同性婚の不可は「個人の尊厳」明記した憲法に違反 自治体で制度導入も国会が法制化の壁に 当事者が指摘

「法律上の性別が同じカップルは結婚できない」という現行の法律について憲法違反かどうかが争われている。いわゆる「同性婚」を認めていない民法や戸籍法の諸規定は憲法違反であるとして、当該のカップルらが国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁はこのほど、原告の請求を棄却した。一方で、同性愛者がパートナーと家族になるための法制度がない現状について、東京地裁が「同性愛者の人格的生存に対する重大な脅威、障害」と指摘したことも注目された。性的マイノリティに関する問題に取り組む一般社団法人 「fair(フェア)」代表理事で、自身もゲイであることを公表している松岡宗嗣さん(28)が裁判を傍聴した上で、よろずニュースの取材に対して見解を語った。

松岡さんは1994年生まれ。教育機関や企業、自治体などで性の多様性を伝える研修を当事者の1人として行い、各媒体での記事執筆、著書の出版やSNSでの発信を続ける。「LGBTQ+」の人たちの職場や仕事探しなどでの声を集めた今年創刊のフリーマガジン「BE」(インディード ジャパン)の編集スタッフも務めた。

今回の判決で、東京地裁は「同性愛者に『パートナーと家族になるための法制度』が存在しないこと」について、「個人の尊厳」を明記した憲法24条2項に違反する状態にあると判断。松岡さんは「同性パートナーが家族になるための法制度が何もないという状況が憲法に照らしても問題だと、ちゃんと言ってくれた。そこは評価されるべきポイントです。実質的な違憲判決だと言っていいと私は思っています」と指摘した。

とはいえ、憲法24条における「カップル」は「男女」という前提で書かれている。松岡さんは「日本国憲法ができた当時、世界で同性婚が法制化されている国はなかったので、そもそも想定されていなかった」と説明。では、同性婚を認めるために「憲法改正」が必要になってくるのだろうか。

松岡さんは「憲法は、例えば検閲や拷問など、ダメなものは『禁止』と明記しているものだと思います。しかし、憲法には『同性は結婚できない』『異性に限定』などとは明記していません。日本政府も憲法が同性婚を禁止しているとは一度も言ったことがなく、ほとんどの憲法学者も、また今回の訴訟における札幌・大阪・東京地裁判決でも『憲法は同性婚を禁止はしていない』というのが前提になっています。同性婚の法制化は今の憲法のままで法律を作ればいいだけです」と明言した。

さらに、同氏は「『知る権利』など憲法制定当時は想定されていなくても、今では憲法が保障していると考えられるものもあります。憲法が同性同士の結婚の自由を保障していると考えることもできるのではと思います。また、私たちが求めているのは『人権が守られていない状況を直し、法律上、同性であれ、異性であれ、ただ〝平等〟にして欲しい』ということなので、シンプルに『婚姻』に関する法律を改正すればよいのです。具体的に婚姻制度の中で同性カップルの存在をどのように明記するかなどテクニカルな問題はありますが、早急に婚姻の平等を実現して欲しいと思います」と補足した。

東京では15年に世田谷区と渋谷区で同性パートナーシップ制度ができ、今年11月には東京都でも導入された。松岡さんは「全国でも240以上の自治体でパートナーシップ制度は導入されています。政令指定都市では名古屋市が12月からスタートし、あと導入していない政令指定都市は(20市のうち)仙台市と神戸市だけです。世論調査を見ても6割以上、20-30代では8割が同性婚に賛成という調査もあり、自民党支持層でも約6割が賛成しているので、一部に根強い反対はあっても、大きな問題にはならないはず。やはり、問題は政治の状況かと思います」と付け加えた。

法律案を提出する国会が〝壁〟になっているという。

「LGBTQに限らず、ジェンダーやセクシュアリティ、多様な家族や性のあり方に関する事は今の政治状況では難しくて法整備が進まないですね。同性婚だけでなく、選択的夫婦別姓でも、『自分は利用しなくても、そうしたい人は利用すればいい』と思う方が多いと思いますし、その考え方は保守層でも広がっていると思いますが、(政治家で)反対している人はそういうロジックではないんです。『家族とはこういうものだ』という根強い価値観があり、そこが根深い問題。米国をはじめ海外の保守派の言説も輸入して『性的マイノリティの権利を保障したくない』という根強い意識が表出してくるのだなと思います」

今後、名古屋や福岡地裁の判決が続き、各地の高裁判決、最高裁判決へと続いていくとみられる。最高裁の判決を待たずに、国会で「同性婚」を法制化する道がつけられるかも焦点となる。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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