目が覚めたら星空チェック

<2日目>

  • 4:00頃:起床 ※周りのテントがゴソゴソ始める
  • 5:00頃:日の出見物 ※天気が悪ければもう一度寝てもOK(笑)
  • 6:00頃:朝食、寝袋などを干す
  • 8:00頃:チェックアウト、体力に応じて周辺をトレッキング・登山など
  • 11:00頃:下山開始。「頂上山荘」から歩いて30分の「宝剣山荘」に立ち寄り、昼食
  • 14:00頃:「千畳敷」駅のカフェで休憩・お土産品チェック
  • 15:00頃:ロープウェイ「千畳敷」駅出発
  • 16:00頃:菅の台バスセンター近くの温泉でまったりしてから帰路に

登山には、「早出早着」という鉄則があります。

テント場に着いて日没までに設営と食事の準備と片付けが終われるよう、テント場には午後2時に着くことを目標に余裕を持って行動しましょう。

また、下山も時間に余裕をもたせた計画を。

テント泊登山に必要な持ち物をチェック

筆者撮影 初めてのテント泊登山装備は38Lのザックで重量は14kgでした。

以下で紹介するリストは、あくまでも基本的なものです。

テント泊登山では、ふだんのキャンプと違うギアも必要になります。

目的地の状況や自分がよく使うものなど、自分用の持ち物リストをつくりましょう。

夏場でも夜は思いのほか冷え込むので防寒対策は忘れずに!

筆者撮影 雲海と日の出。テント泊ならではの風景です

就寝に必要なもの

※着用するウェア類、貴重品類は省略しています。

  • テント

自立式でダブルウォールタイプがおすすめ

▼ニーモ「アトム2P」

  • 寝袋

登る山の気温に合ったものを

▼イスカ「エアドライト480」

  • マット

寝心地がよくなり、地面からの冷えを防ぐアイテム

▼サーマレスト「ネオエアーXライト」

食事に必要なもの

  • ガス&バーナー
    調理する場合に必要。固形燃料・アルコールストーブも使える。
  • クッカー&カトラリー
    メスティンやシェラカップなど、箸やフォークも忘れずに。
  • 食材
    ドライフードのほか、軽量で保存が効くもの、ゴミがでないもの。
  • 行動食
    登山は思いのほか体力を使うので、チョコレートやようかん、菓子パン、ミックスナッツなど途中でエネルギー補給する。
  • 水筒
    行動中の水分補給とテント内で過ごす際に使用。

防寒・雨対策は絶対必要!

  • 防寒着

朝晩は冷え込むことを念頭に。夏でも薄手のダウンやフリースがあるとよい。ダウンソックスなど就寝時の防寒も考えておく。

  • レインウェア

雨の中を長時間歩くことも予想されます。防寒用にも使える。

安全対策

  • ヘッドライト
    山は暗くなるのが早い。予備電池を忘れずに。
  • エマージェンシーキット
    常備薬や絆創膏、エマージェンシーシートなど。
  • 地図&コンパス
    登山の必須アイテム。登山用のアプリと併用すればさらに安心。
  • 充電用バッテリー
    スマホで写真をたくさん撮ったり、気温が低いとバッテリー消耗が早いので要注意。

衛生対策

  • 衛生用品
    歯ブラシ、ティッシュ、速乾タオル、ウェットシート、携帯トイレなど。
  • 着替え
    雨にぬれたときや就寝前にどうしても着替えたいときに必要。
筆者撮影 レインウェアや冬用シュラフなどをレンタルし、9月中旬木曽駒ケ岳テント泊登山のデビューを果たしました

これらはすべて買いそろえると高額になってしまいます。

予算が少ない、これから続けるかどうかわからない、そんなときは「レンタル」もオススメです。

テント泊登山の注意点&知らないと困ること:トイレやお風呂はどうするの?

筆者撮影 準備が整ったら出発です。表示されている情報はしっかりチェック

キャンプの経験があることはテント泊登山に大いに役立ちます。

その上で、他にも登山を伴うテント泊ならではの気をつけておきたい注意点もいくつかありますので、紹介していきます。

これらの注意点は実際に一度経験してみないと分からないことも多いので、テント泊登山初心者の方はぜひ事前にチェックしてみてくださいね!

