伝統の味を復活「からすみ屋 Raw」 長崎・野母崎樺島 1月16日までCFで製造資金募る

からすみの製造復活に向けCFを呼びかける松本さん(左)と大叔母の小川さん=長崎市野母崎樺島町

 長崎伝統の珍味「からすみ」。長崎市出身のヘアメーク・ネイルアーティスト松本今日子さん(43)が、2017年に廃業した野母崎樺島町の実家のからすみ店の味を復活させた。
 松本さんは地元の高校を卒業後、ヘアメーク・ネイルアーティストを志し20歳の時に渡英。修業を積んでロンドンや東京を拠点に、スポーツ選手などのヘアメークを担当するなど約25年間活動してきた。
 東日本大震災(2011年)を機にUターンしたが、創業100年以上の実家のからすみ店「平野屋」が17年に廃業。からすみはボラの卵巣を塩漬けし、塩を抜いた後、約2週間天日干しして製造するが、ボラの漁獲量が年々減少していたのが理由だった。
 廃業後、松本さんが「久しぶりに家のからすみが食べたいな」と、かつて店を切り盛りしていた大叔母の小川八重子さん(88)にねだったところ、返ってきたのはこんな言葉だった。「自分で作ってみなさい」
 そこで松本さんは一念発起。小川さんに製造法を習い、今年9月に店を復活させた。ボラは兵庫県産を使用。屋号は「原材料のまま」を意味する「からすみ屋 Raw」に改称した。天然の味を生かす伝統の製造法を受け継ぎ、パッケージも現代風に新装した。
 からすみ作りは、今が最盛期。冬の乾燥した潮風を当て、1時間おきに裏返して表面の脂を拭き取る作業を繰り返す。2週間後には黄色から美しいあめ色へと変化する。「昔は冬になると市内中心部から樺島へ多くの人が買い求めに来た」と指導役の小川さん。松本さんは「からすみのおいしさを多くの人に味わってほしい」と意気込む。
 松本さんは、クラウドファンディング(CF)で製造資金を募っている。目標金額は100万円。募集期間は来年1月16日まで。100本製造し、協力した人に配布する。CFは専用サイト「READYFOR」内のhttps://readyfor.jp/projects/106892から。


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