森口貢さん死去 86歳 「長崎の証言の会」事務局長

「長崎の証言」創刊50周年記念の集いで、記念誌を手にする森口さん=2019年12月15日、長崎市内

 被爆証言の記録を続ける市民団体「長崎の証言の会」の事務局長を務める森口貢(もりぐち・みつぎ)氏が13日午後0時41分、間質性肺炎のため長崎市内の病院で死去した。86歳。長崎市出身。自宅は長崎市。葬儀は家族だけで営む。喪主は長男裕文(ひろふみ)さん。
 原爆投下後の1945年8月20日、8歳の時に佐賀県内の疎開先から長崎市に入り、爆心地を経て、水の浦の自宅に戻った。
 小学校教諭を退職後、長崎の証言の会で活動。証言を掘り起こす傍ら、被爆遺構巡りのガイドとして修学旅行生らを精力的に案内した。2003年12月から19年にわたって事務局長を務めた。
 市立図書館建設に伴う04年の旧長崎市立新興善小校舎解体を巡っては、被爆直後に救護所となった貴重な遺構を守ろうと市民連絡会のメンバーとして保存活動に尽力。被爆70年を前に設立された市民団体「長崎原爆の戦後史をのこす会」の副代表も務めた。

◎「実相伝える」理念持ち続け

 被爆証言誌の発行や反戦反核運動に長年取り組んだ森口貢さんの訃報に、活動仲間や被爆者らから追悼の声が上がった。
 「長崎の証言の会」で、共に被爆証言の収集などに取り組んだ編集長の山口響さん(46)は「会の活動をずっと継続できているのは森口さんの力が大きい」と感謝。「活動の根本にある『実相を伝えて核なき世界を目指す』という理念を、しっかりと持ち続けた人だった」と悼んだ。
 教員時代から親交があった長崎市の被爆者、山川剛さん(86)は、終戦と開戦の日の「不戦の集い」で配るプログラムに、森口さんが政治や社会情勢の所感を記していたのが印象深いという。「国の危うい動きに『許せない』と敏感に反応していた。正義感の強い人だった」としのんだ。
 被爆遺構の保存運動などで、活動を共にした平和活動支援センター所長の平野伸人さん(75)は「平和への情熱は人一倍。遺構や証言を次世代に残さなければいけないという強い信念を感じた」と惜しんだ。


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