こいつらと関わっても意味がないって思ったんじゃないかな。酒が減るだけで(伊藤)
──OLEDICKFOGGYとTHE CHERRY COKE$は随分長い付き合いだと思いますが。
スージー:20年くらい?
カツヲ:OLEDICKFOGGYって今何年目だっけ?
スージー:20年目くらい。
伊藤:ずっと20年って言ってない?(笑)
カツヲ:記憶にあるのが、当時伊藤ちゃんがバイトしていた渋谷クアトロ近くの中華料理屋で会って、手書きのフライヤーを貰って『ホッピーナイト』っていうイベントに誘ってくれたんだよね。それが確か20年前くらいで。
伊藤:マーシー(マサヤ)にも会ったよね?
マサヤ:渋谷のセンター街でしょ? あの頃、俺はスペイン坂のカフェバーで働いていたんだよね。
伊藤:それも20年前くらいだから付き合い自体は長いですね。
──その頃のシーンはどんな感じでした?
カツヲ:その当時ってラスティックがまた盛り上がってきてる頃だったかな。
伊藤:『RUSTIC STOMP 1996』があって、『RUSTIC STOMP 2000』が出たときとかはオールナイト・イベントで、新宿LOFTがパンパンになっていたから。
スージー:その後、アイリッシュ・パンクが流行ったりして。
マサヤ:Los Rancherosのバンジョーさんがアイリッシュ・パンクに目をかけていたりしたからね。
カツヲ:『ホッピーナイト』って誰が出てたんだっけ?
伊藤:THE☆STaRKEYSとか出てたよ。その頃、全然知り合いがいなかったんだけど、当時の俺らのスタッフが赤坂のホッピーの本社に行ってイベントをやる話をつけてきて。
カツヲ:あれオフィシャルなの?
スージー:そう、オフィシャル。ホッピーの社員の人も来てた。
伊藤:でも1回で終わったんだよね。こいつらと関わっても意味がないって思ったんじゃないかな。酒が減るだけで。
スージー:俺たちが全部リハのときに飲んじゃったから、イベント開始時にはもうホッピーが無くなってたからね。お客さんが飲めないから全然意味がないっていう。
伊藤:当時は渋谷の居酒屋でキンミヤを置いてるとこも全然なくて、今思うと、『ホッピーナイト』がキンミヤを流行らせたんじゃないかって思う(笑)。昔、キンミヤとも提携したくて、キンミヤの会社の人たちが、SHELTERにライブを観に来てくれたことあるんだけどね。それ以来、連絡はないけど(笑)。
カツヲ:あははは。
スージー:その頃からTHE CHERRY COKE$はちょっと上の先輩っていうイメージでしたね。年齢はだいたい一緒なんだけど。
俺たちは節操なくいろんなとこに挑戦してきたけど、OLEDICKFOGGYはブレずにやってきたなって印象(カツヲ)
──当時はお互いをどう見ていました?
伊藤:THE CHERRY COKE$は既に人気バンドだったから「畜生!」って思ってた。
カツヲ:でもやってることがちょっと違ったからね。OLEDICKFOGGYは尖りながら上り調子でやってるのを見ていたから、かっこいい売れ方をしているなって思ってたよ。俺たちはけっこう節操なくいろんなとこに挑戦してきたから。それはそれで全然いいと思っているんだけど、でもOLEDICKFOGGYはブレずにやってきたなって印象。あともともとうちのメンバーだったyossuxi(Accordion / Keyboard)がOLEDICKFOGGYに入ったり、元スタッフのターチンがOLEDICKFOGGYのローディーをしていたりして、いろいろ縁がありますね。
スージー:俺たちはTHE CHERRY COKE$を見て羨ましかったけどね。
伊藤:俺ら、昔はお客さんが入る経験がなかったから。ツアーとかもやり方すら分からなかったし。地方では高校生のコピバンと対バンとかもあったからね。
スージー:Hi-STANDARDのコピーバンドね。
伊藤:しかも昼の部とかで。
スージー:でもギャラくれたよね。2万円くらい。お客さん2人とかで。
伊藤:高校生バンドのお母さんが観に来てたんだよ(笑)。
──OLEDICKFOGGYとTHE CHERRY COKE$の初対バンはいつ頃ですか?
スージー:いつだろう。恵比寿MILKじゃない?
カツヲ:しょっちゅうMILKでやってたもんね。2000年代前半だよね。
スージー:まだドラムが順堂くんじゃなくて。
マサヤ:順堂くんが入ったのって何年?
