<金口木舌>「いい肉の日」に考えること

 米ドラマ「テンプル・グランディン」。自閉症の女性が過度なストレスを軽減させる自身のノウハウを動物科学に応用し、牛の苦痛を和らげる肥育施設や食肉処理施設の設計などで功績を収める物語を描く

▼この設計は米国で広く採用されるようになった。牛肉の消費大国の畜産業を支える発明だが、今や畜産を介さず、研究室で作られる「培養肉」が新たに注目され始めている

▼食卓に細胞を人工培養した肉が並ぶ日が来るかもしれない。命を「いただきます」という感謝の念が薄れる懸念はあるが、利点は、動物の殺処分数や環境への負荷を減らせること

▼環境保護団体グリーンピース・ジャパンによると、世界の温室効果ガスの14%は家畜からの排出。全ての乗り物の排出量の総量に匹敵する。過度な食欲がビジネスを肥大化させ、結果として環境や人類にストレスを与えている

▼今日は「いい肉の日」。私たちの体を作る貴重なタンパク質源を確保しつつ、食肉処理される動物や地球全体の苦痛を和らげることに目を向ける時代に来ている。

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