岩佐歩夢が初のポール・トゥ・ウイン。完璧なレース運びで王者の猛追退ける【FIA F2第14戦 レース2】

 11月20日、2022年FIA F2の最終レースとなる第14戦ヤス・マリーナのフィーチャーレース(決勝レース2)がアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで開催され、ホンダ&レッドブル育成の岩佐歩夢(ダムス)が初のポール・トゥ・ウインで今季2勝目を飾った。

 現地時間13時00分(日本時間18時00分)から行われたフォーメーションラップを経て、気温30度、路面温度41度のなか、33周のうち1回のタイヤ交換が義務付けられる決勝レース2はスタートを迎えた。

 スタートでベストの蹴り出しを見せたのは2番グリッドスタートのロイ・ニッサニー(ダムス)。ホームストレートエンドで一旦はポールスタートの岩佐の前にノーズを出すが、岩佐も粘り、ターン1の立ち上がりでトップを死守。そんななか、後方でラルフ・ボシュング(カンポス・レーシング)がマシンを止めたことで2周目にVSC(バーチャル・セーフティカー)が導入される。

2022年FIA F2第14戦ヤス・マリーナ 決勝レース2のスタート

 VSCは3周目に解除され、岩佐の背後にはニッサニー、フェリペ・ドルゴヴィッチ(MPモータースポーツ)、テオ・プルシェール(ARTグランプリ)、デニス・ハウガー(プレマ・レーシング)が隊列を形成。しかし、徐々に岩佐もペースアップ。7周目にはニッサニーに対し、1秒差を付けDRS圏外に突き放す。

 7周目のターン8、そんなニッサニーをドルゴヴィッチが攻略。そしてこの周の終わりに、デニス・ハウガー(プレマ・レーシング)、リアム・ローソン(カーリン)がピットイン。この動きに呼応した岩佐、プルシェールは翌8周目にピットへ滑り込む。

 これで見た目上のトップはドルゴヴィッチに。ソフトタイヤスタートの岩佐はミディアムに交換している。そして9周目にドルゴヴィッチ、ニッサニー、ローガン・サージェント(カーリン)がピットへ。上位スタート勢のほとんどがピットを済ませるなか、岩佐はピット義務消化組のトップをキープして、10周目に突入した。

 11周目から12周目はピット義務消化組2番手のドルゴヴィッチや4番手のハウガーがファステストを更新。ドルゴヴィッチは岩佐の0.6秒まで接近するが、岩佐もペースをコントロール。そんななか、13周目のターン6でドルゴヴィッチがあわや岩佐に追突しそうになりコースオフ。これでギャップは1.3秒まで広がり、逆にドルゴヴィッチは背後のフレデリック・ベスティ(ARTグランプリ)に接近を許す。

 15周目を迎え、ハードタイヤスタートからピットを先に伸ばすジャック・ドゥーハン(ビルトゥジ・レーシング)がトップ、この時点では岩佐とのギャップは24秒。両者のペースは拮抗も、ジリジリと岩佐がギャップを縮める。

 レースは3分の2が経過した25周終了時点で、見た目上トップのドゥーハンがピットイン。この時点で岩佐とのギャップは約24秒だったこともあり、全車がピットを終えた時点で岩佐がラップリーダに返り咲く。

 その直後、ピットアウトしたドゥーハンのナットと左フロントタイヤが外れ、コース上に転がる。このアクシデントでドゥーハンはレースを終えることとなった。なお、このタイヤの回収のため、27周目にVSCが導入もすぐに解除された。

2022年FIA F2第14戦ヤス・マリーナ フェリペ・ドルゴヴィッチ(MPモータースポーツ)の猛追を受ける岩佐歩夢(ダムス)

 岩佐の背後を1.2秒差で追うドルゴヴィッチだが、なかなか、オーバーテイクへのチャンスは訪れない。DRSで0.6秒まで接近も、岩佐のタイヤは余力を残しており、2022年王者に隙を与えない。その一方、サージェントがニッサニーをかわし、6番手に浮上。そんななか、31周目にプルシェールのマシンがスローダウン。戦列を離れることに。

