豊作願い“イノシシ”に矢放つ 佐世保で「吉井のシシウチ行事」

イノシシに見立てたシトギに狙いを定める参加者=佐世保市吉井町

 長崎県佐世保市吉井町に伝わる国選択無形民俗文化財の「吉井のシシウチ行事」が13日、乙石尾地区の「セドの神様」と呼ばれるほこらであり、住民らは“イノシシ”に矢を放ち、収穫への感謝と豊作への願いを込めた。
 市などによると、同行事は同町の乙石尾(13日)、橋口(11日)、橋川内(15日)の3地区で毎年行われる「猪神祭り」の総称。狩りを模した一連の神事は狩猟儀礼と呼ばれ、シシウチ行事は西日本における狩猟儀礼の特色をよく伝えているという。2018年3月には国選択無形民俗文化財になった。
 乙石尾地区では約300年前に始まったとされ、農作物に被害をもたらすイノシシが人里に降りてこないように、山との境に建てたほこらの周辺で毎年開いている。
 今年は住民など約15人が参加。うるち米の粉を練った「シトギ」に木の実や葉を付けイノシシに見立て、住民らは木の枝で作った弓を使い、竹の矢を放った。矢が“イノシシ”に命中するまで行われ、住民らは歓声を上げながら矢の行方を見守った。その後、シトギを小さくちぎって丸め、焼いて頬張った。
 川内野猛さん(73)は「(今は森のようになっているが)昔はここ一体も畑だったと聞いている。光景は変わったが、大切な伝統行事なので伝承していきたい」と話した。


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