スーパー耐久、2023年にドライバー規定を変更へ。Aドライバーのみを定め柔軟な運用に

 2022年も非常に多くのエントリーを集め、各クラスで白熱のチャンピオン争いが展開されたほか、ST-Qクラスには自動車メーカーが多数参加し、新たな盛り上がりをみせつつあるスーパー耐久シリーズだが、運営するスーパー耐久機構(STO)は2023年に向け、ドライバー規定を変更する予定だという。

 1991年に生まれたN1耐久をルーツにもつスーパー耐久は、その時代に合わせて柔軟にレギュレーションを変化させ、多くのエントリーを集めてきたが、その本分として、他シリーズとの一層の差別化を図る意味でも、いつの時代でもプロドライバーとアマチュアドライバーが一緒になってレースを楽しみ、なかでもアマチュアドライバー=ジェントルマンドライバーが主役である姿勢を変えずにきた。

 STOでは、「スーパー耐久シリーズはアマチュアの目標であり憧れとなるような参加型シリーズを目指している。またいつの時代も、勝ち負けだけにこだわらず、レースをスポーツとして仲間と楽しむ文化を育むことが使命」と考えている。

 初期のN1耐久〜スーパー耐久の歴史のなかでは、車体をチームが製作し、これをプロドライバーのみで駆りレースをリードするシーンもあったが、先述のような意図を踏まえ、特にGT3カーを使うST-Xや、TCRを使うST-TCR、さらにGT4を使うST-Zなどのカスタマーレーシングカーのカテゴリーが生まれたことにともない、プラチナドライバー規定を設けるなど変化を加えてきた。

■時代に応じて変化してきたドライバー規定

 2022年までのスーパー耐久では、ドライバー種別を3種に分けていた。認定基準に基づき、STOによりプロドライバーと認定されたドライバーを『プラチナドライバー』とし、STOが認めた満40歳以上のアマチュアドライバー、または前年12月31日時点で60歳以上のすべてのドライバーを『ジェントルマンドライバー』に。プラチナ、ジェントルマンドライバー以外を『エキスパートドライバー』に定めている。

 カスタマーレーシングカーを使うST-X/Z/TCRでは、Aドライバーについては必ずジェントルマンドライバーを登録しなければならないほか、Aドライバーに登録されたジェントルマンドライバー1名の最低義務周回数が定められるほか、Aドライバーとして予選への出走が必須。逆に全プラチナドライバーの合計乗車距離(時間)は、当初のレース距離(時間)の40%を超えてはならないこと、ST-1〜5クラスのAドライバーには登録できないことが定められている。

 これらの規定により、ST-X/Z/TCRではAドライバー=ジェントルマンドライバーが勝敗に大きく関わることになり、レースの盛り上がりを演出するファクターになっていた。スーパー耐久の大きな魅力のひとつでもあったが、逆に多忙な本業を持つケースが多いアマチュアドライバーがどうしてもレース日程と両立できないケースも出てきていた。また、スーパー耐久に参戦できるレベルのアマチュアドライバーの国内存在人数にも限界があるといった悩ましい問題もあった。

多種多様な車種が参戦し、9クラスで争われるスーパー耐久

■2023年にさらにドライバー規定を変更へ

 そこでSTOでは2023年に向けて、ドライバー規定の変更に着手することになった。まず、プラチナ、ジェントルマン、エキスパートの3種類のドライバー規定を廃止し、Aドライバーのみを規定するという。Aドライバーの条件は下記のとおりだ。

(1)参加する前年の12月31日時点で、満60歳以上のすべてのドライバー
(2)STOが認めた満40歳以上のアマチュアドライバー
(3)上記(1)(2)に該当しないドライバーで、STEL(スーパー耐久エントラントリーグ)・STOが特別に認めたドライバー
※認定を受けるには、各大会のエントリー申し込み・登録内容の変更期間までに指定申請書にてSTOへ申請することが必要。なお、申請ドライバーは、競技中のピットストップ等、何らかのハンデキャップが認定の条件となり当該ドライバーやチームが有利となることはない。
また、STO・STELで審議の結果、Aドライバー登録が認められない場合もあることをある。ハンデキャップは、STO・STELで決定し、都度状況により変更することができる。Aドライバー登録およびハンデキャップに対する一切の抗議は受け付けられない。

 上記の(1)(2)はこれまでと変わらないが、大きな変更は(3)が加わったことだ。これは特例として用いられるもので、ハンデを設けることで有利にならないように設定される。

 さらに上記(1)〜(3)に加え、大きな変化として、2023年からは上記のAドライバーのみの規定が設けられるとともに、ST-X/Z/TCRに加え、ST-1〜5の全クラスでAドライバーを規定。最低乗車時間を設けることになる。逆に、これまでAドライバーは年間を通じた変更ができなかったが、シリーズ中複数のAドライバーを登録することも可能になるなど、柔軟な運用を実施。チームが全大会をきっちりと消化できるように対応していく。

 これらの変更を行うことで、クラスによって生まれていたドライバーの有利、不利をなくすほか、チームがシーズンを戦うにあたり、さまざまな戦い方を選ぶことができる可能性が出てくる。また、60歳以上のすべてのドライバーがAドライバーになれることから、往年の名ドライバーの復帰……といった可能性もあるかもしれない。スーパー耐久の魅力をさらに加速させる施策になるかもしれない今回のドライバー規定変更が、どういったレースを演出するか楽しみなところだろう。

© 株式会社三栄