人間国宝の茶わんでおもてなし 佐野のホテルに茶室オープン

田村の茶わんで茶をたてるホテルスタッフと、茶道について解説する荒井さん(左)

 【佐野】朝日町のホテルサンルート佐野に1日、天明鋳物の茶釜で湯を沸かし、市出身の陶芸家で人間国宝田村耕一(たむらこういち)の作品でお茶を楽しめる茶室がお目見えした。同ホテルを定宿にする佐野日大短大学長の佐藤三武朗(さとうさぶろう)さん(78)=静岡県伊豆市=が来春の退任を前に、「市民や学生に本物に触れてほしい」と田村が制作した茶わん7個を寄贈。思いを受けた同ホテルが、市内の茶道関係者の協力を得てオープンにこぎ着けた。

 茶室はホテルのラウンジを改装して設置。初心者や外国人にも気軽に楽しんでもらおうと、テーブルや椅子を置いた立礼式茶室とした。「素晴らしい場所」を意味する古語「まほろば」から、佐藤さんが「馬歩路亭(まほろてい)」と命名した。

 佐藤さんは2015年の同短大学長就任以来、市の歴史や文化に魅せられ、特に人間国宝の田村の作品や千年の歴史を誇る市伝統工芸・天明鋳物には大きな関心を示していた。

 茶室の構想は半年ほど前、佐藤さんが同ホテルの篠崎良三(しのざきりょうぞう)社長(83)に茶わんを提供したのがきっかけ。共感した篠崎さんは天明鋳物の茶釜を用意するとともに、裏千家の茶道家荒井宗佳(あらいそうか)さん(74)らの指導を受け、準備を進めてきた。

 オープン式典で篠崎さんは「おもてなしの原点は茶道にあると感じた。せっかくできた縁を損なわないよう精進したい」とあいさつ。佐藤さんは「市の中心に、心の潤いを得る場所が誕生したことはこの上ない喜び」とメッセージを寄せた。田村の孫で同短大准教授の田村田(たむらでん)さん(49)は「触れていただくことが作家にとっては喜びだと思う」と歓迎した。

 茶室の営業は火、水、木曜の午後1~4時。菓子付きの「お抹茶セット」は660円。

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