ネクサスエレファンツ解散…元所属選手が感じる野球人の「危機」 福井のショックいかほど?【ゆるパブ】

福井県から独立リーグのチームがなくなる…。おそらく福井県在住者だとしても、この事実を知る人は少ないはずです。これこそチームが解散する所以であるのかもしれません。解散という報道を聞いて福井県が揺れるほどの衝撃を“感じさせなければ”、チームが今後も存続していくのは厳しいはず。なぜなら、人気がなければ球団経営は成り立たず、球団経営が成り立たなければいくら「野球したい!」と泣き喚いたところでチームは消滅してしまうのです。以前、「独立リーグは夢をあきらめる場所」というコラムを書きましたが、夢をあきらめる場所すらなくなってしまうことに、どれくらいの選手が危機を感じたのでしょうか。

執筆者である僕は、福井県にプロ野球球団ができた1年目の選手でした。2007年、福井にプロ野球独立リーグのチーム『福井ミラクルエレファンツ』ができて15年。選手として、そしてその後の福井でのチームなどをみてきて感じたことは、チーム解散につながる野球人の“危機”だったのです。

■殿様スポーツだった野球

僕が小学生の頃、野球というスポーツはまだまだ人気が高く、テレビをつければ毎晩ジャイアンツの試合が流れていました。放課後の小学校では野球で遊ぶ子どもが多かったし、なによりも将来の夢に「野球選手」と書く友達も多かった。僕自身もその1人で、野球選手になるために、とにかくほぼすべての時間を野球に費やしていたくらいです。そのような“人生の時間の使い方”が許されていた時代なのか、野球部というものは別格みたいな扱いで、大学野球部の時代には、授業に出ず(先輩の恐怖と下級生の雑用が多く、出れずと言った方が正しい)、レポート用紙の裏に「体育会系野球部です。よろしくお願いします」と一筆書いて提出し、ギリギリ単位をもらうようなこともあったくらいです。(今では考えられませんが)。

そんな中、2008年に27歳という年齢で独立リーグの選手になったわけですが、選手になって感じたことは、「選手自身も殿様気取りだな」ってことでした。僕自身も野球選手になるために野球ばかりをしてきたし、周りを見渡せば、勉強せずに野球ばかりで人生の時間を費やしてきた人ばかりだったし、2008年くらいだと、ギリギリ独立リーグの選手くらいでもチヤホヤされたので、夢を諦めるどころかNPB選手気取りだったのを覚えています。たいした力も実力もないのにです。

■野球人としての危機

時は流れ2022年。野球の人気はどうなったでしょうか。体罰、丸刈りのようなものは時代遅れになり、野球中継も地上波ではほとんど放映されなくなり、将来の夢に「YouTuber」と書く子どもが増え、野球なんてスポーツは殿様でもなんでもない地位にまでさがったような雰囲気です。「野球だけやっていればなんとかなる」という時代ではなくなったことも空気感として漂ってはいるものの、野球界や野球人には根深く過去の文化が残っていて、それが野球革命の進行を遅らせていると言われても過言ではないと思います。福井で野球選手をしたのち、約6年前に福井に移住してきました。野球人気が下火になっているこの時代に、街中で頭を下げている選手を私は見たことがないし、「福井で野球をするんだ、野球を続けてNPBに行くんだ、そのために県民のみなさんに応援してもらうんだ」という熱意も不十分だと感じました。おそらく、2008年から数年間は、初物の余韻でなんとか存続できたのでしょう。でも時代も時代、球団経営者がいくら優秀で有能でも、選手に経営に関する知識や県や地域、ファンのみなさんに対する思いがなければ、チームも盛り上がりに欠け人気も出るはずがありません。

■野球人はどう変わっていくのか?

野球というスポーツには、まだまだ根深く過去の文化が残っています。少年野球をみても、罵声、体罰、坊主、勝利至上主義、野球だけやればいい、そんな言葉もまだ消えてはいない。さらには野球が主であったスポーツ界には、野球界が毛嫌いしたeスポーツだって盛り上がってきています。そんな中、野球人はなにを考えどう行動すべきなのか。

僕自身、野球をやめたとたんに路頭に迷い、目標を失い、野球以外、社会に役立つような能力がなにもない自分自身に絶望を感じたことがありました。エレファンツ解散に対して、選手たちがどう思うのか?もしかするとそれこそが、今後の野球人がどう変化していくのかの岐路になるのかもしれません。

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