黒潮大蛇行、観測史上最長に 相模湾で南方系の魚が増加か 冬は雪、夏は蒸し暑く 「死滅回遊魚」が越冬傾向

黒潮大蛇行の概念図(JAMSTEC提供)

 黒潮大蛇行が観測史上、最長を更新している。観測されてから11月で5年3カ月が経過。伊豆半島などでは越冬する熱帯性の魚も観測され、専門家は「引き続き黒潮大蛇行が続けば、神奈川県内でも生息する南方系の魚が増えていくのではないか」と影響を指摘する。

 黒潮大蛇行は、黒潮と本州南岸の間に大きな冷水渦(冷水塊)が居座ることにより、黒潮が遠回りして流れる現象。冷水渦がある海域では水温が低下するが、関東・東海沿岸では黒潮の通り道になることや分岐した潮流が流れ込むことで、例年より水温が高くなる。

 確かな観測記録がある1965年以降、これまでの最長記録は75年8月から観測された4年8カ月だった。6回目となる今回は2017年8月から観測が確認されている。海洋研究開発機構(JAMSTEC、横須賀市)の美山透主任研究員は「黒潮大蛇行が長期化しているのは、黒潮の流れる量が少なくなり、弱いことが一因だと考えられる」と分析する。

 黒潮大蛇行の発生時には海の生態系や漁業が変調を起こすなどの影響があるほか、地域によっては高潮が起こりやすくなったり、東京で南岸低気圧による雪が降りやすくなったりし、関東で蒸し暑い夏になることなども報告されている。

 県立生命の星・地球博物館(小田原市)の瀬能宏主任学芸員によると、伊豆半島では「セナキルリスズメダイ」「カシワハナダイ」などの熱帯性の魚が越冬して生き延びていることが相次いで確認された。本来は死滅するはずの魚「死滅回遊魚」たちが越冬するケースが、以前よりもはるかに多くなっているという。

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