「憲法違反 認められない」 被爆2世の国賠請求棄却 長崎地裁

請求が棄却され、「不当判決」の垂れ幕を掲げる弁護士ら=12日午前10時36分、長崎地裁前

 長崎原爆の被爆者を親に持つ被爆2世の援護を国が怠っているのは違憲だとして、2世ら28人が国家賠償を求めた訴訟の判決で、長崎地裁(天川博義裁判長)は12日、「憲法違反とは認められない」として請求を棄却した。天川裁判長は、2世への放射線の遺伝的影響の可能性は認めた上で、援護するかどうかは国の裁量に委ねられるとした。
 被爆の次世代への影響を巡る初の司法判断とみられる。原告団は2017年に提訴。請求額は1人当たり10万円。全国に30万~50万人いるとされる2世への法的援護を目指してきた。同種訴訟は広島地裁でも起こされており、来年2月の判決の内容が注目される。

被爆2世訴訟に関する主な経過

 判決は、2世への遺伝的影響については知見が確立していないため「可能性を否定できないというにとどまる」と指摘。被爆者援護法の対象範囲は「立法府の合理的な裁量的判断に委ねられている」とし、立法措置を講じなくても合理的理由のない差別的取り扱いには当たらないと判断した。法的援護がない現状が「法の下の平等」をうたう憲法14条に違反すると主張した原告側の訴えは退けた。
 原告側は、放射線の影響を受けた可能性を否定できない以上、援護法が「原爆の放射能の影響を受ける事情下にあった」と定める「3号被爆者」に該当すると主張。これに対し、天川裁判長は3号被爆者を「健康被害が生ずる可能性がある者」と解釈した上で、「既に出生していた者を対象とし、身体に直接被爆した者」と独自に定義。2世が援護法に該当するかは明言しなかった。
 原告らが訴えた健康不安については「内容が抽象的」と述べ、幸福追求権を定めた憲法13条に違反しないとした。
 判決を受け原告団と弁護団は声明を発表。遺伝的影響の可能性が否定されなかったとして「国は対応が誤りであることが指摘されたと受け止めるべき」と歓迎。一方で「政府・厚労省の基本的対応の問題に言及していないことは決定的に不十分」と非難した。
 国は訴訟で2世への遺伝的影響は確認されていないなどと主張してきた。厚労省健康局は「国の主張が認められたと認識している」とコメントした。


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