突破

 「実は私、サッカー大嫌いなんですよ」。平和をテーマにした書道の個展を本欄で紹介した長崎市の書道講師、森田孝子さんが笑顔で打ち明け話をしてくれた。「だって、小学生の男の子が3年生ぐらいになるとみんな『サッカーやるから』ってお習字やめちゃうんです」▲そんな森田さんも昨日は早起きして“運命の一戦”に見入った。テレビをつけると試合は既に始まっていてスペインが1点リード。あら、やっぱり…。ところが▲後半、日本の反撃が始まる。交代で投入された堂安律選手が眠気の吹き飛びそうなミドルシュートを決めてまず同点。3分後、ゴールラインを割りそうなボールを三笘薫選手が執念で折り返し、田中碧選手が押し込んだ▲逆転。森保一監督の采配がこの日も冴えた。“スペインは2位通過を望んでいる”…そんな見立てが「都市伝説」でしかなかったことを教える試合終盤の猛攻も凌(しの)ぎきって、日本のグループリーグ突破が決まった▲W杯の優勝を経験しているのは8カ国だけ。そのうち2つが同居した“死の組”のこの結末を誰が予想していただろう。合言葉の「新しい景色」はまだ先だが、ここまでの景色も既に相当新しい▲決勝トーナメントの初戦、クロアチア戦は6日午前0時キックオフ。森田さん、今度は夜更かしです。(智)


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