香坂みゆきインタビュー ② 大貫妙子 × EPO の資生堂CMソング「ニュアンスしましょ」  あんなにスタッフの多いお仕事をしたのは初めてでした(笑)

『香坂みゆきインタビュー ① 歌手活動再開!Night Tempo が取り上げた名曲とは?』からのつづき

― 80年代の香坂みゆきさんと言えば「ニュアンスしましょ」(1984年)というヒット曲がありますね。

香坂みゆき(以下香坂):私にとっては初めての大型タイアップ(資生堂 秋のキャンペーンソング)でしたし、レコーディングも、とても華やかだった記憶があります。作詞の大貫妙子さんと作曲のEPOさんが、レコーディングに来てくれて、大貫さんからは「言葉をひとつひとつ丁寧に歌って下さいね」とアドバイスもいただいたのを今でもよく憶えています。

― ジャケット写真のピンクのアートワークも、香坂さんのビジュアルもとても華やかで綺麗ですね。

香坂:ジャケット写真も専門のメイクさんとスタイリストさんが私を綺麗に作り上げてくれましたし、『ザ・ベストテン』のスポットライトに出演した時にも、上から下まで完璧に作っていただきました。当時は自分でヘアもメイクもやっていたので、あんなにスタッフの多いお仕事をしたのは初めてでした(笑)。

― 今回配信になる9枚のオリジナルアルバムですが、3枚目のオリジナルアルバム『素顔のままで』(1978年)は当時の音楽シーンに合わせるように、ニューミュージック系のアーティストを起用していますね。

香坂:このアルバムから、伊藤薫さんの楽曲を歌わせていただくようになりました。他には、水越恵子さん、丸山圭子さん、みなみらんぼうさん、岸田智史さんから楽曲提供していただきました。私は岸田智史さんのデビュー当時からのファンで、ファーストアルバムの『パーマネント・ブルー』が愛聴盤だったので、このアルバムに提供していただいた「水色の傘」という曲はとても大切な1曲になりました。当時、岸田さんは西武線沿線にお住まいだったと思いましたが、部屋で録ってくれたギター1本のデモテープの中に電車の音が入っていたりして(笑)。

― アルバム『BACK STAGE』(1982年)に収録されている「Merry-Andrew」という曲は、広谷順子さんの曲ですが、とてもいい曲ですね。

香坂:この曲はファンの方からもとても人気の高い曲なのですよ。作曲の広谷順子さんにはいろいろな曲でコーラスに参加してもらいましたが、彼女の声と私の声がとても似ていたので、どちらがコーラスを歌ったか混乱することもあったんです(笑)。

― アルバム『FAIRWAY』(1985年)は、LPのA面全曲が村田和人さんの作曲で、昨今のシティポップブームで再評価されそうな作品ですよね。

香坂:私のYouTubeチャンネルで、村田君が作ってくれた「Season off」を歌いました。実はこの曲は今の私にはちょっとキーが高いんです。でもキーを下げてしまうと、カラオケの村田君のコーラスの声が変わってしまうので、頑張ってオリジナルキーで歌いました。当時、村田君から「作った曲を全部みゆきにあげちゃったから、自分のアルバムに入れる曲がなくなったよ」なんて言われてました(笑)。このアルバムを改めて聴いていると、当時私がウェスト・コースト系のサウンドに傾倒していたことを思い出します。

― 1987年にポリドールからフォーライフに移籍をしていますが、個人的にフォーライフ時代の香坂さんの作品がとても気に入っています。『ヌーヴェルアドレッセ』(1987年)、『La Vie Naturelle』(1988年)の2枚のアルバムは名盤ですよね。

香坂:先日、フォーライフ時代のアルバムの作詞をしてくれた吉元由美さんをFacebookで探し出して(笑)、久々に再会して当時のスタッフを含めてご飯を食べました。すごく楽しかったんです。「みゆきちゃん、あの2枚は、もう1回改めてみんなに聴いてもらおうよ!」と言って下さって。

― 今の時代にフィットする感覚ですし、配信されることになったら改めて評価される作品だと確信しています。

香坂:当時のディレクターの中村さんが映画のタイトルをいくつか書きだして、作詞の由美ちゃんに「内容とリンクしなくてもいいから、このタイトルで詞を書いて欲しい」と依頼をしました。その時に由美ちゃんと会って、私の女性観だとか恋愛観を長い時間話したので、歌詞の要所要所に私のエッセンスが散りばめられているんです。由美ちゃんとは年も近いし、価値観も近いものがあったと思います。私たちの若い頃はこんな恋愛を夢見たり、こんな恋愛をしていたということを知って欲しいし、恋に悩んだり、心が揺れ動いている30代の人に聴いていただけると嬉しいです。

― フォーライフ時代の作品は、ジャケット周りのビジュアルも素敵ですよね。みゆきさんが移籍した87年あたりは、バブル期でしたからね。

香坂:当時、当時流行通信やマリークレールなどで活躍されていた伊島薫さんがカメラマンで、ヘアメイクも含めて、ファッション誌の最先端のスタッフが制作してくれたビジュアルでした。

― 今見てもオシャレさが全く損なわれていないですよね。個人的にこの2枚はLPが再発売されることがあれば、絶対に買いたいと思っています。

香坂:レコードは随分流行っているみたいですもんね。うちも息子と買い物に行くと、「帰りにレコード屋さん寄って行こう」と言われますから(笑)。

(取材・構成 / 長井英治)

■第3回予告 次回はいよいよ最終回! 31年ぶりの新曲「かもめはかもめ」「虹のひと部屋」が配信リリース。YouTubeやSNSを含めて、これまでに使っていなかったフォーマットを駆使して挑戦している香坂みゆきさんの現在の心境をたっぷりとお届けします。

カタリベ: 長井英治

アナタにおすすめのコラム 香坂みゆきインタビュー ① 歌手活動再開!Night Tempo が取り上げた名曲とは?

▶ 香坂みゆきのコラム一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC