タイヤ脱落で無得点のリアライズがタイトル奪還。大波乱のレースはARTAが完勝【第8戦GT300決勝レポート】

 11月6日、2022年シーズンのスーパーGT最終戦となる第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』の決勝レースが、モビリティリゾートもてぎで行われ、GT300クラスは55号車ARTA NSX GT3(武藤英紀/木村偉織)が今季初優勝をポール・トゥ・ウイン&ファステストの完勝で飾った。

 一方、56号車リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)が、タイヤ脱落トラブルで19位でチェッカー。しかし、2.5ポイント差でランキングトップを死守し、2020年以来となる2年ぶりのシリーズチャンピオンに輝いた。

 3年ぶりに最終戦の舞台となったもてぎ。シーズンの最終戦となる第8戦決勝はほぼ全車がノーウエイトで挑む戦いとなる。56号車を筆頭に6台がチャンピオン獲得の権利を残していただけに、熾烈な接近戦が繰り広げられることが予想された。5日に行われた公式予選では55号車ARTA NSX GT3の木村偉織が自身初ポールポジションを獲得。2番手に18号車UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/太田格之進)が続き、ホンダNSX GT3がフロントロウに並んだ。

 セカンドロウ3番手に4号車グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)、4番手にタイトル獲得の可能性を残す56号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)が続いた。

 ランキングトップの56号車は6番グリッドから、10号車TANAX GAINER GT-R(富田竜一郎/大草りき)は7番グリッドから。そして9番グリッドから52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)、20番グリッドから11号車GAINER TANAX GT-R(安田裕信/石川京侍)、そして予選Q2でクラッシュを喫した、ランキング2位の61号車SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)は16番手から逆転タイトルに挑むことこととなった。

 なお、今大会は特別規則によりドライバー交代時のタイヤ4輪交換が義務付けられている。今期GT300で広く見られたタイヤ無交換、タイヤ2輪交換といった作戦が展開できなくなったため、コース上でのポジションアップが大きな鍵となる一戦となる。決勝当日は快晴に恵まれ、気温16度、路面温度27度、湿度45%というコンディションのなか、2周のフォーメーションラップを経て、63周(GT500の周回数)の決勝レースは13時7分にスタートを迎えた。

2022スーパーGT第8戦もてぎ GT300クラスのスタート

 ポールスタートのARTA木村が1コーナーのホールショットを守るも、2番手UPGARAGE小林が3コーナーでオーバーテイクを決めトップに浮上する。その背後では88号車weibo Primez ランボルギーニ GT3の元嶋佑弥がLEON蒲生を攻略し4番手浮上する。

 そんななか、9周目に最初の波乱が。3コーナーでGT500クラスの36号車au TOM’S GR Supraが、30号車apr GR86 GTのリヤに接触。これでスピンを喫した30号車を避けきれず25号車HOPPY Schatz GR Supraが接触。さらに、GT500クラスの24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra、23号車MOTUL AUTECH Zも絡む多重アクシデントとなり、フルコースイエロー(FCY)が導入される。ただ、4コーナーで液体漏れがあったため、FCYは10周目にセーフティカー(SC)へと変わった。

 液体処理も終わり、クラス別の整列が行われ。リスタートも近いと思われた13周目、ホームストレートでまさかのアクシデントが発生する。

 31号車apr GR SPORT PRIUS GTの中山友貴が、5号車マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号の冨林勇佑に追突。これで2台は激しく損傷し、ホームストレート上にマシンを止めてしまう。幸い、ドライバーは無事だったが、SC中の追突というまさかのアクシデントでSCは継続されることに。ホームストレート上に破片も散らばっていたことから、全車がピットレーンを通過。なお、このSC中に7番手につけていた10号車を筆頭に、61号車、11号車、87号車が給油のみを実施している。

 レースは3分の1を経過しようかという20周目に再開を迎えた。25周目終わりにトップの18号車がピットイン。しかし再スタートに手間取り、タイムロス。順位を下げることとなり、優勝戦戦から離れてしまう。