スージー:2005年くらいかな。その前にはもう対バンしてるからね。タムの下がバスドラになってるようなカクテルドラムでライブしていて。
伊藤:グレッチのやつね。渋谷屋根裏のオーディションで「ドラムを入れたほうがいいよ」って言われた(笑)。
スージー:それ、他のライブハウスでも言われた(笑)。俺らライブハウスの人にはけっこう怒られてたよね。地方のライブハウスとかでも、怒られた。
カツヲ:俺らはハコのブッキングに出なかったから、そういうのがないんだよね。金払うからハコ貸しでやらせてくれって。だから、ライブをやればやるほど赤字だったけどね。
伊藤:実費だよね。俺らも赤字ばっかりだったから。
スージー:レコーディング代も足りなかったしね。キンコーズでジャケットをコピーしたり。
カツヲ:俺らもキンコーズでレコードのジャケットをコピーしたよ。『BEER MY FRIENDS』とかもレーベルが決まる前に見切り発車でレコーディングしたから100万円くらいかかったし。
マサヤ:いろんなことが宙ぶらりんだったからレコーディングの前半と後半で違うところで録っていて。だから音質を合わせるのが大変で。前半がMTRみたいなので録ってるから音質が全然違うっていう。
伊藤:俺たちもスージーの家の台所で録ったことがあるよ。家の台所にエンジニアさんを呼んで(笑)。
カツヲ:何の楽器を録ったの?
スージー:ウッドベース。
カツヲ:うるさ!(笑)
伊藤:あとFM局のスタジオが使えるからって録りに行ったら「何やってるの? 勝手に使ったら駄目だよ」って言われて部屋の隅っこで歌ったこともあったね。
スージー:滅茶苦茶だったよね(笑)。
──同じような経験もしてきたから共感することも多そうですね。
マサヤ:不思議と昔からOLEDICKFOGGYに負の感情を抱いたことがないんだよね。歳が近いのもあるかもしれないけど。
スージー:パチンコ屋でよく会ったしね。
伊藤:後ろの台で打ってるみたいな。
スージー:しかもなかなかの台を打ってるんだよ。GAROとか。
マサヤ:俺、酒飲まないから酒の席はないんだけど、パチンコの席っていうのがあるんだよね。
伊藤:しかもパチンコが、まだ滅茶苦茶負ける時代でしょ?
マサヤ:10万円とか負ける時代だったからね。
──共通点とかってあったりします?
伊藤:人の好さかな。
カツヲ:あははは。でもお互い居場所がない感じでやってるなって思うかな。いろんなとこ出てるけど、果たしてそこがホームかって言われたらそうじゃないみたいな。
伊藤:この2バンドだと大体どっちかしかイベントに呼ばれないのもあるよね。
カツヲ:札幌の『POWER STOCK』は2バンドとも出してくれたけどね。
伊藤:でもやっぱり出演者が10バンドいたとしたら、その中にこの2バンドが一緒に出ることってなかなかないよね。
スージー:富山のフェス『ONEFES2022』であったよ。
伊藤:まぐれだよ。
スージー:プレミア引いたんだ(笑)。
──お互い持ってない部分は何かあったりします?
カツヲ:それはたくさんありますね。
マサヤ:そこが明確だから一緒にやりやすいのかも。そこを追従しても仕方ないし、逆に自分たちの良さが何なのか思い返すことができるなって。
伊藤:俺らは大体持ってますけどね。
カツヲ:あははは。
伊藤:90%くらいは持ってるかな。
カツヲ:俯瞰で見たときに俺たちは陽キャだけどOLEDICKFOGGYは怖いし暗いなって思う。でも俺が伊藤ちゃんみたいなキャラになったら痛いでしょ? 「こいつキャラ変えてきた」みたいな。
伊藤:そっちのが一番怖い人いるじゃん。サックスのまつ毛の凄い人。(一同笑)
俺たちもただのアイリッシュ・パンクで終わりたくないから、アップデートしたものを見せたい(マサヤ)
──これまで対バンもたくさんしてきたと思いますが、それぞれのシーンで活動しながら交わったときに感じることはありますか?
カツヲ:伊藤ちゃんが喉に効く薬をいつも教えてくれるんですよ。あと、身体が疲れないサプリとか。だからまた新しい薬を教えてもらえるなって思います(笑)。
マサヤ:必須アミノ酸とかを教えてくれる。
カツヲ:だから最新のサプリ情報を得られるバンドです。もちろん、ツアーの後半で一緒になれば凄いツアーを回ってきたんだなってことがライブから分かったりもするんだけど、それはSNSで見たりもしているので、それより新しいサプリを教えてくれるほうが大事です(笑)。
マサヤ:そんなに頻繁に一緒にやるわけじゃないし、会うときは年単位だったりするから、対バンして新曲を聴けるのは楽しいですね。俺たちもただのアイリッシュ・パンクで終わりたくないから、アップデートしたものを見せたいし、OLEDICKFOGGYがライブでどんな新しい音楽性をミックスさせてくるか楽しんでいます。
スージー:曲に関していえばTHE CHERRY COKE$も5、6回転調する曲があるでしょ。よくあんな曲作ったなっていつも思う。
伊藤:暇なんだろうね。(一同笑)
スージー:メジャーなバンドだとOfficial髭男dismとかもよく転調するけど、ここにもいるぞって。
マサヤ:俺たちは祖先にThe Poguesがいて、だけどThe Poguesと同じことをやってもただのコピーバンドになっちゃうなって。
伊藤:初期の曲を録り直していたのはどういう理由があったの?
