税金だけじゃない。意外と知られていない「負動産」化した不動産のリスク

「親から引き継いだ、使い道のない山林や農地」や「数年以上空き家のままになった実家」といった、財産として活用できないままに固定資産税を納めているような「負動産」化した不動産はないでしょうか。

負動産には、意外と知られていない、重大なリスクがたくさん潜んでいます。場合によっては、そのリスクによって借金を背負うこともあります。そこで、今回はそのリスクと対策について見ていきましょう。


負動産は、身近なところに溢れている。

ご自身だけでなく、家族や親族まで広げてみると、かなりの確率で「実は負動産を持っている」という方に遭遇すると思います。都会出身の方でも、地方出身の親から、先祖代々の山林を相続しているといったケースも決して珍しくありません。そして、そのようなケースでは特に、「自分が所有していることは知っているが、その土地を見たことも、どこにあるかも分からない」という方は、驚くほど多いのです。

遠方の土地であればなおさら、使い道もなく、管理もできず放置してしまいがちで、固定資産税の請求が来ても、「なぜ使ってもいない土地の税金を払うんだ」と不満はありつつ、そこまで高額でないことも相まって、特に危機意識にも繋がらずに放置状態が膨らんでいく現状にあります。

実は恐ろしい、負動産が抱えるリスク

負動産の多くは、財産価値よりも負債リスクの方が大きくなります。
主なリスクは2つ、

・所有者責任に問われるリスク
・家族に迷惑をかけるリスク

です。

所有者責任に問われるリスク

例えば、近隣住民などから「雑草が伸びて害虫が増えているので、除草して欲しい」といった苦情を受ければ、所有者の責任として、定期的な除草作業が必要になります。

除草程度であれば、一回数万円程度と、出費も許容範囲内かもしれません。ただ、所有地にあった木が倒れ、たまたま近くを通りかかった通行人にケガをさせてしまい、その木の管理が不十分だったことが原因だと判断された場合、所有者として賠償責任を負う可能性もあります。そういった不慮の事故に備えた保険は存在しないため、程度によっては、数百万単位、またはそれ以上の賠償責任を負うリスクもあるのです。もし、所有地に崖が含まれている場合は、崖崩れのリスクまで考えると、その責任はさらに大きいものになります。

そのほか、何者かに不法投棄をされたり、空き家に浮浪者が住みついたりといった、防犯上のリスクもはらんでいます。治安の悪化に繫がるほか、それらの対処・対策費用は当然に所有者の責任になるため、こういったトラブルに巻き込まれたときの出費も、大きな痛手になります。

写真(1) 長年放置された雑木林。木が伸びすぎて、倒木の危険が進行している。

家族に迷惑をかけるリスク

過去にほとんど出費もないからと、”人畜無害”な財産として負動産を放置している方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここにも思わぬリスクが潜んでいます。

2022年10月の執筆時点では相続人への登記は義務ではありませんが、2024年からは相続登記が義務化され、罰則規定も加わる予定です。つまり、不動産は、所有者が死亡すると、その相続人に登記(名義変更)しなくてはいけません。

そうすると、相続が起こるたびに、相続登記のための費用負担や、誰が相続するかなど、家族会議のための時間や手間といった、金銭的・心理的な大きなコストが生じるのです。特に後者については、目には見えにくいものの、ときには”要らない不動産を、相続人同士で押しつけ合う”ケースもあり、負動産をきっかけに家族関係が険悪になったという方もいます。

写真(2) 相続による”引継ぎ”がうまくいかないと、空き家の期間が増え、荒廃が進む原因に。

負動産を持っていたらどうしたらよいか

それでは、負動産を持っている場合、どうしたらよいでしょうか。その答えは「使う見込みが無ければ、一刻も早く処分する」ことです。

そして、その処分方法は、以下の4つが有効な手段として考えられます。

1.近隣の方に譲渡を打診してみる
2.地元の不動産会社に販売協力を依頼する
3.国に引き取って貰う
4.民間業者のサービスを利用する

筆者の経験上、意外と可能性として高いのが「近隣への譲渡」。特に隣地者の場合、自分の敷地が広くなるため、取引にメリットを感じて貰えるケースも多いからです。

それに次いで、地元のニーズを最前線で把握している点では、不動産会社へ相談することも有効です。ただし、山林や農地といった土地は取引経験がほとんどない会社が大半で、空き家についても全国的に供給過多で成約しにくいことから、負動産の処分相談については消極的な不動産会社も多いです。なかには、相談すら聞いてもらえない、依頼はしているものの5年以上何も反響がないケースもよく耳にします。信頼できる不動産会社を見つけるには、それなりの苦労を伴うかもしれません。

一方、2023年より、相続した土地を、国が引き取ってくれる制度「相続土地国庫帰属制度」が始まります。

これにより、先程紹介したようななかなか売れないなどのリスクから解放されることが期待できます。ただし、制度利用には数十万円単位で引取料を支払う必要があるほか、崖地や空き家は対象外など、実際に利用できる人は限られる可能性もあります。まだ詳細不明の部分もあるため、続報があればまたご紹介したいと思います。

最後に、民間事業者によるサービスの利用も一案です。先に挙げた国の制度と同様、負動産の引取をしてくれたり、最近では負動産の購入希望者と出会えるマッチングサイトも増えてきたりしています。

置かれた状況や予算などに合わせて、少しでも早く処分を進め、リスクの先延ばしを防ぎましょう。

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