梅毒感染者が福井県で急増、過去最多に 2022年、医師が早期発見・治療を呼びかけ

福井県内の梅毒の患者数推移

 福井県内で性感染症「梅毒」の感染者が急増している。11月16日時点の福井県のまとめによると、2022年に報告された感染者数は47人(速報値)に上り、現行の統計形式となった2006年以降で最多だった21年の27人を大幅に上回っている。福井大学医学部附属病院感染制御部の岩崎博道教授は「治療すればほとんどのケースで完治する」と早期発見・治療を呼びかけている。

 福井県保健予防課によると、感染者は毎月報告され、47人のうち男性33人、女性14人。年代別では40代が12人と最も多く、20代11人、30代と50代で9人と続く。県内の感染者数は18年以降減少傾向だったが、21年は前年の12人から倍増した。国立感染症研究所によると、今年報告された全国の感染者数は1999年以降で初めて年間1万人を超えた。

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 県保健予防課は、県内での急増について「全国で増加して不安に感じた人が検査し、潜在的な患者が表面化した可能性もある」とみている。

 症状は、感染後約3週間(1期)で陰部や口腔内などにしこりやただれができる。痛みやかゆみはなく、治療しなくても自然に治まるが、病原菌は体内に潜伏したままで他人にうつす可能性がある。約3カ月経過(2期)すると、全身に発疹(バラ疹)ができる。治療せずに数年たつと、心臓や血管などに合併症を起こし死亡することもある。「1期、2期で発見・治療して治ることがほとんど」(岩崎教授)だが、妊婦が感染すると早産や死産、新生児の障害の可能性がある。

 治療は、抗菌薬を1日3回、最低2週間内服する。今年から新たに注射薬が使えるようになり、初期であれば1回の注射で効果があるとされる。予防は性行為時のコンドーム利用が有効。岩崎教授は「感染力が強く、2期までは人にうつすリスクがある。症状がある場合は性的接触をせず、パートナーも検査を受けてほしい」と訴えた。

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