 32周目、残り2周の時点でオリ・コルドウェル(カンポス・レーシング)がターン13でマシンを止め、3度目のVSCが導入される。残り1周と少しというところでグリーンフラッグが振られ、岩佐の今季最後の、そして最大の戦いが始まる。

2022年FIA F2第14戦ヤス・マリーナ フェリペ・ドルゴヴィッチ(MPモータースポーツ)の猛追を受ける岩佐歩夢(ダムス)

 ファイナルラップのターン6でもポジションを守った岩佐は、続くターン8でサイド・バイ・サイドとなるも、ポジションを死守。ドルゴヴィッチは続くターン9でたまらずコースオフし勝負は決した。

 33周目、巧みなタイヤマネジメントによるペースコントロールを見せ、ドルゴヴィッチの猛追を退けた岩佐がトップチェッカーを受け、初のポール・トゥ・ウインで今季2勝目を飾った。2位にドルゴヴィッチ、3位にローソンが続いた。最後尾22番手スタートの佐藤万璃音(ビルトゥジ・レーシング)は15位でチェッカー。不運も多かったフル参戦3年目を完走で締め括った。

 このレースの結果により、岩佐は獲得ポイントを141に伸ばしシリーズランキング5位に浮上。スーパーライセンス発行に伴うポイント条件はクリアならずも、ポール・トゥ・ウインという最高の結果で、FIA F2ルーキーイヤーを締め括った。なお、2022年シーズンのチームタイトルはドルゴヴィッチ、クレモン・ノバラックが所属するMPモータースポーツが獲得した。

2022年FIA F2第14戦ヤス・マリーナ レース2のトップチェッカーを受ける岩佐歩夢(ダムス)
初のポール・トゥ・ウインでシーズン2勝目を飾った岩佐歩夢(ダムス)
2022年FIA F2第14戦ヤス・マリーナ レース2表彰式。左からフェリペ・ドルゴヴィッチ(MPモータースポーツ)、岩佐歩夢(ダムス)、リアム・ローソン(カーリン)
2022年FIA F2第14戦ヤス・マリーナ 佐藤万璃音(ビルトゥジ・レーシング)

■FIA F2第14戦ヤス・マリーナ フィーチャーレース(決勝レース2)暫定結果

Pos. No. Driver Team Time/Gap

1 17 岩佐歩夢 ダムス 33Laps

2 11 F.ドルゴヴィッチ MPモータースポーツ 0.830

3 5 L.ローソン カーリン 1.348

4 1 D.ハウガー プレマ・レーシング 13.440

5 6 L.サージェント カーリン 14.064

6 25 A.コルデール ファン・アメルスフォールト・レーシング 15.719

7 20 R.フェルシュフォー トライデント 18.162

8 8 J.ビップス ハイテックGP 20.279

9 7 M.アームストロング ハイテックGP 20.684

10 16 R.ニッサニー ダムス 22.181

11 9 F.ベスティ ARTグランプリ 22.732

12 12 C.ノバラック MPモータースポーツ 23.489

13 2 J.ダルバラ プレマ・レーシング 24.298

14 22 E.フィッティパルディ チャロウズ・レーシング・システム 27.616

15 4 佐藤万璃音 ビルトゥジ・レーシング 28.246

16 21 Z.マロニー トライデント 31.754

17 24 J.コレア ファン・アメルスフォールト・レーシング 32.446

18 23 T.カルデロン チャロウズ・レーシング・システム 45.116

19 10 T.プルシェール ARTグランプリ 2Laps

20 14 O.コルドウェル カンポス・レーシング 4Laps

– 3 J.ドゥーハン ビルトゥジ・レーシング DNF

– 15 R.ボシュング カンポス・レーシング DNF

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