『サッカーW杯日本躍進』 2人のリーダーに脚光 共通する“人間としての器の大きさ” <長崎スポーツこの1年>

 19日に閉幕したサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会。長崎市出身の森保一監督(54)と吉田麻也主将(34)の率いる日本代表は、優勝経験のあるドイツとスペインを1次リーグで連破して話題をさらった。史上初の8強入りこそならなかったが、2人のリーダーシップは脚光を浴びた。
 2人に共通するのは、サッカー人としてだけでなく、人間としての器の大きさだ。近しい関係者が振り返る。
 吉田が仁田小に通っていた際、同じクラスに脚が不自由な男子児童がいた。車通学をしていたが、教室に行くためには校内の階段を上る必要があり、歩行器を使っても移動が困難。そこで活躍したのが、当時からひときわ体の大きかった吉田少年だった。誰から頼まれるでもなく、毎朝、教室まで抱きかかえて送り届けていたという。
 同級生の一ノ瀬功輔さん(34)は当時をはっきりと覚えている。「朝早く学校に来て、げた箱の前でその友達を本当に毎日出迎えていた。卒業するまで当然のように続けていたけど、今思うと普通じゃできない。周りに気を使わせず、さりげなく寄り添えるから麻也は慕われる」。子どものころからリーダーを任され続けている由縁だ。
 森保監督はクロアチアに敗れてから約1時間後、再びピッチに戻って深々と一礼した。その誠実な人柄を表すエピソードもある。
 長崎日大高時代の恩師だった下田規貴さん(75)はW杯開幕前に身内の不幸があり、現地での応援をやむを得ず断念した。渡航できない旨を携帯電話で森保監督に伝えると、ドイツ戦を目前に控えているにもかかわらず、数分後に本人から直接電話がかかってきた。タイミングが合わずに電話を取れなかったが、すぐにメッセージが届いた。
 「奥さまに先立たれて寂しくされている下田先生に、励ましのメッセージを送れるように、ベストを尽くします」
 下田さんはその言葉通りの戦いぶりをテレビで見て、とても元気づけられたという。
 試合後のロッカールームをきれいに片付け、11羽の折り鶴を残して感謝を伝える日本の美学は世界から称賛された。常に周囲への気配りができる2人のリーダーがいたチームを象徴するようなひとこまだった。


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