秋の風物詩・かんころ干し “サツマイモの甘み広がる” 長崎・新上五島

かんころの乾き具合を確認する恭子さん(左)と雅江さん=新上五島町

 10月下旬、長崎県新上五島町青方郷の中心部。薄く切ってゆでたサツマイモを天日干しする「かんころ」作りにいそしむ家族に出会った。島内ではピークを迎え、秋の風物詩。地元名物かんころ餅の原料とするのだ。
 作業をしていたのは、よしむら生花店代表の吉村慶三さん(56)、妻雅江さん(55)、母恭子さん(83)の3人。店舗裏にかんころ棚を並べ、天日干しの真っ最中。かんころ干しから手作りする家庭は年々少なくなっているが、吉村家は何とサツマイモ作りからスタート。今年は収穫したサツマイモのほとんどをかんころに。乾燥状態で約50キロになる見込みだという。
 まだ水分を含んだかんころを慶三さんが味見しているのにつられ、記者も試食させてもらった。「おいしい」。硬めだが芯はない。生臭みはなく、サツマイモの甘みが口に広がった。
 「ゆで加減が大切。ちゃんとゆでないと甘みが出ないし、ゆで過ぎるとボロボロに崩れてしまう」。恭子さんは約60年の経験を誇った。雅江さんは、かんころをひっくり返しながら「天気がいいから2日くらいで乾くかな」-。
 12月に入ると、保管していたかんころをふかし、ついたもち米、砂糖などと混ぜて、かんころ餅作りが始まる。


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