「トトロの森」を救え! ナラ枯れ被害が急拡大、住宅への被害恐れも 伐採、防虫、再生など実施へCF開始

ナラ枯れの被害木の伐採作業(「トトロのふるさと基金」提供)

 埼玉県所沢市や入間市、東京都にまたがる狭山丘陵の周辺に点在する「トトロの森」をナラ枯れの被害から救おうと、公益財団法人「トトロのふるさと基金」(安藤聡彦理事長)は、伐採などに充てるための費用を集めるクラウドファンディング(CF)を16日から開始する。狭山丘陵一帯は宮崎駿監督のアニメ映画「となりのトトロ」の舞台のモデルの一つになったといわれる。同基金は「森を再生し子どもたちに受け渡したい」と呼びかけている。

 同基金は狭山丘陵周辺の土地を取得し、トトロの森として保全する「ナショナル・トラスト活動」に取り組んでいる。これまでに計60カ所、約10ヘクタールの土地を取得してきた。

 ナラ枯れはカシノナガキクイムシが老齢のコナラなどにナラ菌を媒介することで起こる。樹木は水を吸い上げる機能を阻害され、急速に枯れてしまう。

 トトロの森では3年ほど前から被害が見られ、2019年には6本程度だった被害木が、今年は492本に増加した。特に32号地(所沢市北野)や56号地(東京都東村山市)では、一つのエリアで10本以上のナラ枯れが認められるという。

 同基金は「住宅などに隣接する森では、近隣への枝の落下や倒木が懸念される」と指摘。抜本的な解決策には、樹木を伐採し残された根株から再生を図る「萌芽更新の実施」を挙げる。

 伐採の可能性がある被害木は現時点で15本あり、伐採には1本当たり30万~40万円かかる。本年度は伐採費用だけで500万円が見込まれているという。同基金は樹木への虫の侵入を防ぐため、トラップの設置にも当たっている。

 CFは寄付型で目標金額を300万円に設定し、23年2月まで受け付ける。リターンには寄付金控除領収書や「報告御礼メール」、会報などを用意する。

 安藤理事長は「ナラ枯れは何年か続くとみられ放置はできないが、経費の中での対応は難しい」と説明。「CFは若い人が利用している。多くの人に現状を知ってもらい、市民の森として守るために支援を寄せてほしい」と呼びかけている。

 同基金は1990年に発足し翌91年、トトロの森1号地を取得した。これまでに国内外の3万人以上から総額約10億円の寄付が寄せられている。

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