新NISAで何が変わる?投資家が受ける恩恵と今後の課題

先週、政府与党が投資の運用益が非課税になるNISAの投資額、上限枠ともに拡大する方向で最終調整との報道がありました。

NISAは2014年にスタートした個人投資家を対象に、株式や投資信託などの売却益や配当金が、一定の範囲内で非課税となる優遇制度です。政府はつみたてNISAと一般NISAの投資額を今後5年間で56兆円に倍増させる目標を掲げ、口座数も3,400万を目指すとしています。2024年から新しいNISAの制度を設け、制度を恒久化し非課税で保有できる期間も無期限とする方向で調整を進めています。


検討されている新しいNISA

新たな制度では、長期の積み立てを目的に投資信託だけを購入対象とする枠と、上場企業の株式などを購入できる枠を設けます。投資額の上限について、投資信託に限定したつみたて型に年間120万円、国内外の株式などの一般型ついては年間240万円、合計で360万円とする方向で調整しています。

新制度では、一般型を「成長投資枠(仮称)」と位置づけ、生涯の投資上限を1,800万円とし、うち成長投資枠を1,200万円としています。NISA利用経験がある人も新制度の投資枠を満額使え、成長投資枠とつみたて型の併用も可能になります。ちなみに現在は同じ年に両方を利用することはできません。

画像:筆者作成

最終的な決定は政府・与党内での議論後になりますが、貯蓄から投資へ本格的なトレンド変更をしていく姿勢が見受けられます。

世界的に見ると、日本は投資にお金をまわしていない国です。その理由は金利が高い時代が長く続いたことに起因していると思います。郵便貯金の定額貯金3年以上の利回りの推移を参考にすると、高度成長期が終わった直後の1974年時点で年利8%、80年代半ばに一旦4%を割り込みますが、バブル経済が盛り上がる80年代末に再び利率が6%超えに跳ね上がり、90年には6.33%まで上がりました。約20年間も高金利の時代が続いたので、投資などでお金を動かすよりも「預金をしておくことが正解」と誰もが思うのが当然の時代が続きました。

「預金が正解」の潮目が変わった時

しかし、バブル崩壊に伴って利率は下落を続け、1999年にはゼロ金利目前まで落ち込みました。この後は2008年のリーマン・ショック以降、預金ではお金が増えない超低金利は今も続いています。

2019年の配当金や投信の分配金による資産所得は日本は約1,800ドル(約25万円)ですが、米国は日本のおよそ4倍の約7,900ドル(約100万円)、ユーロ圏では約2,600ドル(約35万円)です。

投資を促す税制優遇による違いが大きく、米国や英国は家計金融資産のうち税制優遇制度を利用して保有する資産が約20%を超えています。一方、日本はわずか2%にとどまります。

NISAが手本としている英国のISAは、年間投資枠を2万ポンド(約330万円)に設定しています。今回の改正でNISAの投資枠は360万円ですので、金額では日本が上回るので、国民の意識が貯畜から投資へと切り替わるきっかけの1つになるかもしれません。

ただし、問題点もあります。NISAで人気のある投資信託は楽天証券を参考にすると、eMAXIS Slim 米国株式(S&P 500)、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスなどを含め、米国株中心に外国株への投資が目立つ点です。

やはり、国内市場を盛り上げる為にも、日本市場に投資する環境整備をしていく事が今後の課題だと感じます。

最後に、日本株で人気のある銘柄をお伝えします。日本郵船(9101)、トヨタ(7203)、ENEOS(5020)、NTT(9432)、通信のソフトバンク(9434)、商船三井(9104)、JT(2914)、KDDI(9433)などの高配当銘柄が人気となっています。

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