<ジモトピア>あの名優も!劇場に続く道飾る手形32枚 「足の神様」や懐かしの「石ケン渡シ」ある銭湯も

【右】彩の国さいたま芸術劇場の初代芸術監督、蜷川幸雄さんをはじめ、1998年から上演された「彩の国シェイクスピア・シリーズ」の主な出演者の手形レリーフが設置されている通り=埼玉県さいたま市中央区

■与野本町駅から芸術劇場(中央区)

 JR埼京線与野本町駅西口には、さまざまな巨大オブジェが点在し、色とりどりのバラの花が楽しめる駅前公園が広がる。子連れのママ友や高校生たちがベンチに座り、おしゃべりをしている。左方面に進むと、彩の国さいたま芸術劇場に続くたつみ通りに出る。途中の与野西中学校の正門前には、故蜷川幸雄氏が演出した「彩の国シェイクスピア・シリーズ」に出演した俳優たちの手形レリーフが32枚も並ぶ。自分の手を重ね合わせ、大きさを比べると著名人たちにより親近感が湧いてくる。

 その向かいには銭湯「鈴の湯」がある。帰りに時間があれば汗を流すのもいい。男女湯の仕切り壁にある「石ケン渡シ」の穴と、男湯に昨年新しく描き変えられた富士山のペンキ絵が必見。見応えのある芸術劇場の外観を垣間見ながら、信号を右折しノスタルジックな「本町通り」へ。周囲には高い建物がほとんどなく、縦書きの看板が連なり、歴史あふれる街道の面影を残す。室町時代から市場の開催地として知られ、江戸、明治にわたって栄えてきた。沿道に残る蔵造りの家々や与野七福神をはじめとする寺社の多さがそれを物語っている。

 洋品店や金物屋、染物屋など老舗が並ぶ一方で、デリバリー専門店や平日3日間のみ営業するパン屋、毎週木曜日のみやってくる移動カフェなど目を引く店も増えている。

 移動カフェ「Cafe Flat」を営む桜区の金光治美さん(30)は、6年前からコーヒーや、こだわりの飲み物、スイーツを販売している。コーヒーの入れ方を学び、店舗のカフェを目指したが実現には至らず、中古のワゴン車を購入し、キッチンカーにした。運転から接客まで全て1人でこなす。常連の男性は「本格的な味ですぐにファンになった。入れ方を教わり自宅でやってみたが同じようにはいかなかった」という。メニューを書いた黒板アートも金光さんが手がける。

 桜とバラの名所として知られる与野公園のすぐ脇に足の神様「大國社」がある。無人の小さな神社で、拝殿には絵馬ではなく、たくさんのわらじが奉納されている。「足が順調に良くなりますように」「羽生結弦選手の足のケガが早く治りますように」。帰りは東方へ向かえば駅に戻れる。

【左】足の神様「大國社」。奉納するワラジは、本町通り沿いの洋装店「大木屋」で扱っている【右】「ふらっと立ち寄ってほしい」という思いから名付けたという「Cafe Flat」。ラテアートも好評

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