インデックス投資の先駆者による3つのETF、それぞれの特徴を金融アナリストが解説

国内の証券会社でも海外上場ETF(上場投資信託)の取り扱いが広がったことや、円安で海外の資産への投資の必要性を感じる方が増えたこと、NISA(少額投資非課税制度)でも投資が可能なことなどから、海外ETFへの関心が高まっているようです。

今回は海外ETFで、日本で人気かつメジャーなインデックス投資をいち早く提唱したアメリカのバンガード社のETFを3つ紹介したいと思います。


インデックス投資の先駆者・バンガード社

バンガード社はジョン・ボーグル氏が設立した資産運用会社で、1976年、世界初の個人向けインデックスファンドを設定しました。

当時は「ボーグルの愚行」と言われたインデックス投資は今ではメジャーなので、ボーグル氏は先見の明あるパイオニアであるといえるでしょう。投資の神様といわれるウォーレン・ バフェット氏も「ボーグル氏は、 アメリカの投資家に誰よりも貢献してきたと」と評しています。

そんなバンガード社とブラックロック社で世界の運用資産総額はトップを競っている状態です。バンガードのETFは投資家にとって大切な経費率、コスト面でも優れていますので、その点も注目してETFをチェックしてみてください。なお、本稿では金額や利回りは2022年11月16日(水)の終値ベースで紹介していきます。

(1)日本の人気ナンバーワンはVT

バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)は、FTSE グローバル・オールキャップ・インデックスに追随することを目指すETFで、米国に上場していますが、先進国、新興国の大型、中型、小型株約8,000銘柄が投資対象なので世界中の株式に分散投資できます。時価総額加重の算出法を採用し、保有銘柄は四半期ごとにリバランスされます。

ブルームバーグによると、直近配当利回り(税込)は1.83%、経費率は0.07%。3ヵ月トータルリターンはドルベースでは約5%のマイナスとなっていますが、3年トータルリターンは6%を超えるパフォーマンスです。

TradingViewより

今年はドル円が円安方向に大きく動いたため、円ベースですと利益となっています。

TradingViewより

日本の人気ナンバーワンのETFと言われていますが、1銘柄て全世界の株式に分散投資できる点が人気です。1単位が88.17ドルなので、積み立てやすい金額ともいえそうです。

ただ投資先は米企業の比率が半分近くとなっていることや、経費率も0.07%と低水準ではあるものの、後述するVOOやVTIと比べると高くなっており、日本国内では人気がありますが、じつはあまり米国では人気がないETFであることも覚えておきましょう。

米国株のETFをすでに持っているなら、コスト意識の高い米国の投資家と同じように、VTではなく新興国関連のETFと組み合わせてもよいかもしれませんし、米国を除く先進国株式ETFのVEAを組み合わせる、という方法も一つだと思います。

(2)S&P 500に投資できるVOO

バンガードS&P 500 ETF(VOO)は、S&P 500種指数のパフォーマンスに連動する投資成果を目指しているETFです。

GAFAMをはじめとする世界を代表する銘柄が組み込まれており、米国企業の約8割をカバーしています。四半期ごとに時価総額加重平均を用いてリバランスをしてくれます。S&P 500に連動する投資信託への投資は、投資初心者でも取り組みやすいというメリットや、少額からの積み立てられることや運用コストが低いこと、銘柄選定をしなくてよいし購入するだけで分散投資となるので、つみたて投資では投資にかかる手間や時間が少なくてすむというのも魅力になります。

ブルームバーグによると、直近配当利回り(税込)は1.62%、経費率は0.03%と最低水準です。3ヵ月のリターンは6.73%のマイナスとなっておりますが、3年のトータルリターンは10.28%です。363.44ドルから購入が可能です。

(3)アメリカ経済全体を網羅するといえるVTI

バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)はアメリカの株式市場全体に投資できるETFです。

20年以上に渡って運用されており、時価総額ベースでウエートを算定し、米国市場の99.5%をカバーできます。3,500以上の銘柄を保有し、S&P 500指数よりさらに幅広いのが特徴で、GAFAMやテスラ、バークシャー・ハサウェイなどアメリカを代表する銘柄が組み込まれています。米国株の上昇が続くのであれば恩恵を受けられるETFといえ、長期的に見ると右肩上がりに推移している米市場に投資しておくのはやはり強いと思います。

ブルームバーグによると、直近配当利回り(税込)は1.60%、経費率は0.03%とVOOと同様に低く、3ヵ月のリターンは6.75%のマイナス、3年のリターンは9.81%です。

VTIとVOOを比較すると、利回りも3年トータルリターンも僅かに上回っているVOOの方がよさそうですが、VTIは198.32ドルから投資できるので、投資資金で考えるとVTIの方がやりやすいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。またVTIでも投資資金の関係で基準価格が高いという方や、分配金再投資が難しいという方は、VTIやVOOに連動する投資信託を利用するという方法もありますので、気になる方は調べてみてください。

最後に2012年から約10年の3つのパフォーマンスを比較してみます。上から順にVOO、VTI、VTとなっています。とはいえ、VOOとVTIはほぼパフォーマンスは変わらないといえます。

TradingViewより

皆さんの投資戦略の参考になれば幸いです。

11月14日週「相場の値動き」おさらい

11月18日(金)の日経平均株価の終値は前日比30円80銭安の2万7899円77銭と小幅続落。
先週末11月11日(金)の日経平均株価は2万8,263円57銭でしたので、週間では363円80銭の下落となりました。

日経平均は狭いレンジ内でもみ合う方向感に乏しい1週間だったといえそうです。

TradingViewより

米市場では15日発表の10月米卸売物価指数(PPI)が前月比0.2%上昇と前月比で、また市場予想を下ぶれ、インフレの鈍化を示す結果となりました。

直近の経済指標は軟調と言え、それは利上げペースが鈍化するのではとの観測につながるので買い材料となったものの、セントルイス連銀のブラード総裁、ミネアポリス地区連銀総裁も相次いでタカ派発言をしたことは相場の重しとなりました。

日本では総務省が今朝発表した10月CPIは総合指数が103.4と前年同月比で3.6%上昇。40年ぶりのインフレを表す上昇幅となっています。

来週は11月24日(木)に米感謝祭があります。米感謝祭が終わると今年の利益を確定するような動きが出る可能性があります。今年の為替市場では、すでにドル円など利食い売りが出ているようにも感じます。ご注意ください。

また11月25日(金)にはブラックフライデーがあります。年末商戦に向けて小売の動向など注目してみてください。

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