登山届を出す

登山届(登山計画書)は、登山コースや同行メンバーなどを記載する計画書。登山者が万が一事故にあった場合に、捜索活動の手がかりとなります。

また、登山計画書を作成することで、行程や時間配分の確認もできるので必ず提出を。

山歩きに慣れていない場合は、登山地図にかかれているコースタイムの2割増しに休憩時間を追加すると大まかな時間を算出できます。

登山口の多くは、登山届を提出するポストがありますが、提出方法はエリアによって異なる場合があるため、事前に市町村や所轄の警察署に確認しておくとよいでしょう。

メールやFAX、アプリ等で提出できる場合もあります。

家族や友人にもコピーを渡しておくと安心です。

登山道は歩きにくい

筆者撮影 レインジャケット・レインパンツは必携品です

登山道は整地されたところばかりでなく、岩場や水たまりなど足場の悪いところやすれ違えないほど細い道を歩くこともあります。

また、稜線沿いなど風の強いところではまっすぐ歩けないことも。

荷物が重ければ歩くスピードが遅くなるのはもちろん、バランスを崩して転倒や滑落するリスクがあります。

重い荷物を背負う

ギア類は、登山に必要な物とテント泊に必要な物の両方を準備するので当然重くなります。

持ち物リストを見直し、兼用できるギアは数を減らして少しでも荷物がコンパクトになるよう心がけるのがコツです。

設営スペースが狭い

筆者撮影 シルバーウィークの木曽駒ヶ岳山頂付近のテント場

最初は広々していても、午後になるとどんどん利用者が増え、テントとテントの間にもう1つテントが立つようなこともあります。

限られた場所を他の登山者と一緒に使うことになるため、できるだけテントの間隔を詰めて譲り合いながら使いましょう。

また、テントは布一枚。意外と話し声やゴミ袋のカサカサする音が聞こえます。貴重な睡眠時間を削らないようお互い注意したいものです。

ペグハンマーを使わない

筆者撮影 石に巻きつける石は大きめのもので飛ばされないように

荷物を極力軽くするためペグハンマーは使わず、周辺に転がっている石を使ってペグダウンします。

地面が硬くてペグがささらないときは、ガイロープを石に巻きつけてテントを安定させます。強風で飛ばされないよう重たい石を探しましょう。

トイレ事情

山のトイレはトイレットペーパーを流せないところがほとんどです。トイレに掲示してある使用方法をよく読んで備え付けのごみ箱などに入れましょう。

また、トイレの管理・維持のために協力金として100~200円支払って使わせてもらう場合もあります。

コース上にトイレがないところも多く、登山口では必ず用を足しておくのが鉄則です。

目的地がきまったら、地図でトイレの場所をあらかじめ確認し、いざというときの携帯トイレも忘れずに。

▼ケンユー「携帯ミニトイレ プルプル」

お風呂&シャワー事情

山の水は貴重です。登山中はお風呂やシャワーはまず使えないと思ったほうがよいです。

対策としては、

  • ボディ用のウェットシートで体を拭く
  • メリノウールなどニオイの出にくい素材のアンダーウェアを着る
  • 下山後近くの温泉に立ち寄る

などが考えられます。

携帯電話の電波は届かないところが多い

携帯電話は地形や気象条件によって電波が届かないところがあるため注意が必要です。

衛星公衆電話を設置している山小屋もあるので事前に調べておくと安心です。

クレジットカードが使えない

一部の山小屋ではキャッシュレス決済を導入していますが、現金しかつかえないところが大多数です。

トイレの利用や水の購入、食事、宿泊代など、何かと現金が必要になるので忘れずにご用意を。

火の取扱い

筆者撮影 クッカー類は必要最小限にして荷物をコンパクトに。この回は固形燃料メインで過ごしました

テント内での煮炊きは酸欠や一酸化中毒などの危険があります。また、強風時はバーナーなどが倒れ火事などの事故につながる可能性もあるので要注意。

雨や強風時に備えて、パンや焼き鳥の缶詰など、火を使わなくても食べられるものを1食分準備しておくと安心です。

少しかさばりますが保温ポットにお湯を入れておけば、フリーズドライのごはん、みそ汁、スープなどがつくれます。

▼サーモス「山専用ステンレスボトル」

ゴミは持ち帰り

登山やテント泊のときに出たゴミはすべて持ち帰ることが基本です。

食材や行動中に食べるおやつなどは、あらかじめパッケージを外しジップロックに移し替えて持っていくとゴミを減らせます。

使用後のジップロックをゴミ袋にすればニオイもおさえられて一石二鳥です。

テント泊登山は安全第一!撤退する勇気も時には必要

筆者撮影 7月でも雪が残っていることがあります

「せっかくとった休みだから」「キャンセル料がかかるから」と、自分都合による理由で登山を強行するのは正しい行動ではありません。

登山やキャンプは自然が相手なので、どんなに天気予報をチェックしていても、急に悪天候に見舞われることもしばしば。そうなると、遭難・滑落などの事故のリスクが高くなります。

また、体調不良やケガ、技量不足でこれ以上進めないなどの場合も同じです。

無事に下山してこその楽しい登山です。少しでも不安を感じたら状況をみて、安全に撤退することを考えましょう。

テント泊登山だからこそ味わえる山登りの達成感と自然の醍醐味がクセになる

筆者撮影 出発前は天気予報とにらめっこ。山頂と麓でも天気が違うのは当たり前!?
筆者撮影 7〜8月は高山植物がたくさん。写真はコバイケイソウ

ここまで、テント泊登山の注意すべき点を中心に紹介してきました。「うへ~、こんなにたいへんなの!?」とあきらめたくなった人もいるかもしれません。

しかし、

  • 登山途中に見る連なる山々
  • 広々とした青空
  • テントから顔を出したときに見える満天の星
  • 刻一刻と山肌の色が変わっていく朝焼けや夕焼け
  • 眼下に広がる雲海
  • 美しい花々や動物たち

などの美しい風景は、自分の足で登り、一夜を過ごすからこそ味わえるものです。

成功の秘訣は事前の下調べや入念な準備です。体力も必要で、たいへんなことも多いですが、達成感はそれ以上!

機会を見つけてぜひテント泊登山にチャレンジしてみてください。

© ハピキャン