視力・聴力を失った息子 母がとっさに編み出した“指点字”誕生の瞬間 「桜色の風が咲く」本編映像

11月4日より劇場公開される、9歳で失明、18歳で聴力を失いながらも世界で初めて盲ろう者の大学教授となり、東京大学の教授として教鞭をとっている福島智さんの、幼少期から大学受験までの姿を描いた映画「桜色の風が咲く」から、“指点字”誕生の瞬間を描いたシーンの本編映像が公開された。

外出する時間が迫る中、母・令子の忙しい様子がわからない視力と聴力を失った息子の智は、「まだ準備できとらんのか。早よしな。病院遅れるで」と文句が止まらない。「もう頭きた!」と言い返そうとする令子だが、点字板が見当たらない。そのとき、智の手を見て何かを思いついた令子は、智に歩み寄り、智の指に点字タイプライターを押すように「さ、と、し わ、か、る、か?」と一文字一文字伝えていく。智は「ああ 分かるで」と笑顔で答え、令子もほほ笑み返す。

この場面は、本作のモデルである福島智教授も一番印象に残っていると挙げており、令子がとっさに編み出した“指点字”により、智という存在が世界と再びつながった瞬間にもなっている。

また、一足先に本作を鑑賞した著名人のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】 ※50音順・敬称略

■伊藤さとり (映画パーソナリティ)
生きることとは、喜びも悲しみも辛さも感動も味わうことなのかもしれない。
だけどそれは一人で成し遂げられるものではなくて、家族や友人の姿から「乗り越える方法」を身につけるんだと映画は伝えているようだった。私はこんな親になりたいし、こんな子どもに育ってほしい、そう願った。
桜吹雪の中で、風を感じて匂いを感じて、ありったけ人肌に感謝したい。

■掛尾良夫 (田辺・弁慶映画祭プログラミング・ディレクター)
素晴らしい作品。作為的な感情の揺さぶりを抑制し、逆に静かな物語の流れに、主人公の絶望と希望をより強く感じる。自責の念を胸に秘め人生を息子にかける母親を演じる小雪が、今までにない円熟した魅力を放っている。

■加藤正人 (脚本家)
絶望から希望に向かう奇跡の物語。
実話ならではのリアルで静謐な映像が、深い感動として胸に沁みる。

■サヘル・ローズ (女優)
『不運』ではない
この作品は『生きている』
目の前がぼやけるほど涙が溢れ出る
哀れみではない ただただ 涙引き込まれていく
奪われていく 光景と音色 孤独だと思っていた
でも、違った
母の存在が、
智さんの魂がしめしてくれる
どうか、
アナタにも 心でみて 心できいて
この作品に溢れるメッセージが
観終わった後にアナタの中で木霊していく
奪われたのではなく
私たちはこの作品から多くのことを得ていく

■樋口真嗣 (映画監督)
仕事仲間の結城さんが映画を作った。世界を股にかけてCGを作って最強で万能の映像作りをバリバリ進めてきた結城さんがどんな映画を作るのかと思ったら、静謐で、純粋で、真摯な映画を本気で作ってた。いつも仕事したりバカ話してる時には一言も言わないような素晴らしいことを映画にしたいほど考えていたのだ。本当に素晴らしいことだと思うので、わたしも見習いたいと思います。

■ベー・チェチョル (テノール歌手)
失うことをへの恐怖に打ち勝ちながら未来へ進む姿に心打たれ、生きることへの強さと歓びを伝えてくれる作品にめぐりあった。

■矢沢心 (女優)
可能性を信じその光を掴む強さ
諦めた時にやってくる孤独とのたたかい
しかしそこには、支えてくれる友や家族
母の愛と強さと絆の温もりに包まれていた

【作品情報】
桜色の風が咲く
2022年11月4日(金)シネスイッチ銀座、ユーロスペース 他全国順次ロードショー
配給:ギャガ
©THRONE / KARAVAN Pictures

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