投資総額4億円の不動産投資家が明かす、物件を購入する前に考えるべき4つのポイント

もふもふ不動産のもふです。

第1回は不動産投資とは投資ではなく事業であること、第2回はまず勉強するべきことを解説しました。今回は、不動産投資で失敗しないように、初心者が騙されやすい注意点について解説します。

不動産投資は失敗すると取り返しがつかないことが多いです。これまでに、多くの失敗事例や、最悪のケースですと自己破産になってしまったケースなども見てきました……。

私は2018年からメディアやYouTubeを通じてずっと注意喚起を行っていますが、詐欺に引っかからずに済んだというお声もよくいただきます。

失敗しないためにも、ぜひ最後までお付き合いください。


失敗事例1 高く買ってしまう

よくある失敗事例としては、不動産を高く買ってしまうということがあります。

例えば1億円の物件を借金して1.5億円で買ってしまった方も報道されています。買った直後は気が付かないのですが、いざ売ろうと思ったときに1億円でしか売れないことに気が付くことが多いです。

1.5億円の借金があるにもかかわらず、1億円でしか売れないので、マイナス5,000万円です。借金を返すことができないので、不動産を売ろうと思っても売れません。

なぜこのようになってしまうのかというと、初心者は不動産の価格がわからないから−−つまり、自分が買う物件の価値が1億円なのか1.5億円なのかの判断がつかないことが原因です。

プロの不動産投資家であれば、相場1億円のものを1億円で買うことはなく、8,000万円とか9,000万円で買って運営するところを、初心者の方は1.5億円で買っているわけです。そこから経営を立て直すのは並大抵のことではできません。

前回のコラムで目利きが大切と解説したのは、このように高く買って失敗しないようにとのことです。なぜこんなことが起きるのかというと、1億円で仕入れて1.5億円で売るような業者もいるからです。

あくまで一部ですが、 こういった業者は 「この物件はお客様だけの特別な物件で、こんないい不動産はなかなか出てきません。このチャンスを逃すと、もう2度と買えないと思います。銀行も1.5億円まで融資するので安心です。ぜひこの物件を購入ください」といった具合に説明してきます。

業者は5,000万円儲かるので必死にセールスしてきます。そのセールストークにのせられて、高く買ってしまうのですが、お互い合意して購入しているので、詐欺にはならないのです。

例えば、富士山の山頂で缶ジュースを500円で売っていたとします。相場は130円だけど、500円でも欲しいと納得して売買されているので問題にはなりません。不動産もいくらで買うかは買主次第です。相場より高く買ってしまったからと言って、その価格で自分が欲しいと思うのでしたら取引は成立してしまいます。

とはいっても、缶ジュースなら数百円の損失ですみますが、不動産投資なら数千万円の損失となりうるので人生を狂わしてしまう可能性があります。

これを防ぐには、相場を理解して、高く買わないことです。不動産の価格は、立地、土地の広さ、建物の広さ、構造、築年数、収益性、今後見込まれる修繕費用、設備などによって総合的に決まります。たくさんの物件を見て目利きができるようになりましょう。

失敗事例2 想定通り収益が入ってこない

不動産投資に興味がある初心者のAさんがいたとします。将来に不安があり、年金や老後の資金を貯めたいと思い、よくわからないまま不動産投資を始めてしまいました。

以下の例はイメージなのですが、このようなケースはよく耳にします。

Aさんは投資用物件として、東京都品川区に4,800万円の区分マンションを買いました。現状、入居者がいて家賃が20万円です。

収益性を表す利回りは、「年間家賃収入÷物件価格×100」で計算されるので、この物件では下記になります。

利回り = (20万円×12ヵ月分)÷ 4,800万円 × 100 = 5%

これを30年2%の金利で4,800万円を融資受けて購入したとします。月々の返済は17.7万円になります。不動産屋さんからは、「このような良い物件はこの機会を逃したら2度と出てこない」と強く勧められました。営業の方も信頼できそうなので安心できました。

「5%の利回りならまずまずだし、17.7万円の返済なら問題なく返済できる」と思い購入を決めたAさんでしたが、その後どうなったのか見てみましょう。

退去が発生し家賃が入ってこない、さらに原状回復費がかかる

購入後、1年間は毎月20万円の家賃が入ってきましたが、退去が発生しました。毎月20万円入ってくるはずが、入ってきません。ローンを受けているので、17.7万円の返済が発生してしまいます。さらに修繕積立金が月1万円、管理費が1万円かかるので、月に約20万円のマイナスとなってしまいました。

しかし、悲劇はそれだけではありませんでした。退去した後の部屋の原状回復費用の見積もりが来たのです。

長年住んでいた方で、壁紙や床の張替えが必要とのことで、リフォーム費用が30万円かかるとのこと。家賃がなくなったうえに30万円の出費は痛すぎます。30万円出費したうえに、このままでは毎月20万円のマイナスになってしまう……一刻も早く次の入居者を埋めないといけません。

家賃20万円で募集しても入居者が見つからず

さっそく今まで通り、家賃20万円で入居者募集を開始しましたが、さっぱり入居者が見つかりません。不思議に思っていろいろと調べてみると、近隣の同じような物件の家賃は15万円程度でした。近隣と比べ5万円も家賃が高いので、自分の部屋を借りたい方が現れない事がわかってきました。

20万円で貸せていたのはずっと昔の話で、今は家賃が下がってしまっているそうです。20万円のまま募集しても入居者が決まるめどが立たなかったので、泣く泣く15万円に家賃を下げました。

何とか入居が決まったのですが、広告費として家賃の1ヵ月分の15万円がかかり、さらにお金が出ていきました。入居が決まっても、銀行返済と管理費と修繕積立金で月に約20万円の出費なので、月に5万円の持ち出しになってしまいます。

毎月5万円の持ち出しが発生し、さらに退去されたらリフォーム費用が掛かり、春には固定資産税が20万円ほどかかります。

これがあと30年続くのかと思うと、Aさんは不安な気持ちでいっぱいになり「もう手放したい……」と考えるようになりました。

しかし、売ろうとしたところ、3,000万円くらいでしか売れないことがわかり、目の前が真っ暗になりました。4,800万円の借金があるので、仮にマンション売れても1,800万円の借金が残ってしまいます。

失敗を防ぐために不動産投資家がやっている事とは

将来豊かになりたい、お金の心配をしたくないと思って不動産を買ったはいいが、実際は想定以上にお金がかかってしまい、逆にお金がなく不安になってしまうということが起こってしまいました。これを防ぐためには、経営者として事業が成り立つのかをしっかり調べることが大切です。

筆者のような不動産投資家が、どのようなことを考えて物件を購入しているのかを紹介することで、失敗を防ぐための参考になると思います。

物件の価格が妥当か調べる

Aさんのケースですと、物件を4,800万円で購入されていました。この価格が高いのかどうか、過去の売買事例や近隣の物件の価格を調べ、安いのか高いのか判断します。

区分マンションであれば、ネットなどに同じ物件の売買事例や現状いくらくらいで売りに出ているかを調べると掲載されています。また不動産業者さんに聞けばレインズ(不動産流通機構の情報)などに取引事例が載っているので教えてくれます。

安いのか高いのか、他の人がいくらくらいで買っているのかをもとに判断し、4,800万円で買って儲かるのかを経営判断をします。しつこいかもしれませんが、価格の目利きが大切です。価格がわからないものを買って儲けようとしても、逆に損する可能性が高いことは明白でしょう。

維持費用を調べ、収益の計算をする

不動産は維持費用がたくさん掛かります。

(1)購入時にかかるもの
・登録免許税
・固定資産税の日割り
・不動産取得税
・仲介手数料
・印紙やその他費用

(2)保有時にかかるもの
・固定資産税
・管理費、修繕積立金(区分マンション)
・電気代や浄化槽など(1棟物)
・無料Wifや防犯カメラiなど付加設備の月額費用

(3)退去・入居時に都度かかるもの
・原状回復費用、リフォーム費用
・広告費用
・清掃費用、鍵交換費用

これらをひっくるめ、月々にどれくらいの収支になるのか収支計算をします。購入前に不動産屋さんに必要な費用を聞いておきましょう。

退去費用など、たまにおこるものは見込みにくいのですが、1年に1回20万円かかるなど、仮でもよいので計算しておきます。

<月々の収支>
家賃 ー 経費 ー 返済 = 手残り

月々の収支がマイナスになる場合、本当にそのマイナスがずっと続いても耐えられるのか、退去が出て家賃が入ってこなくても耐えられるのかを検討したほうがよいです。30年間、月に何万円も支払い続けるのは生活を圧迫すると思います。支払いが終わったとしても、築30年以上の古い部屋が残るだけです。

ちなみに多くの不動産投資家は、月々の手残りがプラスになる物件を買い進めています。筆者もこれまでに何棟も買ってきましたが、基本的にはマイナスになる物件を買ったことはありません。

