2030年も音の出るモータースポーツを。GTA、『スーパーGTグリーンプロジェクト2030』を始動

 11月6日、スーパーGT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』が開催されている栃木県のモビリティリゾートもてぎで、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表がGTA定例記者会見に臨み、このなかで2030年にシリーズ全体のCO2排出量50パーセント削減を目指す環境対応ロードマップ『スーパーGTグリーンプロジェクト2030』を発表した。

 昨今の自動車業界で急速に広がるカーボンニュートラルへの動き。スーパーGTでもさまざまな計画がこれまで坂東代表から説明されてきたが、これらをまとめた環境対応ロードマップが、2022年のスーパーGT最終戦となる第8戦もてぎの決勝日、坂東代表から提示された。

 このロードマップは『スーパーGTグリーンプロジェクト2030』と名付けられたもので、GTAはもちろんメーカー、チーム、オーガナイザー、JAF日本自動車連盟、さらにサーキットを訪れる「ファンの皆さんにも賛同してもらいやっていきたい(坂東代表)」というものだ。

 日本政府は、2030年に温室効果ガスを46パーセント削減することを目指しているが、スーパーGTでは50パーセント削減の高みを目指す。まずシリーズでは、全体のカーボンニュートラル化を推進。CO2排出量の算定・効果測定にあたってはJAFのカーボンニュートラル分科会と連携のうえ、モータースポーツ界におけるCO2排出量の算定方法を確立し、下記の流れでカーボンニュートラルを目指していく。

2023年〜
・GT500/GT300両クラスへのカーボンニュートラルフューエル(バイオマス由来の非化石燃料)導入
・持ち込みタイヤセット数の削減(300kmレースの場合ドライ5セット/ウエット6セット)

2024年〜2026年
・2024年GT500新型車両導入(各種燃費向上技術の開発促進)
・GT500/GT300両クラスのCNF(バイオマス由来の非化石燃料)継続使用
・持ち込みタイヤセット数のさらなる削減(300kmレースの場合ドライ4セット/ウエット5セット)

2027年〜2030年
・2027年GT500新型車両導入(HEVなど電動化技術の採用を2022〜2023年内に検討)
・GT500/GT300両クラスへの国産e-フューエル導入

その他、2030年までの継続的な取り組み
・サーキット内のゴミ削減
・プラスチックごみ等の再利用促進
・サーキット周辺自治体との環境対応連携(森林保全活動の継続と新規取り組みの検討・実施)
・e-フューエルの国産化早期実現に向けた各種技術協力・再生タイヤ導入に向けた具体的検討の推進

 まず、カーボンニュートラルフューエルについては、第8戦もてぎの翌日にあたる11月7日からテストを実施。オフテストでGT500クラスの3メーカーの1台ずつがテストを続け、2023年の岡山公式テストから全車が使用する。また燃料について坂東代表は、メーカー各社に「燃費が良いエンジンを求めたい」と語った。環境に良いことはもちろんだが、燃費を向上させることで、レースでの戦略の幅を大きく広げることになる。

 そしてタイヤの持ち込みセット数削減については、「長く走れるもの」を目指す。セット数を減らすことで、生産本数の削減、ロジスティクスの軽減、さらに廃タイヤなど、さまざまな部分で環境対応を行う。

 また将来の新GT500車両導入に向けては、ハイブリッド(HEV)導入や、水素を使って作られる国産のe-フューエルの導入も検討に入っている。そして、ファンにも賛同を求めるのはサーキット内のゴミの削減。「スーパーGTに来場する40万人(2019年実績)以上の人たちが、それぞれ1kgゴミを減らせば40万kg減ることになる」と坂東代表。

「こういった方針は賛同はあるが、やってみないと分からない。だから我々はやる。タイヤ、エンジン、マニュファクチャラー等のコントロールをやっていき、ひとつひとつのものに対し、予算についてはメーカーも負担しているし、チームも負担する。一体になって、その輪を大きくしたい。それを大きくしたときに、日本のモータースポーツにどの選択肢があり、どれを選ぶのかを決めればいい」と坂東代表は語った。

「我々GTAが目指すのは、2030年も音の出るモータースポーツを継続して行うということ。これに行き着くためにCO2排出量を50パーセント削減する。このプロジェクトにご理解をいただき、皆さんと一緒にやれればと思っています」

© 株式会社三栄