香坂みゆきインタビュー ③ 早過ぎたカバーアルバム「CANTOS」と31年ぶりの新曲!  45周年のタイミングだったからこそ、できたと思うんです

『香坂みゆきインタビュー ② 大貫妙子 × EPO の資生堂CMソング「ニュアンスしましょ」』からのつづき

― 1991年には伝説のカヴァーアルバム「CANTOS(カントス)」3タイトルがリリースになりました。当時から愛聴盤だったので、先日配信されたことを心から喜んでおります。

香坂みゆき(以下香坂):当時スタッフと、「新曲を作るのもいいけど、世の中にはたくさんの名曲があるからそれをカヴァーするアルバムを制作するのも面白くない?」という感じで作った作品です。

― 1991年当時は、まだこのようなカヴァーアルバムは少なかったと思います。

香坂:時代よりもかなり “早すぎるカヴァーアルバム” と言われていましたから(笑)。アルバムには島健さんがピアノで参加してくれましたが、このアルバムのライブを芝浦のインクスティックでやったことを憶えています。レコーディングメンバー全員がそのまま参加してくれたライブでした。今思えば随分贅沢なライブでした。

― 『CANTOS(カントス)』の3枚は、選曲も普通のカヴァーアルバムとはどこか異質でしたし、アレンジの斬新さや、みゆきさんの抑えたボーカルも素晴らしかったです。

香坂:このアルバムは2カ月おきのリリースになっていますが、レコーディングはいっぺんにやったので、わりと長い時間かけて丁寧に制作しました。大人っぽいサウンドを意識していましたが、私の本来のキーをかなり落として、できるだけマイクに近づいて意識的に口を大きく開けずに歌入れをしたんです。

― 面白いのが井上陽水さんの「いっそ セレナーデ」がすべてに収録されていて、3曲ともアレンジが違いますよね。

香坂:選曲もアレンジも当時のスタッフからの提案や、私の意見なんかも取り入れてもらい、面白いものになったと思います。このアルバムは寝る前に聴くとよく眠れるんですよ。是非試してみて下さい(笑)。

―この『CANTOS(カントス)』を発表したあと、約30年間CDのリリース等はなかったわけですが…。

香坂:この30年間は単に音楽をやる空間にいなかっただけかもしれません。家庭のことや子育てもありましたし。最近、子供もようやく大人になったので、ちょっと歌ってみたら「やっぱり私は歌うことが改めて好きなのかも」とようやく思えるようになりました。

― 31年ぶりの新曲「かもめはかもめ」を聴いた時、まったく香坂さんの声質が変わっていなくて、なんだかとてもホッとしました。

香坂:どうもありがとうございます。40周年の時に小さなライブをやりましたが、その時「歌うのは楽しいな」とは思いましたが、何をしていいかわからなかったんです。なので、45周年の時は何かやりたいと思って、今はYouTubeもあるし自分の曲にこだわらず “歌いたい歌を、歌いたい形で歌いたい” と思ってチャンネルの開設をしました。

― InstagramやTwitterも一気に開設されましたもんね。

香坂:そうですね、45周年を機に、今まで手をつけていなかったものをすべてやってみようという感じでした。ライブやコンサートをいきなりやるにはブランクもありすぎるし、こちらから発信をして見たい人だけが見ることのできる、YouTubeがとてもいい方法だと思って、とりあえず1年間限定で始めてみようと思ったんです。

― みゆきさんのYouTubeを拝見しましたが、「このまま『CANTOS 4』作れますね」という書き込みを見つけました。

香坂:そうやって思っていただいて、とてもありがたいですね。ホント今回はいろいろな方に協力していただいて、みゆきちゃんのためならとギターやピアノを弾いて参加してくださるんです。

― 9月に31年ぶりの新曲「かもめはかもめ」「虹のひと部屋」が配信リリースになりましたが選曲はどのようにして決めていったんでしょうか。

香坂:今回は田村制作所の田村充義さんにディレクションをお願いしました。私が歌いたい曲と、田村さんがおすすめしてくれる曲を出し合って決めていきました。ポケカラというアプリをダウンロードして、それに私が録音して田村さんに聴いていただいて、最終的にこの2曲になりました。

― 香坂さんが歌うと、どの曲も香坂さんの世界になってしまうところが素晴らしいです。

香坂:そうやって言っていただけるととても自信につながります。私自身が一番そういう風に思えなくて、「何を歌っても同じじゃない?」と過小評価をしてしまいます。だから、松本伊代ちゃんのような個性的な声に憧れるのだと思うんです。

― そんなことないですよ! 香坂さんの声ってやけに艶っぽいんですよね。特に低音の部分はたまりません(笑)。「虹のひと部屋」は石川セリさんのアルバム『ときどき私は……』(1976年)に収録されている、随分マニアックな1曲ですね。

香坂:当時から私はこのアルバムが好きで選曲しました。ディレクターの田村さんも「これはいい曲だね」と意見が一致しまして。

― この2曲が配信されたことで、31年ぶりに音楽活動を始動されたわけですが、香坂さんのファンからの反響はいかがでしたか?

香坂:それが、みなさんすごく優しいの(笑)。すごくよく評価してくださいます。これが5年前でも、10年前でもダメで、この45周年のタイミングだったからこそ、できたと思うんですね。子育てもようやく終わって、私自身が自由な状態になったからこそ、自由な発想で活動を始められたのだと思います。ファンの方も同世代の方が多いと思うので、おそらく同じような環境で応援して下さっているのかなと。

― YouTubeやSNSを含めて、これまでに使っていなかったフォーマットを駆使して挑戦している香坂さんの姿を見て、ファンの方は勇気をもらえていると思います。

香坂:もし、そのように受け取っていただけるのなら、この先さらに楽しく発信していけると思います(笑)。

― 今後の予定を教えていただけますか?

香坂:フォーライフ時代の2枚のアルバムの配信も予定していますし、来年私は還暦を迎えるので ”還暦ライブ” は必ずやりたいと思っています。

― 今回、香坂みゆきさんがリリースした1977年から1985年までのアルバム9タイトルがサブスクを含め配信されるわけですが、今改めてこの時代の作品をどのように感じますか?

香坂:どのアルバムもそれぞれ色が違いますが、当時は夢中で音楽に向き合っていたなと、改めて感じます。自分の音楽から離れていた時間が長かった分、当時のアルバムやサウンドがとても愛おしく思えるし、多くの方に聴いて欲しいという気持ちになっているので、今後はそれを聴いていただける機会を増やしていきたいと思っているんですよ。なので、是非聴いていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

(取材・構成 / 長井英治)

■まとめ 3回にわたってお届けした香坂みゆきさんのインタビューはいかがでしたでしょうか。デビュー45周年を迎え、新曲の配信、サブスク解禁など、シンガーとして精力的に活動を再開したみゆきさんのこれからに注目していきたいですね。

カタリベ: 長井英治

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