マサヤ:いろんな音楽を取り入れたり、紆余曲折あって、メンバーの脱退や加入という大きな出来事もあるなかで、カツヲさんがスタジオで「俺らの一番の強みを伸ばさない?」という提案があって。俺はひねくれているから同じことをやりたくないんだけど、お客さんから見たTHE CHERRY COKE$って何か考えたら、楽しそうなTHE CHERRY COKE$を聴きたいだろうなって改めて思って。
スージー:俺らも再録はやってるよ。ベスト盤2枚(『オールディックフォギー名作撰 破戒篇 / 絶海篇』)。
カツヲ:ウッドベースからエレキに変わったもんね。
スージー:アルバム『グッド・バイ』、『Gerato』のベースだけ撮り直して、2020年にリリースしている。
──今回のツーマンツアーはもともとコロナ初期2020年に開催予定だったんですよね?
伊藤:そうですね。それができなくなってSHELTERだけで無観客配信ライブをしたんです。俺は配信も好きだし楽しかったけど、やっぱり今のほうが楽しいですね。
マサヤ:今回、ツアーができることになって2バンドのお客さんは喜んでくれると思います。あまり一緒にやらないイメージを勝手に持ってそうで。
スージー:バチバチでやっても面白いかもね。
マサヤ:それも勝手にバチバチだと思われてそう(笑)。
ツアーが3日間しかないのが寂しいけどね。もっとやりたい(伊藤)
──ちなみにバチバチだった時期があったりするんですか?
伊藤:ないですよ。バチバチなバンドはひとつもないです。
マサヤ:OLEDICKFOGGYはいそうだけどね。
スージー:勝手にそう思われているならそれでもいいけどね。
伊藤:猪木と馬場だって世間的にはバチバチだったけど裏では仲良かったわけで。
カツヲ:ああ、確かに。
伊藤:俺はツアーが3日間しかないのが寂しいけどね。もっとやりたい。
カツヲ:このツーマンに新しいお客さんって来てくれるのかな。フェスとか何バンドか出てるイベントなら初めて観てくれる人もいると思うけど、この2バンドで新規のお客さんが来てくれたら熱いけどね。でもどうやったら新規のお客さんをつくか分からないよね。
伊藤:いろんなバンドとやるしかないと思うよ。
カツヲ:でもそのためにいろんなバンドとやるのもなんか違う気がするんだよね。
伊藤:今回のツアーは、このツーマンを喜んでくれる人のためだけにやればいいと思うけどね。きっと来てくれる人は、いつも俺たちを支えてくれている人たちだと思うから。だから俺はその人たちのためにやりたい。きっと会場の雰囲気も良い感じだと思うから、お酒をたくさん飲んで酔っ払って、ライブハウスの売上にも貢献してもらえたら最高です。最近の若いバンドのお客さんってライブ中は飲まないで、帰りにドリンク・チケットをソフト・ドリンクに変えていくらいしいよ。
スージー:俺らのお客さんはまず飲むからね。なんならライブ前に飲んでから来るから。
伊藤:だからソールドアウトしてるライブでも5分前になってもフロアがスカスカなんだよね。飲みに行ってるから(笑)。あれ、心配なんだよ。
カツヲ:盛り上がり過ぎちゃってライブに遅れてくることなんてよくあるしね。でもライブハウスでもめっちゃ酒を飲むからライブハウスには喜ばれるっていう。
──OLEDICKFOGGYもTHE CHERRY COKE$も集まるお客さんの遊び方がかっこいいですよね。お酒の飲み方もファッションも含めて、本来ライブハウスと密着していたカルチャーがしっかり根付いている印象があります。そういう人たちにこのツアーでたくさん会えるといいですね。
伊藤:うわ、凄く良いこと言った。それ、今、俺も言おうと思っていたんですよね。
カツヲ:奇遇だね。俺も言おうと思ってた。
伊藤:じゃあ、今の、俺たちが言っていたことにしてもらおう。(一同笑)