学生運動で中止された1972年の卒業式…50年ぶり開催 福井高専3期生「区切りが付いた」

1972年当初の卒業証書を現校長(左)から受け取る前川忠博さん=11月5日、福井県福井市の県国際交流会館

 学生運動の影響で中止された福井高専(福井県鯖江市)の1972年の卒業式が11月5日、半世紀を経て、福井市の県国際交流会館で開かれた。古希を迎えた3期生17人が「特別卒業式証書」を受け取り、校歌を高らかに斉唱。思い出話に花を咲かせ、「区切りが付いた」と喜び合った。

 72年3月の卒業式当日、一部の学生が他大学の学生と福井高専でデモを展開し、校長室を占拠した。式は急きょ中止され、卒業生には各教室で証書が授与された。別室にいた保護者は受け渡し場面を見られなかったという。

 今回の「特別卒業式」は、3期生で前同窓会長の前川忠博さん(70)=福井市=の提案を現在の田村隆弘校長が快諾し、同窓会設立50周年の祝賀会に合わせて実現した。

 3期生107人のうち県内外から17人が集い、代表して前川さんが登壇。「2日前に奇跡的に見つかった」という当時の卒業証書を田村校長から受け取ると、「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。続いて出席者一人一人に特別証書が授与された。

 田村校長は「3期生の皆さんに負けない活躍をしてくれる卒業生を育てたい」と式辞を述べた。工業化学科(当時)出身の北中義高さん(71)=福井市=は「濃厚だった高専の5年間が頭に浮かび、ぐっと来た」と話した。

© 株式会社福井新聞社