火災から1年 「エキニシ」の今 昭和レトロの雰囲気 古い木造の建物が密集 広島

去年、JR広島駅の西側にある飲食店街、通称「エキニシ」で起きた火災―。古い木造の建物が密集する地区でたくさんの建物が焼けました。

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広島赤焼き えん 伊藤勝さん
「このままエキニシ、どうなるんだろうみたいな雰囲気はありました、当時は」

あれから1年…。火災の脅威を突きつけられた街の人たちの努力や、それを支えた人の力で、街はにぎわいを取り戻しています。エキニシの今を取材しました。

火事に巻き込まれて亡くなった人はいませんでしたが、コロナ禍で飲食店がたいへんな思いをしている中での火事で胸が痛みました。

火事から1年となりますが、今、エキニシはどうなっているのか。なかなか足を運べていない方もご覧ください。

火災が起きたのは、去年11月10日午前5時半ごろでした。

火は、通報からおよそ10時間後、ようやく消し止められました。

一夜明けて、実況見分が始まりました。

火事のあった一角で当時、鉄板焼き料理店を営んで6年となっていた伊藤勝さんです。わたしたちは、伊藤さんにカメラを渡し、被害にあった店の様子を撮影してもらいました。

消防
「ガラスが落ちているので十分、気をつけていきましょう」

広島赤焼き えん 伊藤勝さん
「想像しとった以上にひどい」

妻 理恵さん
「わたしはもうちょっとだいじょうぶかと思っていた」

伊藤勝さん
「3階はダメかもしれない」

この火事で飲食店や住宅27棟が焼け、このうち11棟が全焼…。伊藤さんの店も全焼しました。

伊藤勝さん
「みんな、土地がせまいから広く使いたいので、隣りの人と壁一枚でやる。お互い、(壁を)立てたら太くなるじゃないですか、昔のことなので」

当時は、ちょうど新型コロナが落ち着きを見せ始めて、飲食店にとっては、これからというときでした。

山崎有貴 記者
「時間は、午後7時半です。エキニシの飲食店街、今は明かりがたくさんのお店の前に灯っています。お客さんもどこの店に入ろうかなとキョロキョロしながら歩いているような印象です」

「お客さんもこのように中に入っていて、にぎわっているんですが、1年前、この辺り一帯が炎に包まれていたんですよね」

全焼したところと同じ場所で再び店を復活させた人…、新たにこの地に入り、店を構えた人…。再び、にぎわいを取り戻しています。

エキニシでは、大きな火事が4年前にも起きています。

こちらは、広島市消防局が行った実験の映像です。

火元の木造住宅を再現した模型に火を点け、延焼経路などを調べました。

消防は、火が天井まで達したあと、隣接する建物に広がっていったとみています。

密集した木造の建物に飲食店と住宅が混在したエキニシエリアでは、火が立ち上る前の早い段階で消す「初期消火」が特に重要だとしています。

今、この街の人は、「防火」に対してどんな意識をもっているのでしょうか。地域の復興に尽くしてきた自治会長は…。

駅西商業センター自治会 佐久間敬 会長
「各棟に2本ずつあります。全部で24本くらいあるのかな。大きめのが2本です」

消火器も今では街のいたるところに設置してあります。

佐久間敬 会長
「無理して消してくれということじゃないですよ。本当に安全第一で、初期消火をできればいいということで。」

山崎有貴 記者
「火元となった住宅があった場所には、今は焼き肉店がオープンしています」

焼き肉店「にくちょ」は、先月、オープンしたばかりです。

焼肉ホルモン にくちょ 佐島健希さん
― 火事のことで不安は?
「火事のことは重々、承知していて、しっかりと対策を練って建設してもらっている」

壁やテーブルには防火の素材を使い、火に近いタイルには燃えない素材を厳選したといいます。

焼肉ホルモン にくちょ 佐島健希さん
「また燃えるということがないようにやっていこうと思っているので、その辺は不安はない」

火災の直接被害は免れたお好み焼き店でも…。

お好み焼き 鉄板焼き 三冠王 木下和典さん
「火元の確認は必ずしますし、やっぱり気を付けるようになりましたね、火につながるようなことには。火事があった後、お客さんが消火器をプレゼントしてくれたり、防火バケツをいただいたり、お客さんも気をつけてくれている」

佐久間 自治会長は、人とのつながりや火災対策など、たくさんのことが変わったと振り返ります。

駅西商業センター自治会 佐久間敬 会長
「ここまで大きい火事は初めてだったので絶望的な感覚があった。でも、クラウドファンディングもして、すごくみなさん協力してくれた。応援・声援、すごく心強かった」

自治会は、消火や防火の設備を整えるためにクラウドファンディングを実施し、目標金額を超える支援が寄せられました。

佐久間敬 会長
「お年寄りが多いので、いざ火が出たときに大きい声を出せないかもしれないので、煙が出たら『火事です!』と音が出る装置を自治会から配って、住人に付けてもらいました」

広島駅周辺のこの地区では、再開発も進んでいます。

すぐ近くには、日本郵政のJPビルディングが建設されました。新たな集客を狙って昼の営業を始めたところもあります。

RICA食堂 宮岡達也さん
「少しでもエキニシが活気づいたらいいなっていうのがあったので、一店舗でも多くランチ営業したら、たぶん、そのうち浸透するかな」

全焼した店から再起した伊藤さんも昼の営業を始めた1人です。

店には支援してくれた人たちへの感謝の思いをこめたポスターが…。

鉄板担担麺 しょう季(広島赤焼き えん) 伊藤勝さん
「ぼくらが返せることは一生懸命、ここでまた新たに営業をしていくことなんじゃないかと常々、思っている。これからも火災のことを忘れず、がんばっていきたいと感じる」

火災からあす10日で1年―。再開発の街で昭和の雰囲気が今も残るエキニシ。「二度と火災が起きないように」街の人たちは、火災の教訓を生かしていきます。

― エキニシではあす10日、火災から1年を迎えるということで、住民や飲食店の関係者が、消防と消火や避難の訓練を行うということです。

― 新しい店も入ってきているという状況で、火災の直後だけではなく、継続してやっていくことが大切ですよね。

― そして、9日から1週間は、「秋の全国火災予防運動」に入ります。乾燥する季節になります。火の気には注意してください。

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