「来る時が来た」静岡からJ1が消えた…清水&磐田OB、代表選手が考える“王国再建”へいま、手を付けなればいけないこと

わたしたちの自慢だった「サッカー王国」という看板をおろさなければならないのでしょうか。明治安田生命J1リーグ最終節、清水エスパルスが北海道コンサドーレ札幌に3‐4で敗れ、ジュビロ磐田に続いてJ2降格。ついにJ1から静岡県勢が姿を消すことになりました。

この事実は一体、どれほどのことなのか。Jリーグが始まる前、1980年にジュビロ磐田の前身、ヤマハ発動機が日本リーグ1部に昇格して以降、43年間、静岡のチームが日本のトップカテゴリーに常に名を連ね続けました。しかし、今回の同時降格によって、Jリーグ発足30周年の来年静岡のチームはいません。この結果以上に、静岡のサッカーはいま、深刻な問題を抱えているといえます。

エスパルス、そしてジュビロのOB松原良香さんは、“悪夢”ともいえるダブル降格を冷静に受け止めます。

<サッカー解説者 松原良香さん>

「来る時が来たなと思う。これは決してエスパルスやジュビロだけではなく、静岡サッカーの歩み、育成や普及を含めて、積もり積もったものが今の状況だと思う」

先日、発表されたワールドカップカタール大会の日本代表メンバー、静岡県出身選手はわずか1人だと騒がれましたが、もっと深刻なデータがあります。Jリーグが始まった1993シーズンの開幕戦、先発出場した2割近くが静岡県勢選手でしたが、今年2022シーズンの開幕戦はわずか5%。静岡の選手が脚光を浴びる機会は減り続けています。この現状を打開するため、松原さんが提唱するのは。

<松原良香さん>

「ひと言でジュビロのサッカーは?、エスパルスのサッカーは?と聞かれても、誰も答えられない。まず、定義をしっかり作ることが最も大事。定義がなければ、何をもって良い選手なのかも判断できない。ではどうやってやるのか?教えるのは指導者。よい指導者を伸ばすために、決める側(フロント)が大事。ここをしっかりと耕すことからやっていく。コツコツコツコツと。何があろうともコツコツやること。土を入れ替えたり、肥料をやる、そういう時期だと思います」

11月7日、SBS・静岡新聞に今シーズンの報告に訪れたのは、清水エスパルスの権田修一キャプテンです。

<権田修一選手>

「静岡というサッカーどころでJ2降格してしまったことを申し訳なく思っている」

代表キーパーが肌で感じる静岡サッカーとは?明るい未来のために何が必要なのか、松原さんがズバリ聞きました。

<松原さん>

「いままでのエスパルスが、静岡サッカーの歴史の積み重ねが(J2降格という形で)表れたと感じた」

<権田選手>

「皆さんが作ってくださった歴史は間違いなく、『サッカー王国』という言葉が静岡にはぴったりだと思う。こんなに(サッカーのことを)ニュースで取り上げてもらえて、サッカー選手のことを気づく街はない。“サッカーどころ”という文化は(静岡には)間違いなく根付いている。ただ、それは大先輩方が作った歴史の中での『サッカー王国』であって、(現役選手の)僕らが何かをしたわけではなく、『サッカー王国』と呼ばれていた時代の方々が作ってくれたものという感覚を1回持たないといけない。今、エスパルスに関わっている選手、スタッフが『サッカー王国を作るんだ、新たなサッカー王国・静岡を作るんだ』という気持ちでやらないといけない」

一方、ジュビロ磐田は11月6日、渋谷洋樹監督の退任を発表しました。来シーズンに向けた厳しい戦いは、すでに始まってます。エスパルス、ジュビロともにJ1に復帰し、さらに定着し、“新たな時代”を作るためには、両クラブが長期的ビジョンを再構築することは急務です。

さらに、「静岡のサッカーとは、いったい何なのか」、真摯に検証、考える時期にも来たといえます。大きな痛みを伴うことかもしれませんが、わたしたちが胸を張って、「静岡はサッカー王国だ」と言える日が再び訪れることを信じて、突き進むしかありません。

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