 一方、24周目に8番手52号車が、続く25周目に6番手56号車がピットイン。ここで、52号車がアンダーカットに成功し、ピットストップ義務消化組のトップにおどり出る。この時点で52号車の背後には65号車、10号車、56号車と、タイトルの可能性を残す車両が続くことに。なお、11号車はSC中のピットレーンシグナル無視で10秒のペナルティストップが課せられ、大きく後退することに。

 タイトル争いの直接対決が繰り広げられるなか、32周目の3コーナーで10号車TANAX富田竜一郎が65号車LEON蒲生尚弥をオーバーテイク。さらに、富田は52号車吉田の背後に着く。そんななか、SC明けから安定したレースペースを見せ52号車吉田に約12秒のギャップをつけて、“裏の”トップの座を奪う。なお、37周目の2コーナーで、56号車リアライズのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが65号車LEON蒲生をかわし、裏の4番手に浮上している。

 37周終わりにGT300は全車がピットを終え、55号車武藤、52号車吉田、10号車富田、56号車オリベイラというトップ4に変わった。このままの順位であれば56号車のタイトル獲得という状況になったが、波乱は続く。

 42周目、56号車オリベイラが突如3コーナーでコースオフ。そのままスロー走行となると、5コーナーの進入で右フロントタイヤが外れてしまう。なんとかピットに戻った56号車は新たな右フロントタイヤを装着するも19番手に後退。これで3番手につける10号車がタイトル最有力候補におどり出る。

 大草りきのデビューチャンピオンを叶えるべく、10号車富田は3位をキープ。しかし、SC中に給油を行いルーティーンピットの時間を大きく短縮した87号車Bamboo Airways ランボルギーニ GT3の松浦孝亮が猛烈な追い上げで10号車の背後につくと、52周目の3コーナーで富田をかわし3番手に浮上する。さらに、富田の背後には18号車UPGARAGEの太田格之進が急接近。

 53周目から54周目にかけて富田と太田は手に汗握る、見応えのあるサイド・バイ・サイドを繰り広げると、54周目のヘアピンで18号車の太田がオーバーテイクを決め、4番手に浮上する。

 一方、2番手の52号車の背後に87号車松浦が接近し、2台はテール・トゥ・ノーズの戦いに。57周目の90度コーナーで松浦が2位に浮上。これで52号車のタイトルのチャンスが遠のく。

 さらに5番手の10号車富田の背後には、88号車の小暮卓史が接近。『88号車小暮が10号車をかわせば、56号車がノーポイントでもタイトルを獲得』という状況だけに、富田はポジションを死守するべく、走行を続けた。しかし、10号車はタイヤが厳しくなったか、小暮との間合いはほぼゼロに。そして迎えたファイナルラップ。2コーナーで小暮がアウト側からオーバーテイクを決め2番手に浮上。この瞬間、公式映像には56号車の藤波がピットでガッツポーズをする姿も見られた。

 60周目、2022年シーズンは苦戦が続いた55号車が4.048秒のギャップを守ったままトップチェッカーを受け、今季初勝利をポール・トゥ・ウインで飾った。2位に87号車Bamboo Airways ランボルギーニ GT3、3位に52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GTが続いた。4位には18号車UPGARAGE NSX GT3が入り、5位はタイトル争いを左右するオーバーテイクを決めた88号車weibo Primez ランボルギーニ GT3が続いた。

 第1戦岡山での勝利から一度もランキングトップを譲ることなく、シーズンを通じて速さと強さを見せた56号車リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが52ポイント獲得で、2年ぶりのチャンピオンに輝いた。ランキング2位に49.5ポイント獲得の61号車SUBARU BRZ R&D SPORT、ランキング3位に49ポイント獲得の10号車TANAX GAINER GT-Rの大草りきという結果となった。

 2022年シーズンも熾烈かつドラマチックな8戦が繰り広げられたスーパーGT。2023年にはどのようなレースが繰り広げられるだろうか。

2年ぶりのチャンピオンに輝いたリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの藤波清斗、近藤真彦監督、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ
2022スーパーGT第8戦もてぎをポール・トゥ・ウインで制したARTA NSX GT3の武藤英紀と木村偉織

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