新体制となるフェラーリF1。ビノットとライバル関係にあったシモーネ・レスタがテクニカルディレクターとして復帰か

 フェラーリF1代表マッティア・ビノットが2022年末でチームを去ることが決まり、スクーデリアの体制が大きく変わる。技術部門のボスは、かつてのシャシーテクニカルディレクター、シモーネ・レスタが務めるのではないかと考えられている。レスタは現在、フェラーリと技術提携しているハースでテクニカルディレクターを務めている人物だ。

 フェラーリとハースの技術提携の一環で、2021年にレスタは80人のエンジニアたちとともにハースに出向した。現在フェラーリの本拠マラネロに、ハースのデザインオフィスがあり、ここでレスタは指揮をとっている。しかし、彼は2023年にはマラネロのメインビルディングに戻り、2023年型マシンの開発、2024年型マシンの設計および開発の責任者となるものとみられる。

フェラーリ代表マッティア・ビノット
シモーネ・レスタ(2017年/フェラーリ)

 長年にわたり、ビノットとレスタの関係は悪かった。10年以上前、現在F1のCEOを務めるステファノ・ドメニカリがフェラーリ代表を務めていた時代から、ふたりは相手に強いライバル心を持ち、性格的にもそりが合わなかった。ビノットは2013年にエンジン部門のボスになり、レスタは2014年にチーフデザイナーとしてシャシー部門を監督する立場になったものの、ふたりの協力関係はうまくいっていなかった。

 ビノットは2016年にはジェームズ・アリソンに代わってチーフテクニカルオフィサーに就任、ビノットとの関係が悪かったレスタは2018年からアルファロメオ/ザウバーに移り、チームのテクニカルディレクターの役割を担った。

 2019年がフェラーリにとって不本意なシーズンになったことで、レスタはその夏の初めにチームに呼び戻され、2021年に導入される予定だったF1新世代マシン(後にCovid-19のパンデミックの影響で2022年に延期)のための作業に取り組んだ。

 この時、ビノットはすでにチーム代表となっていた。しかし相変わらずビノットとレスタがうまく協調できなかったため、レスタはすぐにハースに異動になり、そこでデザインチームを率いることになった。他の9チームより少ない予算しか持たないハースだが、2022年型マシンはこの数年のなかで最も高い競争力を見せた。

2022年F1バーレーンGP ケビン・マグヌッセン5位入賞を祝うハースF1チーム

 ビノットが2022年末でフェラーリを離れることが決まったことで、レスタの復帰への障害はなくなる。ビノットはチーム全体を率いるとともに、シャシーとエンジン両部門を監督していたが、レスタはこの技術部門のボスのポジションを引き継ぎ、テクニカルディレクターを務めることになるとみられる。

 チーム代表の後任は、現在アルファロメオの代表を務めるフレデリック・バスールになる可能性が高いと考えられている。バスールと、数年前にアルファロメオで働いていたレスタとの関係には問題はないだろう。

 実際にフェラーリで技術面の指揮をとることが決まった場合、レスタはハースに共に出向した最も近しいエンジニア数人を連れて戻るものとみられる。一方、ハースのデザインチームの能力を維持するべく、フェラーリからは彼らに代わる人員が送られることになるだろう。

2018年F1ドイツGP シャルル・ルクレールとシモーネ・レスタ(アルファロメオ・ザウバー)

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