長崎県内初、島原で域外避難訓練 “テロ、武装勢力潜伏”想定 住民650人が参加

空自のヘリに搭乗する市民ら=島原市平成町

 長崎県、島原市、国は6日、テロを想定し、国民保護法に基づき住民を域外に避難させる訓練を県内で初めて同市で実施した。自治体や警察、自衛隊、海上保安部などの関係機関に加え住民計約650人が参加した。
 複数の不審船の確認やサイバー(電脳)攻撃とみられる通信障害の兆候を受け、国は同市に武装勢力が潜伏している可能性が高いと判断。緊急対処事態に認定した上で、避難措置を指示し避難地域を指定する-。訓練はこんな想定で行われた。
 県と島原市が、住民を諫早、熊本、大牟田の3市に避難させるため各市と調整し輸送手段を確保。住民はバスやフェリー、海自の艦艇、空自のヘリなどに乗り込むまでの流れを確認した。テロを警戒し移動中は警察や自衛隊、海保が護衛するなどした。
 参加した島原市の養護老人ホームの介護職、大津崇嗣さん(37)は「災害時に利用者を的確に誘導するための経験にもなった。テロが本当に起きた場合も今回の経験が生きる」。60代男性は、北朝鮮の相次ぐミサイル発射など日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している状況を踏まえ「こういう訓練は必要」と話した。
 同市の吉田信人市民部長は「(実際に有事が起きた際は)市民が自ら陸路で逃げるというケースも考えられる」と課題を指摘。古川隆三郎市長は、訓練の成果を今後の避難計画に反映させる意向を示した。
 県は来年2月、弾道ミサイルを想定した離島での図上訓練を計画している。6日に島原市で訓練を視察した大石賢吾知事は報道陣に対し、陸路で遠方に避難することが難しいことに触れ「離島でどう輸送能力を確保するか。島原の訓練では見えなかった課題があると思う」と述べた。


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