『トヨタGRスープラ・ファニーカー』の王者がトヨタでの初タイトル獲得、自身は連覇達成/NHRA

 アメリカ最高峰NHRA(National Hot Rod Association/全米ホットロッド協会)の年間全22戦のカレンダーのうち、最終“カウントダウン”として開催されるプレーオフ6戦の締め括りとなる第57回『オートクラブNHRAファイナル』が、11月11日~13日にカリフォルニア州南部ポモナに位置するシリーズの聖地オートクラブ・レースウェイで開催され、各部門のシリーズチャンピオンが決定。

 今季序盤にTOYOTA GAZOO Racingノース・アメリカ(TGRNA)陣営にスイッチしたファニーカークラス王者ロン・キャップスが、プレーオフでの2勝を加えた年間5勝を挙げ、新型『トヨタGRスープラ・ファニーカー』での初王座を獲得。自身も逆転でのシリーズ連覇を成し遂げた。

 1万1000馬力を超えるトップフューエル・ドラッグスターを頂点に、同水準のパワーを誇るファニーカーや、プロストックなど12のクラスで争われているNHRAだが、9月以降続いてきたプレーオフのフィナーレを飾る年間最後のレースウイークを迎えた。

 選手権に有効な獲得ポイントでも1.5倍の係数が掛けられるこの週末に向け、土曜から気合の籠るアタックを見せたキャップスだが、この週末を前にクラス3度の“世界王者”を獲得するロバート・ハイト(サウス・カリフォルニア・オートクラブ/シボレー・カマロSS)に57ポイント差で先行され、ランキング2位に留まる状況となっていた。

 2021年には自身2度目のNHRAファニーカー・チャンピオンに輝き、週末を前に通算72勝を挙げて来た実績をもとに、今季から搭乗する『NAPAオートパーツ・トヨタGRスープラ』を常勝マシンに仕立て上げたキャップスは、今回の予選でも時速337.33マイル(約542.88km/h)、ゴールタイム3.837秒を記録して今季6回目、キャリア通算35回目の“No.1クオリファイアー(予選通過者)”を獲得。シリーズ約20年ぶりとなる2年連続でのチャンピオンシップを獲得するべく、逆転タイトルへ望みを繋ぐ予選日となった。

「こうしてレースカーに乗り込み、大事な瞬間に最大限の走りをしたいと思うとき、どうすれば最高のパフォーマンスを発揮できるか。これは普段から絶えず話してきた状況そのものだ」と語ったキャップス。

「最高の選手たちと競う緊迫の予選日を、こうしてベストのかたちで締めくくるなんて素晴らしい方法だ。思わず無線で叫び声を上げてしまったが、子供のころに初めてディズニーランドに行ってスペースマウンテンに乗ったようなものだね(笑)」と続けたファニーカーのディフェンディングチャンピオン。

「でも明日はまるで別の日だ、ということも理解している。コースサイドのモーターホームでぐっすり眠り、もう1度この世界選手権で優勝するチャンスに挑む日にしたい」

 明けた日曜現地11時から始まった勝負は、今季通算8勝という強さでクラスを支配してきたシボレーのハイトが、まさかの2回戦敗退という衝撃的な結果で幕を明けると、最終決戦こそ『スナップオン・ツールズ・ダッジ・チャレンジャーSRTヘルキャット』に乗るクルス・ぺドレゴンに今季初優勝を譲ったものの、シーズン唯一のポイントリーダー浮上を完璧なタイミングで果たしたキャップスが、2年連続での世界タイトル獲得とファニーカー部門連覇を成し遂げた。

今季は「世界で最も権威あるドラッグレース・イベント」として認知されている“ザ・ビッグゴー”こと全米選手権初制覇も果たしたロン・キャップス
最後の瞬間までファニーカー部門のポイントリーダーに座り続けたロバート・ハイト(サウス・カリフォルニア・オートクラブ/シボレー・カマロSS)
今季デビューの新型『トヨタGRスープラ・ファニーカー』は、アレクシス・デジョリア(写真)らを含む3台が参戦した
今季序盤までシボレーで戦ったロン・キャップスがプレーオフでの2勝を加えた年間5勝を挙げ、自身も逆転でのシリーズ連覇を成し遂げた

■最高峰部門は2017年王者のフォースが2度目のタイトル獲得

「カウントダウン(プレーオフ)は本当にクレイジーだった。数多くのドライバーにチャンスがあった今季のこのクラスを考えると、この分野での競争の激しさは一目瞭然だ」と、喜びよりも先に周囲への配慮と感謝を口にしたキャップス。

「自分の周りにはたくさんの素晴らしい人たちがいて、僕らはいつもそうした人物から学んできた。(NHRA通算17冠の“帝王”)ジョン・フォースやドン・シューマッハー、ティム・ウィルカーソンなど、その生涯を賭けて競争しているこれらすべての人々が僕のキャリアを助けてくれたんだ。こんなこと(シリーズ連覇)が現実に起こるなんて考えてもいなかったよ」

 今季4月の第4戦として開催された恒例“フォーワイド・ナショナルズ”を前に、トヨタ陣営への電撃スイッチを表明したキャップスは、新たに結成した自身のチーム『ロン・キャップス・モータースポーツ』での初年度王座ともなった。

「チームオーナーになり、そのNo.1の称号をマシンに乗せ、このトラックで驚異的な成功を収めたロバート・ハイトと彼のチームを打ち負かさなければならなかった。現時点でも僕らがここにいることに驚かされるし、すぐにまた浮き沈みのある勝負が始まるんだ」

 一方、最高峰のトップフューエル・ドラッグスター部門は、プレーオフ初戦で今季初勝利を挙げていたオースティン・プロック(モンタナ・ブランド/ロッキーマウンテン・ツイスト・ドラッグスター)が最終戦でも勝利を飾ったが、前日にトップ・クオリファイアーを獲得していた2017年王者ブリタニー・フォース(モンスターエナジー・ドラッグスター)が年間5勝の実績により、ホームトラックで2度目の世界タイトルを決めてみせた。

「本当にシュールね! 私たちがここにいて、こんな結果になったなんて信じられない気分よ」と、前述のとおり2017年にも史上初の女性シリーズチャンピオンに輝いているフォース。

「今日もやる気に満ち、自分の仕事はやり遂げたと信じていた。ここポモナでこのチームと過ごしたこの日のことをみんなに覚えていてもらいたい。私たちはシーズンを通して好調を維持してきたけど、カウントダウンの始めは苦戦を強いられた。でも(前戦)ラスベガスとここポモナで必要なときに回復できたのが最大の勝因になったと思う」

 そして主要部門のひとつであるプロストックでは、今季ここまで10勝を挙げて最終戦の週末も13回目の最終ラウンドに進出したエリカ・エンダースが、自身5度目のチャンピオンを獲得。同じくプロストック・モーターサイクル部門は年間4勝のマット・スミスが制している。

帝王ジョン・フォースの娘で、2017年に史上初の女性シリーズチャンピオンに輝いているブリタニー・フォース
「ここポモナでこのチームと過ごしたこの日のことをみんなに覚えていてもらいたい」と語ったフォース
プロストック部門では、開幕戦も制していたエリカ・エンダースが、自身5度目のチャンピオンを獲得した
来季2023年は3月9日~12日にフロリダ州ゲインズビルで開催される第54回『アマリー・モーターオイルNHRAゲイターナショナルズ』で幕を明ける

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