家賃は妥当かを調べる

20万円の家賃で入居者がきまっているので、次の入居者も20万できまると思い込むのはとても危険です。その部屋が、実際にどれくらいの家賃で入居者が見つかるのかを調べておきましょう。

調べ方としては、買う物件と似たような近隣の部屋が、いくらくらいの家賃で募集しているのかを賃貸情報サイトなどで見てみる方法がお勧めです。

自分がその部屋を探していると仮定して、自分の部屋をいくらの家賃なら借りるのか、というのを想定して見ましょう。似たような広さの近隣の部屋が家賃15万円だったとしたら、自分の部屋に20万円で入居が決まるというのは難しいことがわかります。少なくとも同等以上にしておかないと、自分の部屋に入居してもらえることはありません。家賃設定や設備なども比較することが大切です。

また、近隣にどれくらい空室があるのかを調べることもやっておきましょう。大量に空室があるようだと、自分の部屋に入居者を決めるのはかなり大変になるかもしれません。

入居者が決まるかどうかは都会かどうかではありません。

・需要と供給が釣り合っているか
・ライバル物件より良い魅力的な条件か

都会でも需要を超える大量の部屋を供給している場合は苦戦します。僕はど田舎にも物件を持っていますが、需要より供給が少ないので、常に満室です。また、ライバルより魅力的な条件にしないと入居者もつかないでしょう。

家賃保証やサブリースはあてにしない

不動産投資をするときに家賃を保証してくれたり、サブリースで借り上げしてくれたりして、固定の家賃が入ってくる契約になっているケースがあります。

初心者の方は「サブリースがあるから、ちゃんと家賃が入ってくるので安心」と思うでしょう。

しかし、サブリースがあるからといって安心はできません。事実、不動産投資家はサブリースを全くあてにしていません。理由としては、簡単にまとめると以下の4つです。

(1)サブリース業者も利益を出す必要があるので、儲からないと家賃を下げたり解約したりしてくる
(2)借地借家法でサブリース業者が有利な契約になっている
(3)いつでも解約できると思っておいたほうがよい
(4)こちらからの解約はかなり難しい

つまり、サブリースしている部屋で空室がずっと続いている場合、契約を打ち切られたり、家賃を下げる交渉が入ってきたりするということです。単なる気休めにしかならないので、本当に事業として儲けることができるのかなど判断することが大切でしょう。

不動産投資はそんなに難しくはない

難しそうに思われたかもしれませんが、実はそこまで難易度は高くありません。

筆者はいろいろな事業やビジネスをやってきているのですが、不動産投資ほどわかりやすく、結果が出やすいビジネスはないと感じています。広い知識は必要ですが、個々の内容は専門家に聞いたりすることで難なく対処できます。実際、多くの経営者はいろいろな事業をしつつ、最終的には不動産投資に行きついています。

物件の価格は実際に売買されている価格を見ればわかりますし、立地や土地の広さなどスペックもわかりやすく、部屋の家賃も情報が出回っていますし、必要な経費も明確です。収入も家賃しかないのでわかりやすいですし、特別なスキルはいりません。外注に委託もできるので、少ない時間で運営することもできます。私も全く違うジャンルの会社員から副業で勉強して不動産投資家になれました。

例えば、カフェやラーメン店をやろうとした場合に収支計算しようとしても、かなり難しいと思います。人通りやどれくらい売り上げて人気になるのか、比較するのが難しいです。一方、不動産投資はしっかり考えて調査すれば、かなり高い確度でシミュレーションできるので、わかりやすいと感じています。

不動産投資家の友人で、失敗していたり事業撤退していたりする人はほとんどいません。当たり前のことを調査して、当たり前の運用をしていれば、普通に儲かるのです。

ただし、家賃は店舗のように売り上げが10倍になったりせず、収入の上限は決まっているのと、参入障壁がかなり高く広い知識と経営判断が必要なのが難点です。

不動産投資で詐欺や失敗に合わないために大切なこと

3回にわたり解説してきましたが、不動産投資は投資ではなく事業です。

実際にいくらで買うのか、家賃はいくらになるのか、入居者は決まるのか、月々の収支はどうなるのか−−それらを総合的に判断して、いくら儲かるのかということを自分自身で事業計画を立てて納得して購入することが大切です。

よくわからずに、勧められるがまま買って後悔している方は多くいますし、よく報道されています。不動産投資を始めるのはしっかりと勉強してスキルを身に着けてからでも遅くはありません。しっかり勉強すればほとんどの失敗を防ぐことは可能です。

このコラムを読んで、失敗する方が少しでも減れば幸いです。

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