反撃能力

 試合が始まって間もなく早々と失点、その後も相手チームがボールを支配する時間が延々と続き、前半は0-1のまま終了。このまま終わらないで…。私たちの祈りに呼応するように指揮官は選手交代のカードを切り、アタッカーの枚数を増やす。さあ、始まるぞ▲またサッカーか、まだサッカーか、とあきれないでほしい。確認しておきたいのは「反撃」がこんな時のための言葉であることだ。相手の攻撃や攻勢が存在しないところに「反撃」という言葉の出番はない▲政府の外交・安全保障政策の指針となる「安保関連3文書」の改定で〈他国領域のミサイル基地などを破壊する能力〉が「反撃能力」と称して盛り込まれることが固まりつつある▲「敵基地攻撃能力」の保有は「専守防衛」の枠内で説明しきれないと考えたのだろう。だから、ある時から呼称が変わった。しかし、いくら呼び方だけを変えても、事の危険な本質は変わりようがない▲この能力は「相手のミサイルが発射される際」に発動されることになっている。まだミサイルは飛んでいない。その段階で相手の攻撃施設に打撃を与える行為と「先制攻撃」がどう違うのか、聞いても聞いても、いや聞けば聞くほど分からない▲少しも望まぬ“新しい景色”が見え始めている-と思えてならない。(智)

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