家計「すさまじ」

 歳時記を開けば、秋の深まりとともに寒さを表す季語も移ろうことを教えられる。それとなく感じる寒さは「そぞろ寒(さむ)」、いくらか寒いのは「やや寒」、羽織る物が欲しくなる頃は「肌寒」…▲季語のような風情はあったものではないが、この数カ月、値上げラッシュで家計に吹く風もまた、そぞろ寒から肌寒に、さらには寒さが増す「冷(すさ)まじ」へと移ろいつつある。住友生命保険のアンケート調査によれば、物価上昇で生活費が増している家庭は9割に及ぶという▲10月、全国の5千人にインターネットで回答を得た。値上げが響いている項目は「食費」が6割でトップ、「水道光熱費」「ガソリン代」と続く▲確かにそうだなあ…と、うなずく順位だが、では昨年秋と比べて、生活費はどれくらい違うのだろう。平均では、ひと月で1万4800円増えたらしい▲皆さんには、ちょっと驚く数字だろうか。まあ、それくらいかな、と思う数字だろうか。一方で貯蓄は昨年よりも、月平均で5800円増えたという。生活の負担が増して“守り”はますます堅くなっている▲年収の見込みは「変わらない」「減る」を合わせて7割で、これからも家計に冬の寒風が吹くのだろう。具材もやや高めとはいえ、お鍋を囲むのにいい季節、体はせめてほかほかと、どうぞ温かく。(徹)


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