急遽のドライバー2名体制も速さと幸運が味方に。Porsche EBI WAIMARAMAが今季S耐初優勝

 11月26〜27日、三重県の鈴鹿サーキットで開催されたENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第7戦『SUZUKA S耐』では、GT4車両で争われるST-Zクラスが非常に興味深い結果となった。山野直也/大草りき組Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RSがたったふたりで、かつ60秒ものペナルティストップを跳ね返して優勝を遂げたのだ。

 Porsche Team EBI WAIMARAMAは、2021年まで使用していたポルシェ718ケイマンGT4クラブスポーツに替え、2022年から新型の718ケイマンGT4 RSクラブスポーツを投入。4.0リッター6気筒ボクサーエンジンを積みパワフルになったほか、ダウンフォースも増加。今季期待のニューウェポンと言えた。

 そんなニューマシンとともに、KIZUNA/千代勝正/山野直也/大草りきというドライバーラインアップでシーズンに臨んだPorsche Team EBI WAIMARAMAだったが、シーズン開幕前のテストでクラッシュ。また序盤戦から速さはあったものの、ジュリアーノ・アレジとリ・ジョンウを加えた第2戦富士SUPER TEC 24時間レースでは、レース中盤まで大きなリードを築くもウォーターポンプのベルト切れでリタイアに。第4戦オートポリスではブレーキ、第5戦もてぎではミッションと、小さなトラブルに悩まされてきた。

 第3戦SUGOでは表彰台を獲得したものの、その他のレースでは決して期待したような結果が残せなかった今季、第6戦岡山では、AドライバーのKIZUNAの社業の日程調整がつかず不参加に。迎えた第7戦鈴鹿は、今季の集大成として好結果を目指していたレースだった。

■4人のドライバー編成がまさかの2人体制に

 そんな第7戦に向けて、チームに思わぬ事態が発生した。KIZUNAが家庭のやむを得ぬ事情のため、さらにBドライバーの千代が新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者となってしまったことから、参戦できなくなってしまったのだ。チームは走行初日となった11月24日から急遽、山野と大草のふたりだけで戦うことになってしまった。

 ただスーパー耐久の場合、そもそもAドライバーは変更できないことに加え、GT3を使うST-XやGT4を使うST-Z、さらにST-TCRでは、ジェントルマンドライバーをAドライバーにしなければならない。しかし急遽の事情ということでスーパー耐久機構がドライバー変更を認め、山野をA、大草をBとして戦うことになった。当然、山野は国内外で実績があるドライバー。変更に際しドライバー登録規則による60秒のペナルティストップが課されることになった。さらに、ふたりで5時間を走らなければならない厳しさもあった。

 しかしこの週末、鈴鹿サーキットにフィットしたPorsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RSは好走をみせる。ふたりがともにひさびさのニュータイヤでのアタックとなった予選では山野がAドライバー予選でトップタイム。さらに大草がBドライバー予選でコースレコードタイムを記録。スピードがあることは間違いなかった。

2022スーパー耐久第7戦鈴鹿 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS

■展開が味方に。ドライバーふたりも充実の表情

 迎えた第7戦の決勝では、まずは大草がスタートを担当。6周目にピットインし、60秒のペナルティを消化した。ピットロードのロスタイムを含めればほぼ1分半に近いタイムロスで、当然Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RSは大きくポジションを落とした。

 ただ、今回の第7戦では序盤からアクシデントが多発。18周目から20周目、30周目から33周目と、二度のセーフティカーが導入された。このことがPorsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RSに大きく味方し、60秒のロスタイムを大きくリカバーすることができたのだ。

 その後もふたりが交代しながらトップ争いを展開したPorsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RSは、終盤残り30分で首位を確固たるものにすると、トップチェッカーを受け新型718ケイマンGT4 RSクラブスポーツの嬉しい国内初優勝を飾った。そしてこの勝利は、ST-Xのポルシェセンター岡崎 911GT3Rとともにポルシェの2クラス制覇という結果にも繋がった。

「今季は3回くらいは優勝できるチャンスがありましたが、トラブルがあったりとなかなかチャンスを活かせませんでした」と山野は、やっと速さが結果に繋がったことを喜んだ。

 また、スタートを任された大草は「少し疲れましたね(苦笑)」とロングドライブに少々疲れた様子をみせていたが、「でもこうして優勝できて、頑張って良かったと思っています。クルマも速かったですし、すごく良いレースウイークになりました」と充実した表情をみせた。

 そしてふたりが口を揃えたのが、次回こそKIZUNA、千代とともに優勝を目指したいということだ。Porsche EBI WAIMARAMAにとっては、新たな目標ができたと言えるだろう。

2022スーパー耐久第7戦鈴鹿 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS
2022スーパー耐久第7戦鈴鹿 Porsche EBI WAIMARAMA Cayman GT4 RS

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