新たに『VW ID.3』をSTCCへ投入。新興チーム・オートラウンジ・レーシングが3番目の参戦表明

 来季2023年より完全電動化を表明し、新たにBEVシリーズに生まれ変わるSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権に向け、参戦2年目を迎える新興チーム・オートラウンジ・レーシングが3番目のチームとして参戦継続を表明。新たにフォルクスワーゲンの電動化ブランドにおける基軸モデル『ID.3』を投入し、チームオーナーのクリスチャン・スカールを含む3台体制を構築する。

 直近で日本上陸を果たした『ID.4』の兄弟車であり、サイズ的にも直接的に『ゴルフ』の後継とも言えるこのEVモデルは、同VWグループが電動車専用に新開発したMEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリックス)と呼ばれる新プラットフォームを採用。全長4.2mのCセグメント級ハッチバックは、モーター類をリヤに搭載した後輪駆動モデルとなり、すでに欧州域内で50万台以上の販売実績を誇る。

 その『ID.3』導入を決めたチームとスカールは、TCR規定採用最終年度となった2022年にSTCCヘの挑戦を開始し、限られたレース経験ながら最高7位フィニッシュ、ドライバーズランキング13位の戦績を残していた。

「STCCでの最初の1年は、目もくらむような……大地を揺るがすような素晴らしいものだった。2023年にチャンピオンシップが電動化されることは、我々にとって非常に“イージー”なことであり、このプログラムを開始するための前提条件でもあったんだ」と明かしたスカール。

「私自身は、今季いくつかの個人的な目標を達成した。チームもこのエベレストのように高い課題に取り組み、計画当初には不可能だと思っていた大きな一歩を踏み出すことができた」

TCR規定採用最終年度となった2022年にSTCCヘの挑戦を開始したチームは、アウディRS3 LMS 2の2台体制で戦った

■STCC優勝経験を持つふたりめのドライバーは後日発表

 来季のシリーズでは、STCCでトップチームとして君臨する強豪PWRレーシングが運営する研究開発部門『EPWR』社が開発する電動パワートレインのキットを組み込んだ車両が使用される計画で、最高出力550PS想定のモーターにより0-100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークする。

 そのリヤ駆動キットには800Vの高電圧を利用する45kWhのリチウムイオンバッテリーの搭載が予定され、先日そのサプライヤーには元WRCドライバーのマンフレッド・ストール率いる技術企業STARD(ストール・アドバンスド・リサーチ・アンド・デベロップメント)が指名されている。

「2023年に向け多くのパワーを備えた電動レースカーへの移行は、レース経験の乏しい我々にとって少しのリセットを意味するが、それは誰にとっても同じであり、楽しみにしている挑戦でもある。冬の間、後輪駆動と充分すぎるパワーという点で、同様のキャラクターを備えるGTカーでマイレージを稼ぎ準備していくつもりだ」

 すでにチームはふたり目のドライバーと契約を交わしているといい、このSTCCで「優勝経験を持つ」という「彼、または彼女」の詳細は「近日中にも明らかにされる」と続けたスカール。

「我々は、人々が驚きを持って迎えることになると思う元STCCウイナーと契約したが、現時点ではこれ以上は何も言えないんだ。加えて3人目のドライバーを見つけるためのプロセスも進行中だ。2023年に向けて高い目標を設定しているし、頂点を目指して戦いたい。そのために多くの有能な人材を確保しており、間違いなく必要な要素を満たしていると思うよ」

 これで2023年に向け3番目の電動化シリーズ参戦表明となったチーム・オートラウンジ・レーシングに加えて、アウディで戦ってきたブリンク・モータースポーツと、同じくアウディから『BMW i4』へのスイッチを表明したエクシオン・レーシングの参戦が確定している。

同じく新興Exion Racingは、すでに『BMW i4』での参戦をアナウンスしている

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