服も作れるユネスコ遺産の「細川紙」 しなやかに強く文化つなぐ 細川紙技術者協会会長・内村久子さん

細川紙技術者協会の内村久子会長。着用の藍染めの作務衣は和紙であつらえたもので洗濯もできる=埼玉県小川町和紙体験学習センター

細川紙技術者協会会長 内村久子さん

 1300年の伝統がある「和紙の産地」といえば埼玉県小川町と東秩父村。2014年、細川紙を含めた「和紙・日本の手漉(すき)和紙技術」がユネスコの無形文化遺産に登録された。今年6月、この技を受け継ぐ和紙職人の「細川紙技術者協会」の会長に就いたのが内村久子さん(75)。初の女性会長で「重責を感じています。世界に認められた技で漉く細川紙は文化。誇りを持って次世代に引き継いで行きたい」と話す。

 1994年、自然環境と落ち着いた町の雰囲気に魅かれて、入間市から小川に移住。「和紙に関わる仕事をしたい」と考えていた矢先、5年制の「小川和紙技術後継者育成講座」の1期生募集を知る。原料の楮(こうぞ)を育てるところから和紙になるまでの全工程を学ぶ。「これだ」と思った。

 定員15人に県内外から145人の応募。結局、枠を広げ、30人を選考。「和紙職人になる」との思いが通じたのか、その一人に選ばれた。埼玉伝統工芸会館で月2回の講座実習。「それでは足りない」。独自に原料を手に入れ、手漉きの自主実習に取り組んだ。5人の先生(職人)がいれば、それぞれ漉き方が違った。その仕事を見て、自分で考え習得。数年後、受講生ながら同協会の研修員に推薦された。

 2002年、独立、「和紙工房うちむら」を構えた。紙の作品展などを通して、注文が入るようになった。さらに研さんを積み、準会員を経てユネスコ登録の際、正会員に推薦された。今年、久保征一会長の退任に伴い会長に就任。

 現在、協会の会員数は減少傾向にある。正会員は7人、準会員2人、研修生7人の計16人、うち10人が女性で、代々の和紙職人は少なくなった。「時代の流れで厳しい。世代交代の時期。紙漉きは親から子へと引き継がれてきたが、これからは研修員を育て次世代へ引き継いでいきたい。女性としての配慮を取り入れ、会員の意見を聞きながら進めていきたい」

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